水族館の超癒し系・巨体のマンボウは、なんと体当たりで死んでしまうことがあるというのは本当か! 体当たりで死んでしまうなんて危険すぎやしないかい?
のんびり、ゆったり泳ぎながら…ゆ~っくり体当たりして…死んでしまうのだろうか。たしかにあの巨体が何かにぶつかれば激しい衝撃がありそうだが、こちらが死んでしまっては巨体の意味がない。
それより死んでしまうなら体当たりなんてしなければいいのに…。そうは思わないかい? 一体どんな事情があるというのか? 今回はこの謎についての雑学を解明していく!
【動物雑学】マンボウは体当たりで死んでしまうことがあるってほんと?
【雑学解説】「マンボウ最弱伝説」とは?
「マンボウ最弱伝説」があるほど、マンボウがひ弱な生き物であることをご存知だろうか。この伝説は盛り上がりを見せ、激ムズの「マンボウ育成ゲーム」まで登場したとか。
そんなマンボウの「最弱伝説」を代表するのが「体当たりで死んでしまう」というもの。ネットで盛り上がりをみせたこのエピソードだが、これはマンボウトークが盛り上がり過ぎたがゆえに出てきた単なる噂。
なぜそんな面白おかしい噂が生まれたのかというと、マンボウは大量の寄生虫を振り落とすために、野生でも水族館でも全力ジャンプを見せるらしいのだが、その際水面に激突した衝撃で死んでしまうといわれちゃったのだ。
実際は、それで死んでしまうほどヤワじゃないようだ。そもそもそれだけで死んでしまうならジャンプするのをやめた方がいい。それよりマンボウの身体能力でジャンプできるほうにびっくりだ!
しかし、なぜそんなおバカな噂が盛り上がってしまったのか? それは、実際にマンボウが弱いからだ。
【追加雑学①】マンボウのひ弱エピソード
マンボウは体当たりで死亡しないことは分かったが、それ以外にも興味深い最弱エピソードがたくさんある。その中でも、単なる噂ではなく本当にマンボウが弱いというエピソードをご紹介しよう。
小魚の骨やエビの殻がのどに詰まって死亡
マンボウは消化能力が低く、魚をそのまま食べると骨が腸に刺さって死んでしまうことがある。そのため、主に動物プランクトンや柔らかいクラゲ、イカなどを食べている。消化能力が低いがために、食を妥協しなくてはならないのはなかなか辛いと思う。
ちなみに、水族館では魚介類をミキサーにかけてもらったり、すり身にしてもらったり、ゼリー状にしてもらったり…となかなかVIPな対応を受けているようだ。「ワシらも魚食いたいんじゃ!」「そのままだと食えないんじゃ!」といったところだろうか。
泳ぎが苦手
マンボウには魚にあるはずのものがない。魚の泳ぎを司る要・尾びれだ。マンボウの平たい尾びれっぽいアレは、背びれと尻びれが進化した「舵びれ(かじびれ)」と呼ばれるものであって、大事な尾びれは退化している。
そのため、他の魚のように尾びれを使いながら体を曲げることができず、後ろの方にある舵びれでゆっくりと方向を変える。…なぜ大事な尾びれを捨てたのか!
マンボウ最弱エピソードに「直進でしか泳げないため、岩にぶつかって死亡」というものがあるが、曲がれないわけではないのだ。曲がれないわけではないが、曲がり切れなくて衝突死…というのはあるかもしれない。
皮膚が弱すぎて触っただけで痕が付き、その傷が原因で死亡
マンボウの皮膚の表面はざらざらとしていて固いが、お肌は結構弱い。人が強く触ると痕がついてしまうこともあるらしい。水族館にあるマンボウの水槽で、クッションらしきものやガラスを覆うビニールを見ることがあるが、これもお肌よわ子ちゃんであるマンボウを守るため。
実は彼らは細かい鱗を持っているし、寄生虫から身を守る分泌液も出ているが、壁やガラスにぶつかると肌が傷ついてしまい、その傷からあっという間に感染症にかかってしまう。分泌液の存在もむなしく、寄生虫にやられてしまうのだ。
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【追加雑学②】「マンボウ最弱伝説」にはデマもある
「マンボウ最弱伝説」は面白おかしく語られているため盛られた話も存在する。いずれもマンボウのゆったりしたビジュアルから想像するとセンスの良いデマなのでご紹介しよう。
海底に潜水し、寒さのあまり死亡
800mくらいまで潜るとされているので、それはない。
朝の太陽光を浴びると強すぎて死亡
マンボウといえば、水面にぷかーっと横たわっているちょっと不気味な姿が有名だが、これは体についた寄生虫を焼くための日光浴であると考えられている。朝日を浴びて死ぬとしたら、水族館に連れてくることもできない。
極めつけはこれ。
近くにいた仲間が死亡したショックで死亡
これが本当だとすると、ちょっとしたことでマンボウが次々と亡くなり、それを見たマンボウも次々と亡くなってしまうということである。ここまでくるともう生存不可能な気がするのだが…。
それにしてもどのエピソードも想像してみるとたまらなく可愛い。
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【追加雑学③】マンボウは生物最多の卵を産む
生物最弱を噂されているマンボウだが、「生物で一番」のものがある。それは「産卵数」である。マンボウは実に3億個もの卵を産む。3億個…。一家族でアメリカ合衆国の人口くらいになる…!
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ところが3億個の卵、スゴいスゴいといっていられない。なぜなら、これまで話してきたようにマンボウがめちゃくちゃ弱いから…。生物で一番の産卵数は、裏を返せば生存率が低いからであって、生物最弱の証拠だ。
実際、3億個の卵の中から生き残ることができるのは平均で2匹だけ。ほぼ死んでしまう…厳しい! しかしこれもマンボウの立派な戦略。強いサメは体の中である程度育ててから赤ちゃんを産むし、大きなクジラに至っては哺乳類である。
その反対で、マンボウは弱いからこそ「数打ちゃ当たる」の精神で、頑張って大量の卵を産んでいるのだ。それぞれの生物が、自分の生態に合った方法で子育てをしている。みんなちがってみんないい。
雑学まとめ
今回はマンボウについての雑学をご紹介した。ゆったりのんびり、できるだけエネルギー消費を抑えて生きてきたマンボウは、その体を大きくすることに一番エネルギーを使ったと思われる。その体の大きさゆえ、基本的に天敵はサメしかおらず、捕食される心配はあまりない。
しかし! エネルギー消費を抑えすぎて自らぱたぱたと死んでは意味がないだろう! と思ったのは私だけだろうか。
小さいがために捕食されることを恐れ、常にびくびくしながらすばしっこく泳ぎ回る人生と、ゆったりのんびり自分のペースで生き、自分で死んでゆく人生…。果たしてどちらが幸福なのだろう。