むかし、なつかし、おかし、金平糖(コンペイトウ)。
その素朴でシンプルな味、色鮮やかなボディー、そしてその可愛らしいフォルムはまさに夜空から落ちてきた星くずのよう。私たちはそんなお菓子界のスターを目の前にすると、ついつい手を伸ばし食べてしまうものである。あぁ、長靴いっぱい食べたい!
そんな魔性の魅力を秘めた金平糖だが、その突起の数を皆様は数えたことがあるだろうか。一見、バラバラな感じもするが実はあれ、決まっているのだ。型にはめたり、職人が一つ一つ付けている訳ではなく、偶然同じ数字になってしまうらしい。
しかもそれはある物理学上の1つの式によって成り立っているというのだ…一体どういうことなのか?! その一粒に詰まった驚きの雑学を、解説していこう。
【食べ物雑学】金平糖の作り方とは?突起の数は決まってる?
【雑学解説】金平糖の作り方が職人技すぎる。
お菓子に物理学? 方程式? 蔵本…シ、シバ…その時点でなんだがさっぱりなのだが、まず金平糖について知っておきたいのは、どのようにして作られているか。
金平糖の原料は、
- ザラメ(砂糖の一種)
- 糖蜜(液状の砂糖)
そして銅鑼(どら)と呼ばれる大きな大きな釜にザラメを入れ、釜を回転させながら加熱し、そこに糖蜜を入れいく。
簡単じゃん、と思ったあなた。なんとこの工程を2週間続けなければならないのだ。
ここで、実際に金平糖を作っているところを撮影した動画をご覧いただこう! こちらは、日本で唯一の金平糖の専門店「緑寿庵清水(りょくじゅあんしみず)」さんの金平糖作りの映像である。
金平糖の作り方としては、主に次のような工程がある。
- グラニュー糖を大きな銅釜に入れて水で溶かし、丁寧にかき混ぜ「糖蜜」を作る。
- 銅鑼(どら)という、常時ゆっくりと回転する斜めに傾いた大きなフライパンのような釜に、金平糖の核にあたる部分になる「もち米」や「ザラメ」を入れ、糖蜜を振りかけていく。
- 熱した回転する銅鑼のなかで転げまわる金平糖に、「水分が乾くたびに糖蜜を振りかける」という作業をつづけると、やがて粒が大きくなり、おなじみの金平糖の姿になる!
さらにその日の気温や気候によって、蜜の濃度・入れるタイミング・釜の角度・温度・かき混ぜ方など、釜で転がる音を聴いて状態を見極め、様々なことに気を配らなければならないのである。
まさに職人技…。
「コテ入れ10年、蜜掛け10年、あわせて20年かかる」といわれているそうだ。金平糖職人になるには20年もかかるのか…。もし職人に弟子入りできたとしても、金平糖への熱い愛がなければ続かないだろう。
金平糖の突起ができる仕組み
あの突起はどうやってできるのか?
金平糖は、最初はただの丸い粒のザラメやもち米。トゲトゲが出来る理由は、熱した銅鑼のなかで糖蜜をかけられ、回転する間に銅鑼からはがれたりくっついたりする動きが関係している。
- 金平糖の元が釜の中を転がる
- 鉄板に触れた部分の蜜が少し乾き硬くなる
- そこがわずかに出っ張り、他の場所より蜜が付きやすくなる
という工程を繰り返しあのツノが少しずつ成長していき、それが複数できるためあのような形になるのだ! 偶然あの形になる奇跡、金平糖に宇宙を感じる。
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物理学と金平糖、その関係とは…
そしてやっと本題、ツノの数…ここに1つの論文がある。
早川美徳、酒井勇(東北大学大学院理学研究科)
この中では、先ほどの金平糖職人が感覚で見極める様々なことを機械で制御し、どのような条件でどのような金平糖が作られるかという実験を行なっている。なにやら重々しくなってきたが、そこで面白い実験結果が出たというのだ。それは…
蜜が均一にコーティングされた理想的な金平糖は、平均して20~24個のツノを持つ。
お、出てきた「24」という数字。しかしこの20~24個という曖昧な数字、そしてあくまで平均という表現。
と、ここで登場するのが冒頭で紹介した「蔵本・シバシンスキー方程式」という式。
この式は同期現象、つまりバラバラだと思われていたものが様々な原因によって似通ってくるという現象の研究の中で用いられた式で、日本の蔵本由紀という方が唱えたものだ。
ではその式に、お菓子の金平糖と一体どんな関係があるのか。
この「24」という数を叩き出した際の条件、釜の温度や回転数などを「蔵本・シバシンスキー方程式」に入れ計算してみると…
なんとびっくり…ぴったり当てはまっちゃうのである! まじか!
