奈良の大仏をはじめ、その圧倒的な存在感で観光客からの名物的存在になっている大仏。とてもありがたい存在のはずなのだけど、ひとつだけ気になることがある。
「なんでパンチパーマ…?」
仏教の象徴なのだから、そこは坊主頭じゃないのか…。なんでちょっと昔のヤンキー仕立てなんだ? それとも…大阪のおばちゃん?
しかし…実は大仏の髪型はパンチパーマではなかったのだ! 今回は、そんな大仏の髪型の雑学を紹介しよう。
【歴史雑学】大仏の髪型の意味と理由とは?
【雑学解説】大仏の髪型=螺髪(らほつ)は、悟りを開いた印
大仏の髪型はパンチパーマではなく、螺髪(らほつ)という、巻貝のような形をした髪型だ。実際に大仏の髪をよく見てみると、クルクルっとひとつずつ巻かれた作りになっている。…まあ、パーマといえばパーマだ。
螺髪は、仏でも最上位に位置する如来像にだけ表れる特徴である。
悟りを開いた仏には「三十二相八十種好(さんじゅうにそうはちじっしゅこう(ごう))」という、「32個の目立つ特徴・80個の細かい特徴」がある。そのうちのひとつ「毛上向相(もうじょうこうそう)」を表したのが螺髪なのだ。
毛上向相は、体毛のすべてが上に向かってなびき、右に渦巻いている様子を表す。仏は悟りを開くと、髪の毛が逆立って右向きに渦巻くのだ!
つまり螺髪スタイルの仏像は、仏のなかでも悟りを開いているカリスマ的存在だということ。あの髪型は大阪のおばちゃんの象徴ではなく…仏界のカリスマの象徴だったのだ。
以下は、東大寺の大仏のホコリを落とす「お身拭い」の儀式を映した動画だ。螺髪がひとつずつ渦巻いている様子がよくわかる。
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悟りを開くとどうして髪が逆立つの?
悟りを開いた仏の髪の毛が逆立つ理由は、「悟りを開こうとする向上心の表れ」だという。
また、水は自然の摂理に従うと上から下に流れるため、その様子を表しているとも…。悟りを開くとは、ありのままを受け入れることだともいうしな。
ちなみにこれが水の流れを表しているからか、螺髪の仏は、髪の毛が「紺青色(こんじょういろ)をしている」と説明されている。つまり青髪ということだ。やっぱりパンチパーマじゃなくても……いや、やめておこう。
右巻きになっているのは、インドの仏教に「右手は清浄」「左手は不浄」という教えがあることに由来しているのだとか。そういえば、インドでは左手を食事に使ってはいけない習慣もある! つまり右巻きのほうが縁起がいいわけだ。
ちなみに、日本では鎌倉の大仏だけ左巻きになっている。詳細は不明だが、一説によると「鎌倉のシンボルだから他とは違う大仏にしよう」ということで左巻きになったとか。まあ…右巻きというのはあくまでインド仏教の教えだしね…。
【追加雑学①】奈良・東大寺の大仏には966個の螺髪があった
752年に建設された当時、奈良・東大寺の大仏には966個の螺髪があった。
この螺髪は1つでも直径22cm・高さ21cm・重量1.2kgあるというので、この数をつけるのは相当に気の遠くなる作業だ…。なんでも螺髪だけで3年の製作期間を要したという。
それだけ仏にとって重要な意味をもつ髪型ということか。気軽にヤンキーだなんて言うべきではないのかもしれない…。
しかしそんなに苦労して取り付けた螺髪も、火災などで修繕を重ねるうちにその数は減り、2015年の調査では合計492個だったと判明している。いくら仏とはいえ、時の流れには逆らえないものだ。
ちなみに鎌倉大仏の螺髪は656個。こちらも今数えたらどうかわからないな。
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【追加雑学②】悟りを開いていない仏もいる
