セーラー服といえば女子高生、女子高生といえばセーラー服。
…一歩間違えれば変態のような始まり方だが、筆者にそんな趣味はない。今回セーラー服に注目したのは、その成り立ちがイギリス海軍の軍服という、女子高生とは繋がりもないところから始まっていることに興味が湧いたからだ。
海の上で生死をかけて戦う彼らのシンボルがどうして学生服に? たしかに軍服にしてはファッショナブルな気もするが…。そう、偶然ファッショナブルだったことに、目を付けた人がいたのだ!
【生活雑学】セーラー服が女子の制服になった理由とは?
【雑学解説】セーラー服が子供服として流行!
1830年ごろのこと、セーラー服はイギリス海軍の軍服として登場した。海の男たちの戦闘服だったセーラー服がどうして学生服になったのかというと、イギリス・ハノーヴァー朝第6代の女王ヴィクトリアが、子ども向けファッションとして流行らせたことがきっかけだ。
1846年のこと、セーラー服のデザインを気に入ったヴィクトリア女王は、息子であるエドワード7世にも、クルージングの際に着せたいと思い、子ども用のセーラー服を作らせた。
その姿が可愛いと評判だったことを受け、ほかの王子や王女たちにも着せるようになると、やがて国民の間でも、子ども服として大流行していくことになる。
そして子ども用のセーラー服があるということで、海軍を目指す少年たちが通う幼年学校の制服にも採用されるように。そこから徐々に小中学校でも使われるようになり、セーラー服は学生服のスタンダードに成り上がったのである。
なるほど、子どもが着ている姿が可愛いというところから、学生服に使われるようになったということか!
セーラー服が女子の制服なのは日本だけ!
日本でセーラー服が学生服として使われるようになったのは1920年のこと(海軍は1872年に導入済み)。京都の平安女学院が先駆けとなり、多くの学校が後に続いたという。
また女子だけがセーラー服を着る風習は日本ならではのものだ。これは導入された当初、男子生徒がすでに海外からやってきた「学ラン」を着ていたからである。
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大正初期の女学生と聞けば、袴をまとった和服姿を想像する人も多いだろう。要するに男子が洋服を着ているのだから、そろそろ女子も洋服にしてもいいんじゃないか…という風に後発で制服が変わっていったから、男女でまったく様相が違うのである。
一歩間違えば女子生徒が学ランを着ているような事態もあり得たかもしれない。想像してみたがお世辞にも可愛いとは言えないぞ…。
ちなみに学ランはもともと陸軍の軍服である。男子の制服が軍服に倣っていたことも、女子にセーラー服を導入したことの一因なのだろう。
【追加雑学】セーラー服は機能性重視
セーラー服といえば、大きな襟にスカーフ、V字の首元が特徴だ。なんでもそれらは海軍で採用された当初、どれも見てくれを意識したものではなかったという。
まず大きな襟は波の音や強風にさらされる船上において、会話や指示を聞きもらさないため、襟を立ててアンテナのように集音する目的で付けられたという。
また一説には、当時イギリス人男性の間で長い髪を後ろで束ねる「ビッグテール」という髪型が流行っており、海兵はそれが強風で乱れないよう、ポマードをベッタリとつけていたため、服が汚れないようにというものもある。
そしてスカーフは汗を拭うための手ぬぐい。V字の首元は万が一海に落ちたときに、すぐに服を脱ぎ捨てられるように、あの形になっているのだ。
なるほど…そのデザインのすべてが機能性を重視して作られている。まさに女子中高生のイメージとは程遠い、海の男の戦闘服である!
セーラー服の雑学まとめ
海軍の軍服だったセーラー服が学生服になっていったのは、イギリスのヴィクトリア女王が「子どもに着せたら可愛い」と思ったところから。そして日本で女子限定の制服になったのは、すでに男子の間で学ランという洋服が一般的になっていたことからだった。
機能性重視でデザインされた海の男たちの服が、偶然可愛かったことは運命的である。授業で先生の声が聞き取り辛いときなど、こっそり襟を立ててみてはどうだろう。もっとも、女子高生がやるとシュール以外の何者でもないが…。