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持ち帰れる?ホテルに聖書がある理由とは?【国際ギデオン協会】

雑学カンパニー編集部

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ホテルに「聖書」があるのはなぜ?に関する雑学

旅行や出張で、宿泊したホテルの引き出しをなにげなく開けると、そこには例の本が入っている。世界のベストセラー「聖書」が。

引き出しの中の他のアイテムとは明らかに違って異彩を放っているため、存在感抜群ではあるが、今さら「なんでこんなところに聖書が!」なんて驚く人はいないくらい、当たり前のことだ。むしろ「聖書、どこに入っているかな~」と探すほどである。

しかし、日本ではクリスチャンでもない限り、あまり読んだことのない聖書。引き出しの中に見つけたところで「あったぜ」と満足してそっと引き出しをしめる。たまに読んでみようと思っても、内容が理解できず寝落ち。

正直、宿泊先で聖書を読む日本人は少ないと思うのだが、なぜホテルには聖書が置いてあるのだろう? いや、別に置いてあっても困るわけではないのだが…。今回はホテルに聖書が置いてあるのはなぜか? という雑学に迫っていくぞ!

【世界雑学】ホテルに「聖書」があるのはなぜ?

ロバート
このあいだ日本に行ったら、ホテルの部屋に聖書が置いてたんだ!でも、日本人って仏教徒が多いよな?
エイミー
日本でもホテルに聖書を置くのは、クリスチャンへの配慮らしいわよ。

【雑学解説】ホテルに聖書があるのは旅に持ち歩かなくて済むから

日本では「ああ、聖書ってホテルにあるよね」程度だが、海外には、ホテルに聖書が置いてないとクレームが発生する国があるほど、クリスチャンにとって必須アイテムである聖書。信者は眠る前に必ず神に祈りを捧げる習慣がある。

世界中どこへ行っても眠る前に聖書を開く必要があるクリスチャンは、昔は旅先に聖書を持ち歩いていた。ところがこの聖書、旅のお供にするにはたいそう重たい。そこで、クリスチャンの宿泊客がわざわざ聖書を持ち歩かずに済むよう、気を利かせて部屋に置いているのだ。

ロバート
たしかに、どこのホテルでも聖書ってあるよな。

はじまりは100年以上も前のはなし。アメリカの、とあるビジネスマン二人が宿泊先で相部屋になったときのこと。一人が眠る前に聖書を読み、お祈りをしていると、もう一人のビジネスマンが「わたしもクリスチャンです。一緒に聖書を読んでお祈りしませんか」と声をかけた。

二人は「ホテルに聖書があったら持ち歩かずに済むし、便利だな」と意気投合し、二人そろってホテルに無料で聖書を寄贈する活動をはじめたのだそう。これが世界に広がり「国際ギデオン協会」という法人にまでなった。現在も世界各国のホテルに布教活動の一環として聖書を寄贈している。

無償で置いてくださいといわれれば、「いえ、うちは神仏以外お断りです」なんて拒否するホテルもないだろう。今やホテルの引き出しあるあるになっている聖書を、あえて置かないというのも不自然だし、みんな置いてるし。といった感じで、大抵のホテルには聖書が置いてあるのだ。

ロバート
『タダ』っていわれると、断れないよな。
エイミー
まぁ、うまいこと人の心理をついた活動ともいえるわね。

【追加雑学①】ホテルの聖書で自殺者が減った

ホテルに置いている聖書には、少しだけ編集上の工夫があるのだ。それは、「災難のときの救い」や「疲れたときの休息」という精神救済内容のページを設けてあって、そのページを冒頭で「おすすめページ」として、やんわり紹介している点だ。

これはなぜかというと、旅先で思い余って自殺してしまう宿泊客を救うため。現代は一人旅も珍しくはないが、ひと昔前は「おひとり様の女性客には気を付けるように」というマニュアルが存在していたほど、旅先のホテルは自殺者が多かった。

旅先のホテルの部屋は、日常からはなれて一人になれる。普段とは違う時間と空間の中にいると、いつもは考えないようなネガティブな思想が浮かんだり、急に自分の人生を見つめなおしたりしがちなのだ。

世界恐慌時のアメリカでは、ホテルに宿泊して自殺する生活困窮者を一人でも減らしたい、という気持ちで部屋に聖書を置いたところ、想像以上に効果があったという。

エイミー
たしかに聖書を読めば心が落ち着いて、『もうちょっとがんばろう』って思えるかもしれないわね。
ロバート
ホテルの聖書って、けっこうすごい働きをしてるんだな!

