もし「一郎」・「二郎」・「三郎」という名前の兄弟ならば、順に長男・次男・三男というイメージだろう。
たとえば、政治家の小沢一郎は長男、俳優の佐藤二朗は次男、スポーツ界の重鎮・川淵三郎は三男であり、イチローこと鈴木一朗が次男であるなどの例外もあるが、冒頭のイメージは変わらない。
だがしかし! 実は「一郎」・「二郎」は、それぞれ「長男」・「次男」に使われる名前ではなかったのである。今回は、これまでの常識を覆す意外な雑学を解説していきたい。
【歴史雑学】「一郎」・「二郎」はもともと長男・次男の名前ではなかった!
【雑学解説】「一郎」・「二郎」は○番目の名前
冒頭にも述べたように、現代では「一郎」と「二郎」は長男と次男に付けられる名前であるが、本来長男と次男に付けられていた名前は「太郎」と「次郎」である。では、なぜ「太郎」と「次郎」なのだろうか?
かつての武家において、名前は成長するごとに変わるものであり、子どものころに付けられた名前はいずれ使われなくなるものだった。
そのため、生まれた順番がわかりやすくなるよう、便宜的な名前として「太郎」・「次郎」・「三郎」…などの数字を使った名前が付けられていたのである。
「太」という字は、子どもが健康に育つようにという意味で使われており、「次」は長男に次ぐ男の子というそのまま意味。そこから「太郎」・「次郎」となったそうだ。
ここで疑問となるのが、「一郎」と「二郎」の扱い。この2つの名前は最近になって登場した名前なのだろうか? そんなことはなく、実は「一郎」と「二郎」はそれぞれ11番目と12番目の男の子に付けられる名前だったのだ!
素直に「十一郎」と「十二郎」にしなかったのには、実はわけがある。武士といえば切腹がつきものだが、切腹の際には腹を十字に切っており、「十」という字は、切腹した傷を思い浮かべるために使うことが避けられたのだ。
そのため、「十一」と「十二」から「十」を取って、「一」と「二」を使ったという。では、13番目・14番目…はどうなるかというと、「又」や「与」のような「再び」という意味をもつ漢字を付けて「又三郎」・「与四郎」のようになったらしい。
かつての武家では、跡取りを多く残すために子どもが多かったという事情から、このような名付けルールができたと思われる。そして、近世になると一族の子どもの数が減ったため、長男と次男にも「一郎」・「二郎」が付けられるようになったようだ。
これまで考えることもなかった、「一郎」と「二郎」にまつわる歴史的なルール。かなり意外なものではないだろうか?
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【追加雑学①】三四郎は何番目の男の子?
夏目漱石の小説のタイトルにもなっており、お笑い芸人のコンビ名にもなっている「三四郎」という名前。これって3番目なのか4番目なのか? まさかの34番目の男の子なのだろうか…と疑問に思う方もいるだろう。
簡単に答えをいうと、「三四郎」は7番目の男の子のことである。三と四を足して七…という理屈らしい。
なぜ「七」ではなく「三四」を使うのかといえば、「十」を使わないのと同じ理由らしい。しかも、「七」の字は「十」に加えて横に棒が1本余分であり、これが切腹した際に体外に出た腸を想像させるのが名前に使われないゆえんだ。
ここまで書いてきてなんだが、「十郎」は10番目の男の子に普通に使われているらしい。これについての理由は不明だが、なぞのダブルスタンダードに違和感を覚えてしまうのは、私だけだろうか?
【追加雑学②】氏名の記入例が「山田太郎」である理由
「太郎」という名前で思い浮かぶ名前の筆頭といえば、「山田太郎」。役所などの書類において、男性の氏名記入例として「山田太郎」と書かれているのを目にした方は多いだろう。
では、なぜ記入例は「山田太郎」なのか? たしかに「太郎」は男子の名前としては一般的だが、日本全国における名字のランキングで「山田」はトップ10にも入らないのに…。
もちろん、日本全国における名字のツートップといえば「鈴木」・「佐藤」であるが、「鈴木」や「佐藤」は地域ごとに偏りがあり、西日本ではトップ10に入らない場合もあるとか。
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その点、「山田」はどの地方でも安定して多い名字であり、日本全国の誰が見ても一般的な名字といえるのだ。
また、これは個人的な推測だが、「山」も「田」も小学1年生で習う漢字であり、簡単に書くことができるというのも「山田」が使われている理由なのではないだろうか?
今までサラッと眺めていた「山田太郎」の名前だが、採用されている理由には納得の理由があったのである。
雑学まとめ
「一郎」・「二郎」にまつわる意外な雑学はいかがだっただろうか?
今回のトリビアを調べているときに思ったのが、武士には子どもが多く、名付けもきっと面倒くさかったんだろうな…ということである。
現代の日本では、少子化が問題になるほどに子どもが少ないので、名前を考える余裕もきっとあるだろう。もし、アナタが親になるときは、便宜的な名前ではなく、じっくりと考えた名前を付けてあげてほしい。
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