「カツ丼でも、食うか?」
今でこそ時代錯誤丸出しのセリフだが、昭和の刑事ドラマにおいて、クライマックスの取調室にカツ丼は欠かせなかった。主人公の優しさに触れ、犯人が涙ながらに自白し始めるというのがお決まりの流れである。
うん…きっと警察官にとってカツ丼は、自白を促すためのマストアイテムなのだろう! …と、思っていたら、カツ丼を出すのが違法行為だと!? 今回はそんな取調室のカツ丼に関するトリビアだ。
【ルール雑学】警察の取り調べでカツ丼を出すのは違法!
【雑学解説】取り調べでカツ丼を出すのが違法な理由とは?
昭和の刑事ドラマのように、実際に警察の取調室でカツ丼が出てくるようなことは一切ない。容疑者の自白を促すために物を与える行為は賄賂とみなされ、法律で禁じられているからだ。
警察官は人情のような曖昧なものではなく、厳正な証拠や証言に基づいて処分を下さなければならない…といったところか。
もし警察官が容疑者に自腹でカツ丼をおごるようなことがあれば、懲戒免職となり、職を失ってしまうことになる。
ちなみにカツ丼だけではなく、タバコやジュースなんかも全部アウトだ。実際に警察官が処分された事例も多くある。ドラマの人情味あふれる主人公を夢見て警察になった人などが、うっかりやってしまうのだろうか…。
またタレントのビートたけしが事件を起こした際、取調室でカツ丼を要求したところ、保釈後に1,300円を請求されたという有名な逸話もある。
というか、賄賂うんぬんの前に、取調室は飲食厳禁のはずなのだが…当時は今より規制が緩かったのか? 実際は容疑者が食事をする場合、取り調べは一度中断され、留置所にて支給されるものを食べる。取調室で出るのはお茶と水だけだ。
…うーん、これではドラマのクライマックスも盛り上がらない。まったくそのとおりで、カツ丼はドラマを盛り上げるためのフィクション。現実にはあり得ない話だったのだ。
【追加雑学①】「取り調べでカツ丼」という演出が生まれた理由は?
最初にカツ丼が登場したとされる刑事モノの作品は、1955年公開の映画『警察日記』だ。これを皮切りに昭和を代表する大作『太陽に吠えろ』などにも登場し、カツ丼は刑事ドラマ界のスタンダードとして浸透していく。
そもそもどうしてカツ丼なのかというと、当時の日本において、カツ丼が贅沢品の象徴だったからだ。
今でこそ庶民の食べ物となっているが、戦後の貧しい日本ではお腹いっぱいにご飯を食べられる機会などそうそうなく、ボリューミーなカツ丼を食べられるのはこの上ない贅沢だった。
つまり安月給の刑事が自腹を切り、贅沢品を容疑者におごる設定が感動を演出するのにもってこいだったわけだ。
また容疑者というと、どこか身なりの落ちぶれた男性のイメージがある。そんな男性の喜ぶ食べ物としても、カツ丼はイメージにピッタリだ。
ほかの食べ物でいい気もするが…ラーメンはデリバリーすると伸びてしまうし…カレーも当時出回っていた小麦粉を炒めたものは、冷めるとボソボソしておいしくない。うん! やっぱりカツ丼がベストだ!
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【追加雑学②】「取り調べのカツ丼」を体感できる旅館がある!【動画】
福島県猪苗代町(いなわしろまち)の中ノ沢温泉「磐梯西村屋(ばんだいにしむらや)」という旅館では、刑事ドラマの取り調べ風に、カツ丼が提供されるサービスを行っているという。
刑事役・犯人役を選ぶことができ、演技をしてくれる人もスタッフのなかから指名できるのだとか。女性ももちろんいるので、女警察官に「カツ丼、食うか?」と言ってもらうレアシチュエーションも可能ではないか。
以下はサービスの一部始終を収めた動画だ。え…逮捕のシーンからやっちゃうの? これは気合入りまくりだ!
何を隠そうこれも震災後の復興活動の一環。地元に観光客を呼び戻そうと、福島の人たちは奮闘しているのである。
「取り調べのカツ丼」の雑学まとめ
今回は刑事ドラマの取調室で登場するカツ丼のトリビアを紹介した。警察の取り調べでカツ丼が出てくるのは、刑事ドラマのなかだけの話。実際は警察官が容疑者に物を与える行為は賄賂とみなされ、決して許されることではない。
というか刑事ドラマの影響で、カツ丼を食べたいがために犯罪を犯すような輩もきっといたのではないか…?