小学校の理科の授業で、薬品をかけることで赤から青に、あるいは青から赤に変わる紙を見て、化学に興奮を覚えた人はいないだろうか。私はもっぱらその口だ。
当時の授業では「この紙はアルカリ性溶液をかけると赤から青に、酸性溶液をかけると青から赤に変わる紙なんだな」くらいの「不思議紙」的な認識しかなかったリトマス試験紙。
かける溶液によって色が変わる不思議な紙を「そういうものだ」と簡単に片づけてしまってよいものか。今回はリトマス試験紙に関する雑学をご紹介しよう。
【生活雑学】リトマス試験紙に使われている原料はコケ
【雑学解説】リトマスゴケの生態とリトマス試験紙の発明
物語は西暦1300年ごろ、スペインの科学者「アルナルドゥス・デ・ビラノバ」がリトマスゴケのもつ「リトマス」と呼ばれる紫色の色素が、水素イオンの強弱に反応して色を変えることを発見したことから始まる。
リトマスゴケは、地中海沿岸や西アフリカ海岸などに生息する地衣類(ちいるい)だ。地衣類は、菌類と藻類とが共生することでできた植物群のことで、きのこやコケの仲間である。
このリトマスゴケから採取した色素をろ紙に染みこませることで、リトマス試験紙となるのだ。これを塩酸につけたものが赤色リトマス紙に、水酸化ナトリウムにつけたものが青色リトマス紙となる。
ちなみに、リトマス試験紙とはこういうもの。
リトマス紙は酸性・中性・アルカリ性をそれぞれ測るもので、水素イオンの量で反応が異なる。つまり、水溶液が酸性であるか、アルカリ性であるかは水素イオンと水酸化イオンのどちらが多いかで決まるのだ。
水素イオンが水酸化イオンよりも多ければ酸性、少なければアルカリ性、同程度の量なら中性となる。この判定にリトマスの色素が一役かっているというわけだ。
ちなみにこのリトマス、最近では人工合成して作ることができるようで、リトマスゴケ自体の出番は減っているとのこと。
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【追加雑学】リトマス試験紙は自分でも作れる!
原料さえ知ってしまえば、実際に作ってみたくなるのが理科好きというもの。なんとリトマス試験紙は自分でも作れる。
残念ながらリトマスゴケは日本には生息していないため、代替としてウメノキゴケという地衣類の仲間を使って作ろう。用意するものはウメノキゴケ・オキシドール・アンモニア水・酢酸溶液だ。
オキシドール・アンモニア水・酢酸溶液は薬局などで入手できるが、ウメノキゴケは市販されていないので、松や梅、桜の木など多く生息している場所での採取が必要だ。
リトマス試験紙の作り方
- 採取したウメノキゴケのゴミや樹皮を取り除き、よく乾燥させた後、細かく砕く。
- 砕いたウメノキゴケをビーカーに入れ、アンモニア水を加えてよく混ぜる。
- さらにオキシドールを加えたら、アンモニア水が蒸発しないようにフタを閉め、暗所で保管する。
- 1日に2回~3回かき混ぜながら、1カ月発酵させる。
- 溶液をろ過して原液が完成。
- 原液を適当に水で薄め、ろ紙に染みこませ乾燥させる。
- 乾いたろ紙を水酸化ナトリウムにつけ、乾燥させれば青色リトマス紙の完成。
- 完成した青色リトマス紙をさらに酢酸溶液につけ、乾燥させれば赤色リトマス紙の完成。※6の段階で直接酢酸溶液につけてしまうとうまく染まらないので、一旦青色にしてから染めるとよい。
工程自体は難しいものではないが、手順が多く、少なくとも完成まで1カ月はかかるようだ。ここまで書いておいて言うのもなんだが、市販のリトマス試験紙もそこまで高いものではないので、やはり作るよりは買ってしまう方が賢明である。
今回ご紹介した作り方は、同じ地衣類のウメノキゴケを使ったものだが、他にも代用として紫キャベツやナスなどでも作ることができる。こちらの場合は、材料に含まれる「アントシアニン」という成分がリトマス同様に酸性・アルカリ性に反応を示すからである。
しかし、代用品でリトマス紙を作った場合は色の変化が本来のものと違い、酸性はピンク色が赤色に、アルカリ性は緑色が黄色に変色するようになる。
雑学まとめ
リトマス試験紙の使い方は理科の授業で教わったけど、リトマス試験紙の「作り方」は知らなかった。作り方を知れば、色が変わる仕組みなどに興味をもち、理科が好きになる子供も増えたのではないだろうか。
リトマスがコケの名前だったとは、世の中しらないことばかりである。梅や松の木にウメノキゴケを見つけたら、「リトマス試験紙ってさぁ~」と、つい言ってしまいそうな雑学であった。
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