すなわち、この「24」という数字は単なる偶然出てきた数字ではなく、物理学上しっかり裏付けされた数字なのだ!
またこの金平糖のツノ問題に関して、多くの方々が研究し、その研究結果の中に「24」という数字が出てくる。例えばこの方は、ツノの数は「24」個だと断言している。興味がある方は是非、読んでいただきたい。
ここで注意して欲しいのは、あくまで”蜜が均一にコーティングされた理想的な金平糖”のツノが24個になるということだ。
異なる材料を使った金平糖はまた違った平均の数が出てくるそう。ちなみに市販されている一般的な金平糖は、平均17~36個のツノの数になるのだそうだ。
【追加雑学】日本酒でできた金平糖がある
ここまで金平糖にまつわる壮大なトリビアをご紹介したが、やはり本来はお菓子なのでお菓子としての情報もご紹介しよう。
そもそも金平糖の原料である砂糖は、水などの他成分が入ってしまうと固まりにくくなってしまう。そのため、あのシンプルな味しか作れなかったのだが、現代の技術力の向上と金平糖職人の血のにじむ努力によって、今はほかの素材を混ぜて作れるようになった。
現在は色々なフレーバーの金平糖を楽しめるようになったのだが、その中でなんと「日本酒でできた究極の金平糖」があるというのだ。
その究極の金平糖を作っているのが、冒頭の動画でもご紹介した日本で唯一の金平糖専門店、京都の「緑寿庵清水(りょくじゅあんしみず)」さん。
このお店では日本酒だけではなく、ワインやブランデー、チョコ、キャラメルなどの様々な素材を使った金平糖も販売している。ぜひ食べてみたい!
が、なんと大人気ゆえ、ものによってはキャンセル待ち2年だとか。ひえ~…。
【追加雑学②】金平糖作りを体験できる施設
一人前になるまでには20年かかるとされる金平糖作りの世界だが、なんと日本には金平糖作りを体験できる場所がある!!
それは、コンペイトウミュージアム!
金平糖の歴史や作り方について楽しく学べるこちらのコオンペイトウミュージアムさんのサイトには、「直径85cmのミニ釜で金平糖の手づくり体験! 世界でたったひとつの「マイ金平糖」のお土産付き!」とある。
実際に福岡の店舗にて体験した方の動画をみてみると…?
小さな子が、さきほどの動画で職人さんがしていたのと同じように、回転する銅鑼の前で糖蜜かけをしている。自分でつくった金平糖は持って帰ることができるとのこと。これは大人でも、やってみたい…!
金平糖の作り方|雑学まとめ
今回は金平糖の突起の数についての雑学をお送りした。まさか古くからのお菓子である金平糖と物理学が結びついてしまうとは…。
またそれ以上に、金平糖の一粒には職人たちの人生・魂、そして科学者たちをも引きつける宇宙の神秘がぎっしりと詰まっていることに感動した!
今日は金平糖を買って帰ろう。そして眺めよう。
そして、優しい味わいと共に、その一粒に詰まった幾多の想いを噛み締め、食べていこうではないか。