螺髪は、仏のなかでも悟りを開いた如来像の特徴だと説明した。となると気になるのは、「ていうか悟り開いてない仏っているんだ!」ということである。
その通りで、仏には4つのランク分けがあり、如来以外の3つはまだ修行中の身。つまり悟りを開こうとしている最中なのだ。
- 菩薩…地蔵菩薩・観音菩薩など。若いころの釈迦がモデルになっている。
- 明王…不動明王など。人々を救おうと必死の形相になっているものが多い。
- 天…大黒天・弁財天など。
若いころの釈迦がすでに人格者だったことが有名なように、これらの仏は、人間が足元にも及ばないぐらい善行を積んだ存在である。
それでも如来にはまだ届かないわけだから、悟りを開くのがいかに難しいことか…。
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如来以外の仏の髪型
螺髪は如来にだけ表れる特徴のため、菩薩や天の位の仏は、以下のような髪型をしていることが多い。
- 垂髻(すいけい)…長い髪をひとつに結い上げ、上部でいくつかに分けて垂らした髪型
- 螺髻(らけい)…長い髪を渦巻き状に結い上げた髪型
- 高髻(こうけい)…長い髪を高く結い上げた髪型
以下は、琉球金宮観音菩薩像の映像だ。この菩薩は螺髻である。
この菩薩のようにわかりやすいものもあるが、ほとんどは被り物をしていて詳細には確認できない。
または地蔵のように坊主頭のものも多い。みんなあのパンチパー……いや、螺髪を目指して頑張っているわけだ。
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【追加雑学③】いろいろあるよ!大仏の特徴
大仏に関していえば、額にあるボタンのようなイボも気になる。押してみたい…押したら大仏、変形したりするのかな…? ビーム出たりするのかな…?
期待とは裏腹に、あのイボも実はイボではなく、螺髪と同じようにクルクルっと巻かれた毛である。押しても変形はしないが、また妙なところから毛が生えたものだ…。
額の毛は「白毫(びゃくごう)」と呼ばれるもので、この白毫を伸ばした毛はなんと4.5メートルほどにもなるとか。
白毫は遠くの世界まで照らして、苦しんでいる人を見抜く力をもっているといわれる。変形よりすごい能力じゃないか…。
ちなみに白毫も螺髪と同じく、悟りを開いたカリスマだけの特徴だ。
頭頂部の盛り上がりは脳の膨らみを表す
「てっぺんでお団子を作っているのかな」ぐらいに思っていた人もいるかもしれないが、大仏の頭頂部の盛り上がりも、如来像ならではの特徴だ。これを肉髻(にっけい)という。
なんでも脳ミソが盛り上がってあの形になっているといい、深く思考し、真実を見定められるようになったことを表しているのだとか。
悟りを開くと脳ミソまでデカくなってしまうのか…。如来像にはいろいろ人間離れした特徴が反映されているんだな…。
菩薩などが髪を結い上げているのは、肉髻に憧れているのかも?
大仏の特徴は他にもたくさんある
三十二相八十種好で説明されている、その他の代表的な特徴も紹介しておこう。
- 偏平足(足の裏に土踏まずがない)
- 手足の指に水かきのような膜がある
- 体から良い匂いがする
- 歯が40本あり白く輝いている
- 全身が黄金色に輝いている
体から良い匂いって…悟りを開いた仏はフェロモンもムンムンだということか!? 水かきは、いるのかいらないのか…ちょっと謎だけど、仏だから…まあいいのだ!
「大仏の髪型」の雑学まとめ
今回は大仏の髪型の雑学を紹介した。
実はあのパンチパーマのような髪型は「螺髪」といい、仏の中でもカリスマ的存在のみに許された髪型だった。
悟りを開くと自然に髪の毛がクルクルしてくるのか、「俺、悟り開けたわ」と自分で美容室に行くのか…。どちらかはわからないが、とにかくあんまりバカにするべきものではないのだ…。