とある休日の夜。お腹は空いたものの、自炊するのは面倒くさい。
だからといって外食するのも面倒くさい。日々の仕事を頑張っている大人ならば、そんな夜があるのも当然である。
そして、そんな夜を助けてくれるのが、カップラーメンの存在。熱湯を入れてたったの3分待てば完成するという手軽さは、まさに最強である。
だが、3分待つことすら面倒くさい…という食いしん坊もいるかもしれない。そんな、せっかちな方のために1分で完成するカップラーメンが発売されていたのである!
とはいえ、残念なことに1分で完成するカップラーメンは、発売後しばらくしてから販売停止となっている。忙しい現代人にとって救世主ともいえる食べ物なのに、なぜ販売停止となってしまったのか? 今回はそれに関する雑学を探っていきたい。
【食べ物雑学】たった1分で完成するカップ麺「Quick1」が不人気だった理由は?
【雑学解説】1分で完成するカップ麺の問題点
冒頭で紹介した熱湯を入れてから1分で完成するカップラーメンとは、1982年(昭和57年)に明星食品から発売された「Quick1(クイック・ワン)」。しょうゆ味の「ピリッと辛辣中華」・とんこつ味の「こってりポークブイヨン」・カレー味の「スパイシー印度カレー」の3種類がラインナップされていた。
このカップラーメンはテレビCMなどで大々的に宣伝され、かなりの話題となったものの、少々問題がある商品だったようだ。CMはこちらの動画で確認できるぞ。
まず、1分で完成するがゆえに、完成したときには熱すぎて食べにくいという問題。では、もう少し待てばいいのでは…と思うかもしれないが、それならば3分で完成するカップラーメンと同じである。
また、1分で完成するということは麺が水分を早く吸収するということであり、麺が伸びやすいというデメリットもあったようだ。
その後、麺を伸びにくいものに改良するなど品質向上に務めたが、同じタイミングで、「Quick1」が日清食品の製法を特許侵害しているという問題も発生し、結局は1984年(昭和59年)に発売停止となっている。
だが、その後も明星食品は、1分で湯切りできるカップ焼きそば「チョッパヤ」などの時短を追求する即席麺を発売。そして、2013年(平成25年)には2代目「Quick1」を発売した! …のだが、残念なことにこちらも2015年(平成27年)に販売停止となっている。
このように、2代に渡って不人気だった「Quick1」。明星食品の開発担当者たちは、さぞかし嘆いたことだろう。
【追加雑学①】カップラーメンの待ち時間が3分の理由
残念ながら不人気だった「Quick1」だが、他社も1分で完成するカップラーメンを作ることは技術的に可能らしい。
では、なぜカップラーメンの出来上がり時間は3分が定番なのだろうか? これについてカップヌードルの日清食品は、「あえて3分にしている」と説明していたらしい。
初のインスタントラーメンであるチキンラーメンを発明した安藤百福は、3分待つことで空腹と期待感が高まり、インスタントラーメンを美味しく食べられると考え、完成までの時間を3分としたそうだ。
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ちなみに、1分だとインスタントラーメンに対する気持ちは盛り上がらず、5分だと待ちくたびれてしまうらしい。それゆえ、3分という待ち時間が絶妙のタイミングとして設定されたのである。
「Quick1」が失敗に追い込まれた理由は、この心理を読めなかったからかもしれない。
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【追加雑学②】山頂では3分待っても美味しいカップラーメンはできない!?
さて、カップラーメンの待ち時間に関する雑学をもう1つ。
山登りにカップラーメンを持っていき、山頂で食べるのが好きだという方もいるのではないだろうか? 山登りで疲れた体に熱々のカップラーメンは最高! …と思うかもしれないが、純粋に味だけを比べると山頂で作ったカップラーメンは、あまり美味しくないようである。
その理由は気圧。山頂では気圧が低いため、水の沸点は低くなる。
たとえば、富士山の山頂ではお湯は88度程度にしかならないのだ。そのため、お湯を注いで3分待っても麺が固いままであり、カップラーメンの味はイマイチとなってしまう。
では、もう少し待てばいいのかというと、それだと、ただでさえ低い温度で作ったスープがさらに冷めてしまい、やはり味はイマイチである。
そうなると、山頂で美味しいカップラーメンを楽しむのは諦めた方がいいのでは…と思うかもしれないが、山頂でも美味しいカップ麺は存在する。
そのカップ麺とは、日本航空(JAL)と日清食品が共同で開発している「ですかい」シリーズ。そばやうどん、らーめんなどがラインナップされており、航空機内で美味しく食べられるよう、低い温度でも麺が戻りやすく、伸びにくい工夫をしているそうだ。
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登山通のあいだでは有名だという「ですかい」シリーズ。もし登山の機会があれば、持っていくと話題になるかもしれない。
雑学まとめ
1分で完成するカップラーメン「Quick1」は時代を先取りしすぎた商品だった…と思いきや、30年後にリニューアルされても人気は高くなかったようだ。短時間で完成するのはありがたいが、冷静に考えると、待ち時間が1分というのはお湯を入れてからが慌ただしい。
待ち時間を3分とした安藤百福の眼力は流石というしかない。皆さんもカップラーメンができる3分の間に、この雑学を披露していただければ幸いである。