ビデオゲームやスマホゲームなど、最先端の技術を使った遊びが普及しても、根強い人気を誇る古くからの遊びは存在する。そのなかでも、誰もが1度は楽しんだことがあるのが、けん玉だろう。
けん玉は、日本ではかなり一般的な遊びであり、21世紀に入ってからはアメリカなどの海外でも「KENDAMA」として人気となっている。
海外でも「KENDAMA」という名で普及しているのだから、もちろん日本発祥の遊びである…といいたいところだが、実はけん玉発祥の地は、意外な国だったのである。
それでは、けん玉はもともとどこの国の遊びだったのか? 今回の雑学では、けん玉の歴史について解説していきたい。
【生活雑学】けん玉は日本発祥の遊びではなかった!
【雑学解説】けん玉の歴史について
日本において、けん玉らしいものが初めて登場するのは、江戸時代に発行された書物「拳会角力図会(けんさらえすまいずえ)」。この書物では「匕玉拳(すくひたまけん)」という名前で紹介されており、玉と受け皿がヒモで繋がっている絵が載っている。
そして、その後に出た「喜遊笑覧(きゆうしょうらん)」において「安永六七年の頃拳玉と云もの出來たり」との記載があり、ここで初めて「拳玉(けんだま)」という名前が出てくるのだ。
では、この「匕玉拳」や「拳玉」は、どこの国で誕生したものなのか?
これについては諸説あるようだが、一般的にはフランスの「ビルボケ(bilboquet)」が起源だとされている。ビルボケは16世紀の絵画などにも登場しており、庶民から上流階級まで幅広い層に普及していたとのこと。
文献によっては、当時の国王・アンリ3世も遊んでいたとの記載があり、フランスでビルボケが大流行していたことが伝わってくる。
このビルボケが、シルクロードを伝って中国経由で日本に伝わった、もしくは、オランダ経由で長崎に伝わった…とするのが、現在では有力な説だそうだ。
このように、はるばるフランスから伝わってきた「匕玉拳」や「拳玉」だが、日本では当初、お座敷遊びなどで使われており、いわゆる大人の遊び道具だったらしい。
その後、明治時代に文部省(現・文部科学省)が発行した「童女筌(どうじょせん)」において「盃及び玉」と紹介されてから、けん玉は子どもの遊びとして普及するようになる。
そして、大正時代にそれまでのけん玉に受け皿をつけた「日月(にちげつ)ボール」が広島県で開発され、これが現在のけん玉の元祖となったのだ。この日月ボールによってけん玉は加速的に普及し、現在に至るというわけである。
さらに2010年頃には、アメリカの若者が、ヒップホップなどの曲に合わせて技を披露する動画が流行し、海外でも「KENDAMA」として認知度が上がったという。そのパフォーマンスの様子はコチラの動画をご覧いただきたい。
このように、フランス生まれのビルボケが、日本でけん玉として成長し、世界へと羽ばたいたのである。けん玉ファンならば、この不思議な縁に感謝したいところだろう。
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【追加雑学】毎年開催!「けん玉ワールドカップ」はワールドワイドなイベントだった
おフランス生まれで日本育ちのけん玉だが、海外でも人気が出てきたのは先述の通りである。そして、この盛り上がりを受けて、2014年からけん玉世界一を決める「けん玉ワールドカップ廿日市(はつかいち)」が開催されているのをご存知だろうか?
この大会は、けん玉の世界的な普及を目指す「グローバルけん玉ネットワーク(GLOKEN)」が主催するものであり、開催地の広島県廿日市は、現在のけん玉の元祖となった「日月ボール」が最初に生産された場所なのだ。
世界一を決める方法は、6種類までの技(トリック)を披露する3分間の試技を2回行ない、その難易度による得点を競うというもの。
もちろん、ワールドカップにおいては、日本人選手が圧勝している…と思いきや、第1回大会ではアメリカ人選手が1位と2位を獲得し、日本人選手は3位という結果だったのだ! その第1回大会の模様はコチラ。
そして、2015年の第2回大会では、アメリカ人選手が1~5位までを独占するという強さをみせたのである! その後は日本人選手が優勝したこともあるが、アメリカや台湾などの海外勢の奮闘が目立っているようだ。
なお、けん玉ワールドカップは中学生以上のけん玉好きであれば誰でもエントリーできるので、腕に自信のある方はぜひ挑戦していただきたい。
雑学まとめ
日本発祥の遊びだと思っていたけん玉が、おフランス生まれなのは意外である。とはいえ、現在世界で人気の「KENDAMA」は、日本独自の「日月ボール」から生まれたものなので、日本人としては鼻が高いのではないだろうか?
最先端の技術で楽しむゲームなども面白いが、人間が技を駆使して、見る人を魅了するけん玉のような遊びは廃れないものなのかもしれない。
今回の雑学をみてけん玉に興味をもった方がいたら、ぜひ練習してワールドカップ出場、そして世界一のけん玉名人を目指していただきたいものである。