チーズといえば、近代に西洋から伝わってきた乳製品というイメージをもっている方も多いであろう。しかし、実は古来より日本にもチーズは存在したのである。
これは、チーズ好きすぎてチーズ王国・イタリアに引っ越してしまった筆者としては見逃せない情報である。今回の雑学は、筆者の和風チーズ製作体験記も合わせてお届けしたいと思う。
【面白い雑学】チーズは飛鳥時代から日本にあった
【雑学解説】飛鳥時代のチーズ、その名は「蘇(そ)」
「日本で牛が飼育されるようになったのは、近代になってから」…そんなイメージをもっていたのは、筆者だけではないと思う。
しかしそもそも、牛は大昔に中国大陸から伝来した家畜なのだ。古墳から牛型のはにわが出土していることから、古墳時代にはすでに家畜として牛は飼育されていたのではないかといわれている。
このことから、昔の日本では牛乳も飲まれていたと考えられているが、生の牛乳というのは腐りやすい。余った牛乳をダメにしてはもったいない。そこで保存性を高めるために、古代日本人は工夫を凝らして「蘇(そ)」と呼ばれるチーズを作り出したのである。
この蘇、文献にはその存在の記述が残されているものの、謎の多い食べ物である。飛鳥時代に誕生したと考えられているが、具体的な製造方法や使用した乳牛種などの情報は残っていない。
しかし、平安時代の書物『延喜式(えんぎしき)』には作り方の概要が載っている。それによると、「牛乳を1/10くらいの量になるまでめっちゃ煮詰めて、塊にしたおいしーヤツ」らしいのである。
なお、平安貴族も蘇にハマっていたようだが、武士の時代の幕開けとともに酪農は衰え始めたため、そのうち蘇も作られなくなってしまった。
そんな歴史の中で失われてしまった日本のチーズ・蘇ではあるが、現代にも蘇の復元を試みている人々が存在する。そこで、中臣鎌足(なかとみのかまたり)がいつも噛んでいえない筆者も、蘇を作ってみることにした。
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【追加雑学①】ヤギのミルクで蘇チーズを作ってみる【レシピ】
ちょうどうちに牛乳もあるし、これでさっそく蘇作り開始…と思って蘇のレシピをググってみると、「ミルクをただひたすら煮詰めろ、塊になるまで」とある。そして、思いのほか多くのネット民が蘇を作っていることが判明した。
ここでワシも普通に蘇なんぞ作ったら、面白くないぞよ…。そこで、筆者はヤギ乳を使うことにした。
筆者は現在イタリアに住んでいるのだが、こちらではどこのスーパーでもヤギのミルクが買える。
ちなみに、ヤギ乳は人間の母乳と成分が似ているといわれている。それを知ったとき、なぜか筆者は興奮を覚えた。おっと、そんな目でこちらを見ないでおくれ。筆者はれっきとした女性である! そして母乳とは、生命の神秘である!!
とにかく、母にゅ…ヤギ乳蘇、試すしかないっすわ。
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実録・ヤギ乳で蘇チーズ・製作体験記
今回は、このヤギのミルクを使う。
蘇を作る前にこれを試飲してみたが、ミルクの味に思春期の少年少女の脇のにおいを足したような味がした。ラムっぽい獣臭さのあるミルク、といったほうがわかりやすいかもしれない。
調理前
1リットルは多い気がするので、半量500ミリリットルを使用する。
20分後
読書をしつつ、中火にかけた鍋のミルクをかき混ぜていると、20分が経過していた。沸騰しているが、ほぼ量が減っていないことに軽く戦慄を覚える。
30分後
30分経過。あまり変わっていない…。
35分後
しかし30分を少し過ぎたころから見る見る間に量が減っていく。35分でこんな感じ。
ここで弱火にして、本のページをめくる手を止める。代わりに、ミルクをかき混ぜる手をフル稼働。立ち止まってはいけない、これは戦いなのだ…!!
40分後
40分経過。おぉ、けっこう固まりだしたぞ…! ゴールは近い気がするが、ミルクがなべ底にこびりつき始めたのが気になる…あの、これ、借り物の鍋なんだけど…。
45分後
45分経過。鍋の上でミルクを練っている妙な感覚。
それよりも焦げつきやべーよ。鍋をダメにしそうなので、ここで終了。
軽量してみた
計量器で重さをはかると…ジャスト50g! 改めて見るとかなり少ない。
形を整えて実食!
なんとなく、おっぱい型っぽく整えてみる。冷めたところで、切り分けて実食。
うーん…もそもそした食感のミルク的ななにか。
ちょっともっちり感もあるから、もっちょもっちょって感じ。思ったより凝縮されたミルキーさはない。っていうか、塩入れていないのになぜかしょっぱい。やっぱり、思春期の脇のにおいっぽい風味もする。
ぶっちゃけ、ヤギ乳蘇は45分かけて作るほどの感動的な味ではなかった。しかも、不味くてコメントで笑いがとれるレベルでもない。どうしてくれるんだ…っ!
ちなみに、蘇作り後の焦げつきがすさまじかった鍋は、借り物だったので弁償しようかと考えた。
しかし、この鍋の中でお湯を沸騰させ、そこに重曹をぶち込んで、軽く煮てからスポンジでこすり洗いをすると、きれいになった。マジで助かった。テフロン加工が弱まった古い鍋で蘇を作る場合、重曹も準備しておくことを激しくおすすめする。
あと、洗う前の鍋から無理矢理はぎ取ったおこげ部分がサクサクしていて、一番美味かったことも追記しておく。
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【追加雑学②】フルーツヨーグルトでも蘇チーズを作ってみる
さて、手元に賞味期限間近のヨーグルトがある。
柑橘系のフルーツフレーバーをまとめ買いしたのだが、なんだか味に飽きた。そこで、このフルーツヨーグルトでも、蘇を作ってみることにした。
微妙にあまった中途半端なプレーンヨーグルトも加え、これを弱火にかけること20分程度。液体だったヨーグルトが固形状になってきたところで、元の容器に戻してみると、大体1/4程度の量になっていた。
めんどくさくなってきたし、これ以上続けるとまた鍋をダメにしそうだったので、この辺で完成とした。ヨーグルト蘇が冷めたのち、いざ実食。
あっま!! 甘いっす! ヨーグルトのフルーツフレーバーがギュギュっと凝縮された甘さ。ヤギ乳蘇とまったく違う味の濃さ。モロモロした食感の中にヨーグルトの酸味もある。
まずくはないが、絶品ではない。そして、のどが痛い。糖分控えめなヨーグルトならもっとおいしかったかもしれない。あーでも、濃いコーヒーには合う甘さかも。
結論としては、ヨーグルト蘇は「また作って食べたい?」と聞かれたら、「暇で死にそうなときなら」って返答するレベルの味だった。
蘇チーズの雑学まとめ
今回の雑学はいかがだっただろうか。
日本でも平安時代までは酪農が盛んであり、牛乳を加工した蘇というチーズも作られていた。正確な製造方法が残されていない謎の食品であるが、多くの現代人もこの和風チーズ作りに挑戦している。
今回、オリジナルをすっ飛ばしていきなりヤギ乳で蘇を作ってしまったので、本来の蘇の味がわからないまま微妙なレポートに仕上げてしまった。謹んでお詫び申し上げる。
こいつぁ、いつかリベンジだな…。
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