【追加雑学②】ホテルの聖書は持ち帰りOK…は本当?

ひとりの人間を救うかも知れないキリスト教の聖典「聖書」は、ホテル側がわざわざ購入して用意したものではない。「日本国際ギデオン協会」という社団法人からの寄贈品である。ということは、ホテル側にとってタダということ。「ご自由にお持ちください」のパンフレットと一緒なのか?

よく「無料で置いてあるのだから、持ち帰ってもいい」という意見を見かけるが、タダだからといって、何でもかんでも持って帰るのはどうだろう。部屋から聖書がなくなれば、ホテル側は補充をしなければいけない。しかも、ギデオン協会からの寄贈待ちだ。

いくら非営利団体の布教活動の一環とはいえ、配布している聖書は協会員や善意の献金によって用意されているもの。「もらえるものはもらっとこう」という気持ちで無意味に持ち帰ってしまっては、ギデオン協会もホテルも困ってしまうだろう。

ロバート
『もともとタダなんだから持って帰ろう』なんて、がめつい考えだよな。
エイミー
そうよ。聖書を作るのには、紙代や印刷代なんかがかかっているんだからね。

もし聖書が気に入って、欲しいと思ったなら、ホテルのフロントに「持ち帰りたい」旨を伝えるといい。ホテル側で困らないのであれば「どうぞ」と言ってくれるだろう。無料で置いている本だからお金は請求されたりしない。

旅館には仏教の「経典」が置いてある

寄贈してまで布教活動をするなんて、キリスト教は熱心だな。それなら、日本人になじみの深い仏教はどうだろう? 実は、仏教だって頑張っているのだ。

ところ変われば品変わる。キリスト教が聖書なら、イスラム教はコーラン。バラモン教はベーダ、仏教は「仏教聖典」いわゆる「経典」だ! 経典とはお経が書かれた書物のことだ。「仏教伝道協会」という法人がこれまた寄贈してくれている。

どうやら経典を置いているのは、ホテルよりどちらかというと旅館のようだ。聖書同様あまりなじみがないかもしれないが、聖書と大差ないほど難解で、負けないくらい興味深くおもしろい。ぜひ宿泊した旅館で経典を目にしたら、手に取っていただきたい。

ロバート
キリスト教だけじゃなくって、仏教の経典も置いてある場所があるんだな。
エイミー
英語で書いている経典もあれば、外国人だって喜んで読む人は多いと思うわ!

雑学まとめ

今回はホテルに置いてある聖書についての雑学をご紹介した。ホテルにある聖書は、ホテル側の事情というよりも、キリスト教団体の布教活動の一環として部屋に置かれているようだ。基本的にホテル側は部屋にどんな本を置いても自由らしいし、アパホテルの社長も置きたい本を置いて…ちょっと騒動になっていたが。

聖書だって、部屋に置いても置かなくても自由なはずだが、もはや常識のようにホテルには聖書が存在している。特に客からの要望が強いというわけでもなさそうだが、ホテルの聖書には妙に人を惹き付ける力があると感じる。

それはやはり、旅先という非日常で「たまには自分のこころと向き合ってみようか」という心理と聖書がマッチングしており、だからこそ部屋に常備されているのではないだろうか。

出張で忙しいから聖書なんて読むひまがない、深夜まで楽しく飲んで酔っ払って部屋に戻るから必要ない…というお客様にも、ふと手に取ってもらえるよう、聖書は今日もホテルの部屋に置いてあるのだ。

ロバート
ホテルに聖書があっても読むことなんてなかったけど、次の旅行のときには読んでみようかな!
エイミー
そうね、アタシも手に取ってみようかしら。

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