筆者の大学時代の同級生は、アイルランドに1~2年ほど留学していた。
彼女曰く、「アイルランドなんもない。羊とパブしかない。美味いもんなんてフィッシュ&チップスだけ。食うもんなくてビールを胃に流し込む生活送っていたら、太ったわ。」とのこと。
なんもないと言われてしまったアイルランドにだって、名物はある。それは「街中が緑色だらけになる日」である。いったいどんな日なのか調べてみたので、雑学としてご紹介しよう。
【世界雑学】アイルランドには、街中が緑一色に染まる日がある
【雑学解説】3月17日はセントパトリックスデー
アイルランドの街中が緑色に染まる日、それは3月17日のセントパトリックスデーだ。
これはアイルランドの守護聖人・セントパトリック(聖パトリック)の命日。ドルイド教が信仰されていたアイルランドでカトリックを布教した人物なのである。
伝承によると、パトリックは387年にウェールズ地方の熱心なキリスト教徒の両親のもとに生まれたとされている。しかし彼は16歳の頃に海賊たちに拉致され、奴隷羊飼いとして、6年間アイルランドで過ごすことになった。
そんなある日、彼は神の声を聞き、そのお告げに従ってアイルランドを脱走、故郷ウェールズへ戻るのであった。
ところが彼は、アイルランドでの伝道活動に目覚め、ローマ教皇の命もあったことから再びアイルランドの地へ舞い戻る。「私を奴隷として扱ったアイルランド人たちに、キリスト教の愛を教えてやらねば!」と思ったのかもしれない。
パトリックはその生涯で365の教会を設立し、12万人のアイルランド人をカトリック教へ改宗させたのだという。彼がこれほどの人数の改宗に成功したのは、奴隷時代に培ったアイルランド語の能力のおかげという説がある。それにしても、すごい執念である。
アイルランド中が緑だらけになる理由
で、なんで街中緑になるの? …という疑問が湧き上がるが、これはアイルランドのイメージカラーが緑色ということと、パトリックが「シャムロック」の葉を使って布教活動を行っていたことに由来するのだという。
シャムロックというのは、クローバーのことだ。この葉が3枚に分かれているところが、キリスト教の三位一体という考え方に通じるという理由で、彼はカトリックの教えをアイルランド人に説く際に、シャムロックを用いていたのだという。ちなみにこのシャムロック、アイルランドを象徴する国花である。
さて、このセントパトリックスデー、アイルランドではクリスマスより盛り上がる行事らしい。
店のショーウィンドーは片っ端から緑色で装飾され、人々は緑色の衣装を身にまとい、緑色のビールを飲む。ちょっと禍々しい印象のこの緑のビール、パブによってレシピは異なるそうだが、ビールにブルーキュラソーという甘いリキュールを混ぜることでこの色に染まるようだ。お、意外とうまそうじゃん。
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【追加雑学】世界各国のセントパトリックスデー
さて、セントパトリックスデーを祝うのはアイルランドだけではない。世界中のアイルランド系移民が多い地域でも、本国同様に盛大にこの日を祝うのである。
アメリカ・シカゴで行われるお祭りは、常軌を逸している。なんと、川まで緑色に染め上げてしまうのいうのだ!
ダウンタウンを流れるシカゴ川が入浴剤を入れたかのように真緑に染まる様子は、ちょっと怖い。
ここで、シカゴ川を緑に染め上げていく様子を動画でご紹介しよう。フルオレセインという、入浴剤にも使われる着色料が使われているとのこと。あ、やっぱ入浴剤の色なんだ。
その他、イギリスやカナダでもパレードが盛大に行われたり、オーストラリアではオペラハウスが緑にライトアップされたりと、兎にも角にも緑緑緑な日なのである。
ちなみに10年ほど前、筆者が大阪・北新地のラウンジで働いていたときには、同僚だったアイルランド系アメリカ人のハーフの女の子がこの日、突然髪の毛を真緑に染めてきた。しかもドレスまで緑。当時セントパトリックスデーなんて知らなかった筆者は、かなりビビった。
「こりゃ保守的な日本のおっさん共はひくやろ…。」と思ったものだが、意外に酔っ払い客共の食いつきがよく、思わず筆者は歯ぎしりしたものである。日本でも最近は、アイリッシュパブを中心に、セントパトリックスデーが祝われている。
雑学まとめ
アイルランドの「街中が緑色だらけになる日」についての雑学をご紹介してきた。この3月17日は、アイルランドにカトリックを普及させたセントパトリックの命日である。この日は国外のアイルランド移民が多い地域でも、街中を緑に染め上げて盛大に祝う。
近年は日本でもこの日を祝うイベントが増えてきたので、興味がある人は緑の衣装を着て参加してみてはいかがだろうか?