根拠はなくても、なんとなく嫌な予感がして、本当に悪いことが起きてしまう。またその嫌な予感のおかげで、難を逃れられたということもあるだろう。
いわゆる「虫の知らせ」というヤツだ。一説にはご先祖様が守ってくれているともいうが、それなら虫の知らせじゃなくて、先祖の知らせじゃないか?
こうした予知能力のことを、どうして虫の知らせというのだろう。真相を探ると、人が何者かによって内側から操られているとする、古代の思想に辿り着いたぞ!
【生活雑学】「虫の知らせ」の本来の意味と由来は?
【雑学解説】「虫の知らせ」の意味と由来の背景
予知能力を「虫の知らせ」と呼ぶようになった由来は諸説あるが、有力なのは古代中国において信仰されていた道教の教えから、というものだ。
道教では、三尸(さんし)と呼ばれる3匹の虫がそれぞれ人の脳・腸・足のなかに住んでいるとされていた。
3匹の虫はただ住んでいるだけではなく、60日に一度、庚申(こうしん)と呼ばれる日に、その人間が悪いことをしていないか、神様に告げ口をしに行く。告げ口された者はなんと寿命を縮められてしまうというぞ!
なるほど、古代中国において虫は神様の雇った偵察部隊のようなものだったのか! そこから「悪いことをしていたら虫が神様に知らせに行く」→「虫が悪いことを知らせる」と、今の虫の知らせの意味に転じたのだとか。
なぜ体内に虫が住んでいると考えられたかを推測すると、人間の能力を説明するのに、「何者かがなかから操っている」→「体内で暮らせるのは小さな虫ぐらいだろう」となった、という感じか。
「虫の知らせ」=虫にコントロールされている?
江戸時代の日本でも、人間のなかに住む9匹の虫が、感情や意識をコントロールしていると考えられていたという。たしかに「虫唾が走る」「腹の虫がおさまらない」「虫がいい」など、感情に関係する言葉で「虫」が使われている日本語はたくさんある。
これらは当時、寄生虫によって不調をきたす人が多かったことが由来だ。病は気からとはよくいったもので、体調は感情にも如実に影響する。こういったことも、虫が感情をコントロールしているという考えに繋がっているのだろう。
虫が感情をコントロールしているとすれば、目に見えないものを察知する第六感を司っているのもまた虫だ、と考えられるようになったとして自然だ。
また道教の三尸の教えは平安時代には日本に伝来していたというし、もしかすると江戸時代のこの考え方も、そこから派生したものなのかもしれない。
いずれにせよ、「人間を内側から操れるものといえば、小さな虫ぐらいだろう」…という考え方は昔の人々の間では強固なものだったのだ。
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【追加雑学①】「虫の知らせ」の意味は、脳が下した無意識の推理?
脳科学者の茂木健一郎氏は、虫の知らせというのは言葉にこそできないものの、結局は脳が大量に得た情報から無意識に推理した結果だと話す。
茂木氏の記事「虫の知らせ」はなぜ起きるのか」ではメンタリストやナンパ師を例に出し、ターゲットの心理を読み取れるのは超能力などではなく、対象の仕草や表情からだとしており、これにはたしかに説得力がある。
筆者の友人にもナンパの名人がいて、一緒にいる限りでは、彼が女の子を連れてこれなかった日はなかった。場数を踏めば、普通は予想できないようなことでも、察知する能力を身に付けられる…虫の知らせは、その無意識バージョンということだ。
これは相手がいる、いないに限らず、自分の体調や置かれた状況からでも、人はこれまでの経験則でその先を推理しているものではないだろうか。動物の危機を察知する能力もこれと同じ理屈だろう。
脳の情報処理能力には、文字通り人知を超えたものがあるのだ。とはいえ、これも飽くまで一説に過ぎない。そのぐらい虫の知らせというものは、解明が難しい現象に違いないだろう。
【追加雑学②】虫たちの予知能力
人間界の虫の知らせの由来とはまた別だが、自然界で生きる虫たちは「これぞ虫の知らせ!」といえるような予知能力をしばしば発揮する。
まず有名な話だと、アリは体表にある感覚子という器官を使い、空気中の湿度などから、大雨が降ることを察知しているという。アリが巣穴を塞ぐことがあるのは、まさに大雨が降る前触れなのだ。
またカマキリにいたっては、秋の終わりごろに、その冬にどれぐらいの雪が積もるかを予知できるというぞ! その積雪予測より高い位置に卵を産むことで雪に埋もれず、卵は冬を越えて無事に孵化できるのだ。
虫たちは人間が科学力を駆使しても到底敵わないほどの、凄腕の気象予報士なのである。
「虫の知らせ」の雑学まとめ
予知能力を「虫の知らせ」と呼ぶのは、古代中国や、江戸時代の日本で体内に虫が住んでいると考えられていたことからだった。虫の知らせが起こるのは、脳のすごすぎる情報処理能力からだとする説もあるが、それも結局は一説にすぎない。
ひょっとすると、本当に体に虫が住んでいて、悪いことを知らせてくれているのかもしれないぞ! てんとう虫のような可愛らしい虫だったらいいのだが…。