真っ黒な外見に「カーカー」と鳴く声など、なんだか不吉なイメージがあるカラス。また、ゴミ捨て場を荒らしたり、車にフンを落としたりと、日常的な場面において最も被害の多い鳥ともいえる。
カラスなんて追いはらってしまえ! というような人もなかにはいるだろう。しかしちょっと待った! カラスをあなどってはいけない。彼らが利口なことは有名だが、実は驚くことに人間の顔も覚えるというのだ。
もし危害を加えるようなことがあれば、顔をおぼえられてマークされてしまうかもしれないぞ! 今回はそんなカラスの特性に関する雑学をお届けしよう。
【動物雑学】カラスは人間の顔を記憶して仲間に拡散する…!
【雑学解説】カラスは自分に危険をおよぼした人間の顔を記憶する
カラスは、鳥の中で最も高い知能をもっているといわれる。協力して行動する、エサの場所を教え合うなど、高いコミュニケーション能力で、彼らなりの社会を築いているのだ。
そして何より注目すべきは、人の顔を区別して覚えられるという点だろう。
カラスが本当にそんな能力をもっているのかを試した実験の記録がある。
カラスの記憶力を証明した実験とは?
2006年、ワシントン大学の科学者たちが、キャンパスにたむろしているカラスに対して、人間の顔を記憶できるかどうかの実験を行った。方法は、いたってシンプル。
- 7羽のカラスをつかまえて、足に目印のバンドをつける
- 原始人の顔を模したマスクをかぶって、カラスに恐怖心を与えて逃がす
- 恐怖を与えた原始人のマスクをかぶって、キャンパス内を歩く
- 別のマスク(アメリカのディック・チェイニー前副大統領を模したマスク)をかぶって、キャンパス内を歩く
- マスクによってカラスの反応がどう違うかを観察する
…といった具合だ。まず、なぜ原始人!? とツッコミたくなる。これに関しては、とりあえずこわもてのマスクが必要だったのだとか…。要するにカラスに恐怖心を与えられれば、どんなマスクでもいいわけだ。
この実験の結果、原始人のマスクをかぶって歩いたとき、カラスは「カーカー」と鳴きわめき、羽をバタバタさせる「スコールディング」とよばれる警戒反応を示した。
いっぽう、別のマスクの場合は、我関せずといった感じで、何の反応もなかったそうだ。
つまり原始人の顔に対してだけ、「こいつは危険だ!」と、認識していることがわかる。単に原始人のマスクが怪しかっただけではないか…というのは、いいっこなしだ。
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カラスから指名手配!?カラスはおぼえた顔を仲間に拡散する
さらに驚くことに、カラスはおぼえた顔を仲間に伝えていくというではないか!
スコールディング反応をみせたのは、最初こそ恐怖を与えた数羽のカラスだった。しかし、じわりじわりとその数が増えていったのである。
「危険なヤツ」としておぼえられた顔は仲間内で拡散し、まるで指名手配された凶悪犯のように、カラスたちに完全マークされる。
カラスが認識したあらゆる情報は、本人のみならず仲間と共有するのだ。親から子供への縦のつながり、そして仲間との横のつながりで情報を伝達していく…噂が広がる早さは、おばちゃんの井戸端会議さながらである。
【追加雑学】ゴミ清掃員として働くカラスがいる
フランスには、おもしろい発想でカラスを雇っているテーマパークがある。なんとカラスがせっせとゴミを拾い、園内の掃除をしているというのだ。
どちらかというと、ゴミを散らかす側ではないのか!? と思わされるが、これにはカラスの賢さを逆手にとったテーマパークの工夫が隠されている。
人間が捨てたタバコの吸殻やゴミを、決められた場所に持っていくと、そこに設置された箱からエサが出てくる仕組みになっているのだ。この仕組みによって、特別に訓練を受けた6羽のカラスが、喜んでゴミ清掃員として働いているぞ!
以下の動画ではテーマパークでの様子も見られる。カラスを慣らし、このような訓練を思いついたことがすごい!
ゴミ拾いをすればご褒美をもらえるという情報もそのうちに伝達され、もっとたくさんのカラスたちが清掃員として活躍するようになるのではないか。
たしかにおもしろい発想ではあるが、人間が捨てたゴミをカラスが片付けるというのは、立場が逆のような気がしてちょっぴり情けない。
雑学まとめ
今回の雑学ではカラスが人間の顔をおぼえるという、驚きの能力について紹介した。しかもおぼえた顔はカラスたちのなかで拡散されるという…。なんと恐ろしいことだろう…。
カラスの被害に困ったとしても、おどかして追い払うようなことをすれば、かえって痛い目に遭いかねない。カラスに指名手配されるなど、絶対に勘弁だ。