十一面観音は観音菩薩が変身する姿の1つともいわれており、その名のとおり11の顔をもっている。誰もが「穏やか」や「平和」といったイメージをもつ観音様。そんな観音様が、実は爆笑しているというではないか。
観音様が爆笑…。まったくイメージできない。本当に爆笑しているのかと疑いの気持ちすら出てきてしまう。そこで今回の雑学では、十一面観音の顔について謎を解明していこう。嘘か本当か、ぜひ君の目で確かめてくれ!
【歴史雑学】十一面観音像の後ろの顔は爆笑している
【雑学解説】十一面観音像の後ろの顔は暴悪大笑面(ぼうばくだいしょうめん)と呼ばれている
十一面観音像の裏の顔…いや、後ろの顔は笑っているどころではなく大爆笑している。
いやいや、観音様が爆笑してるイメージないから! と思うだろう。まずは、誰もが抱いているイメージの十一面観音像を見てほしい。
ご利益が感じられる。動画と分かっていても思わず拝んでしまう。
おっと、本題に戻そう。上の動画をみても分かるように、爆笑している顔は十一観音像の真後ろにあるため、なかなか見ることはできない。
ここで問題。なんで十一面観音の後ろの顔だけ爆笑しているのか?
それは、我々人間の悪があまりにもバカバカしいもので「全てお見通しだ」と大きな口を開けて悪を笑い飛ばしているという。ただよ~く見ると、たしかに口は笑っているが十一面観音の目は笑っていないような気もするから、実際に参拝に行って判断してほしい。
「悪」という邪悪なものを観音様が笑い飛ばすことで悪を滅する、という素晴らしい意味があるのだが、そこはイメージというものもあり爆笑している顔が、後ろに配置されているとかいないとか…。
【追加雑学①】十一面観音の頭上には5種類の表情がある
十一面観音といえば、頭の上の十一の顔が特徴。なぜこんなに顔があるかというと、全方向を見守りときには人々をなだめ、怒り励ましてくれるためにあるのだ。
ちなみに、十一面観音は観音菩薩が変身している姿の1つで、お釈迦様が悟りをひらくまえの王子時代をモデルにしたものらしい。つまり、より我々人間に近い存在ということだ。そんな親しみやすい存在の十一面観音の頭上には、5種類の表情がある。
- 仏頂面…究極的な理想の悟りの表情で、頭のてっぺんに1面
- 菩薩面…穏やかな慈悲の表情で、頭上正面に3面
- 瞋怒面(しんぬめん)…邪悪を戒め仏道へと向かわせる怒りの表情、頭部左に3面
- 狗牙上出面(くげじょうしゅつめん)…行いの良い人を励まし仏道に向かわせる表情、頭部右に3面
- 暴悪大笑面(ぼうばくだいしょうめん)…人の悪を大きな口を開けて笑い飛ばす、後頭部に1面
このように、人間をなだめすかしてくれる様々な表情をもっている。11も顔があるから困っている人を見逃さないぞ! とやる気に満ち溢れているなんともありがたい観音様である。
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【追加雑学②】国宝の十一面観音で最も美しいものは滋賀県にある
十一面観音の爆笑している「暴悪大笑面」は観音様の後頭部にあることから、めったにお目にかかることができない貴重な表情である。では、どこにいけばその表情を拝めるのか。
暴悪大笑面を拝める場所は、滋賀県長浜市にある渡岸寺観音堂(どうがんじかんのんどう)。ここの「慈雲閣」という収蔵庫に十一面観音がいる。
360度ぐるっと観音様の顔がみれる配置になっており、なんと暴悪大笑面にはスポットライトが当たっているというから、満足するまで拝めるというわけだ。
ちなみにこの渡岸寺観音堂の十一面観音が、日本の国宝の十一面観音で最も美しい日本彫刻史上、最高傑作といわれている。訪れた際はぜひ、その美貌をしっかりと目に焼き付けてくれ。
【追加雑学③】滋賀県が十一面観音が一番多い
滋賀県は日本でも十一面観音が多いことで知られている。その理由は、滋賀県長浜市にある山岳信仰の聖地・己高山(こだかみやま)にあるといわれている。
その昔、京都に都があり、都からみて北東の鬼門に己高山が位置していた。そこで、多くの顔をもつ十一面観音を作り邪悪なものから都を守ろうとしたのだという。この十一面観音は神仏習合の考えをベースに、山の神のオリジナルと考えられ非常に大切にされていた。
その後、比叡山の焼き討ちや幾度となく繰り返される戦国時代の戦に巻き込まれながらも、あつい信仰心をもった村人に命がけで守られてきたといわれている。参拝の際はその村人らの努力を考えながら拝むと、また一味ちがった思いを感じ取ることができるだろう。
雑学まとめ
十一面観音の後ろの顔は、本当に爆笑していた。
どの時代も悪を滅するには、笑いが一番効果的ということなのかもしれない。なかなか深く考えさせられる雑学だと自画自賛してしまう。
ちなみに、観音様の立ち姿はどこか艶めかしく女性を感じさせるが基本的に性別はなく、中性的な存在だ。観音様のもつ慈愛・中国の観音信仰が東シナ海域に広がったときに女神のイメージに結び付き、女性らしい姿になったのではないかと考えられている。
参拝の際は、中性的なその立ち姿にも注目してくれ。
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