戦争というのは決して起こってはいけないと思う。しかし人間の歴史は戦争とともに歩んできたともいえる。日本だけではなく世界中で、様々な争いごとが起こっていた。
数年、数十年で終わる戦争もあれば、百年戦争と名付けられた、文字通り100年弱続いた戦争もある。記録によると、最も長い戦争は335年続いていたという…それは最終的には戦争を起こした当事者も、不在の状態で行われたのであろう。
一体何がきっかけでそんなに長く続いてしまったのか…実はこの戦争が335年も続いてしまったのには、とんでもない理由が隠されていた。335年戦争の内容についての雑学を解説していこうと思う。
【歴史雑学】世界で一番長く続いた戦争は335年間
【雑学解説】335年戦争…しかしその戦争での負傷者や死亡者はゼロ
この戦争は1651年にイギリス国内で始まる。きっかけとなった出来事は、イングランド内戦と呼ばれる軍事衝突だ。内戦で王国派と議会派という2つの勢力がすでに10年ほど争っている最中であった。
この内戦は議会派が有利に進んでおり、徐々に王国派をイギリスの端へと追い詰めているところだった。結果的に王国派はイギリス本土の居場所を失い、イギリス本土の南西にある王国派の領地であったシリー諸島に撤退することとなった。
ここへ新たに登場するのが議会派と同盟を組んでいたオランダの軍隊。イギリスとの同盟関係を維持しようと、議会派とともに王国軍との争いに参戦してきたのである。王国派とシリー諸島周辺でトラブルのあったオランダが、王国派へ宣戦布告したことで1651年の4月、335年戦争という長き戦が始まった。
…と、思うであろうが、戦争そのものは宣戦布告直後に、王国派があっさり降伏したため、一発の銃弾も撃たれず、また一滴の血も流れず、そして一人も命を落とさずに終結した。
戦争が335年も続いた理由は「戦争をしていたことを忘れていたから」
しかし、戦争は王国派が降伏したことで終わったように見えるが、宣戦布告をしたオランダが戦争終結の宣言をしていなかったため、形式上は終わっていなかったのだ。原因は王国派の領地であったシリー諸島という、限定された地域のみに宣戦布告をしていたせいで、うやむやになっていたためである。
周囲もそのような細かいことを気にもしていなかったために、戦争をしていたことも忘れ去られてしまったのであった…。
戦争終結に至ったきっかけは、戦争が物理的に終了してから335年後の1986年、この戦争について調べていた地元の歴史研究家が、事実上戦争が終結していないことに気がついたからである。この後初めてイギリスとオランダの間で戦争終結の宣言が行われ、335年戦争はようやく終結したのであった。
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オランダ海軍の標的はシリー諸島ではなくイギリス国王軍
ではなぜ両者が戦争していることを忘れてしまったかというと、オランダ海軍がシリー諸島へ向かう道半ばで、そもそもの敵がいなくなったからである。
どういうことかというと、オランダ海軍が敵対視していたのは、シリー諸島そのものではなく、当時のイングランド内戦において劣勢になり、シリー諸島へ逃げ込んでいたイギリスの国王軍だったのだ。
この時代、絶対君主制と民主制をめぐって、イギリス国内は二分化していた。権力者の独裁体制に対し国民が権利を訴える背景は、フランス革命しかりこの時代ならではといえる。
そして国民派の議会軍に国王軍側が追い込まれるのもこの時代ならでは。こうしてイギリス国王軍はシリー諸島へ逃げ込み、復活の機会を伺っていたのである。
なぜそこにオランダが攻め込んでくるのかというと、オランダ海軍は兼ねてからイギリスの議会軍と協調している一方で、国王軍からは略奪行為を受けていたのだ。
1648年にスペインから独立したばかりのオランダは、国力を維持するためにイギリスからの支援に頼らざるを得なかった。国王軍はその弱みにつけ込んでいたというわけだ。
要は議会軍の猛攻で窮地に立たされた国王軍の有様を目にし、「日頃の恨みを晴らすのは今しかない!」と反旗をひるがえしたのである。
到着前にイギリス国王軍が壊滅。シリー諸島に恨みはないし…
こうして1651年6月、オランダ海軍はシリー諸島へ向かうのだが、なんと時期を同じくして、イギリスの議会軍が国王軍を壊滅させてしまった。そのため「あ、国王軍もういないんだ…」と、自国に引き返すことになったのだ。
もはや敵のいないシリー諸島に対し、戦争していることを忘れてしまうのも無理はない。そしてシリー諸島側としても、オランダに直接的な恨みなどない。
こうして335年戦争は、1985年に歴史家のロイ・ダンカンがその事実に気づき、オランダ大使館へ手紙を届けるまで放置されていたのである。そして1986年、めでたく両者が平和条約を結び、終戦を迎えることとなった。
平和条約も何も…そもそも揉めてもいないのだが。
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【追加雑学】335年が最長じゃない?2000年くらい続いた戦争が存在する!
ここまで長々と続いた戦争について書いてきたが、調べている最中に驚愕の事実を知ってしまった…なんと、世界最長の戦争は335年戦争ではないようである。紀元前264年にイタリアのシチリア島で勃発したポエニ戦争が、おそらく最長である…。その年月なんと、2134年。
もはやSF映画も真っ青な年月である。
こちらも長期化した原因は335年戦争と似ており、覇権争いが原因で勃発した戦争で、終戦の宣言が曖昧な状態になっていたのだ。最終的にポエニ戦争が終わったのは、335年戦争終結の1年前の1985年にローマとカルタゴの両国で終了の条約が結ばれた。
335年戦争と違うのは、ポエニ戦争では紀元前146年までの間に、多くの軍人や市民が命を落としていることである。
雑学まとめ
世界で一番長く続いた戦争についての雑学をご紹介したが、いかがだっただろうか。335年という膨大な期間行われた戦争は、誰も傷つくことのなかった平和な戦争であった。戦争とは厳密なルールが有るのだなと、調べながら思った。
我々の生活でもそうであるが、うかつに他人とのトラブルは起こさないに越したことはないだろう。話し合いなど、平和なスタイルで解決できるならば、それが一番である。
人類は皆兄弟。争いごとは無くして、誰もが幸せに生活できる未来が訪れることを、願うばかりである。
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