現在、筆者はイタリアで暮らしているが、海苔(のり)は高い。中国人街のスーパーで3倍程度の値段で売られている。庶民にはなかなか手が出ない。
食後のおやつとして海苔をバリバリ食べていた、日本の生活が恋しい…。
「SUSHI」が世界中に普及したおかげで、海外でも海苔は多少高価だが手に入れることができる。ところが、海苔を伝統的に食べている国は少ないのである。
今回はそんな海苔についての雑学を紹介していこう!
【食べ物雑学】「海苔」を食べるのは日本だけ?
【雑学解説】世界的にみると、海苔を食べる国は少ない
日本食・SUSHIの世界的ブームにより、現代では海苔はあらゆる国で食べられている。しかし、黒くて平べったい紙状の奇怪な食べ物・海苔はもともと世界の嫌われ者だった。
日本食ブームが起きる前のアメリカでは、海苔は「ブラックペーパー」と呼ばれており、「日本人、黒イ紙食ベテヤガルヨ!」なんていわれていたらしい。
しかし、昔から海苔を食べてきている国は、日本だけではない。韓国・中国・そしてヨーロッパのごく一部の地域では、海苔は伝統的に食されてきたのである。
韓国では酒のつまみにもなるごま油が効いた韓国海苔、中国ではスープに海苔を入れるなどして親しまれてきている。
ヨーロッパに目を向けると、イギリス・ウェールズ地方ではペースト状の海苔をパンに合わせて食べられている。後で詳しく取り上げるが、イタリア・ナポリでも海苔を使った料理が存在するのだ。
日本の海苔の歴史
さて、ここで日本の海苔の歴史をひも解いてみよう。日本人と海苔の付き合いは長い。
奈良時代の書物『常陸国風土記(ひたちのくにふどき)』という書物には、「ヤマトタケルは、海苔が大量に干されている浜辺の光景に感動した」という記述が残されている。黒々とした海苔が浜一面に干されている様子に心動かされるなんて、素敵な感性の持ち主ではないか。
ちなみにヤマトタケルさん、「スゲー海苔の量だな! ここの村の名前『ノリハマの村』にしとこうぜ!」と、この一帯に安直な名前を付けたそうだ。海苔だけに、ノリが軽い話である。
また、平城京では、つくだ煮のような海苔の加工物を販売していた「藻葉店(もはだな)」というところもあったのだという。ただし、天然のものしか取れなかった当時、海苔は貴重な食材であり、もっぱら貴族が食する食べ物だったとされている。
江戸時代になると、幕府に献上するために海苔の養殖が始まる。それにより、海苔が市場にも多く出回るようになり、ついに庶民も海苔を食べることができるようになったのだ。
ちなみに、板海苔が登場するのは江戸時代中期のことだ。これは、紙すきの技術を海苔に応用したことによる。
この発想がなければ、我々は海苔巻きおにぎりも巻きずしを食べることもなかったかもしれない。そのことを思うと、発明者には頭が上がらない。
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【追加雑学】イタリアにも海苔を使った料理が存在する
上記でも触れたように。ヨーロッパの一部の地域でも海苔は食されている。ここで、現在筆者が暮らしているイタリアの伝統的海苔料理をご紹介しよう。
イタリアの海苔を使った料理は、「zeppoline(ゼッポリーネ)」と呼ばれる揚げ物である。イタリア語で「海藻」の意味をもつ「zeppole(ゼッポレ)」という名前が料理名についていることからわかるように、ズバリ海藻メインの一品なのだ。
さて、このゼッポリーネは、イタリアの中でも海が近いナポリの郷土料理である。ナポリといえば、ピザが有名な地域だが、このゼッポリーネのベースもピザ生地でできている。
どうやら、この揚げ物は、ナポリ人が「あ~ピザ生地余っちゃった~! あ、海苔あんじゃん! 混ぜて揚げてみっか!」とひらめいたことが由来となっているらしい。
ゼッポリーネは日本のスーパーでも買えるような材料で作れるので、気になる方は以下の動画を参考に挑戦してみてほしい。生海苔がない場合、青海苔を代用してもいいだろう。揚げたての磯の香りが漂うゼッポリーネは絶品だ。
雑学まとめ
海苔についての雑学を紹介してきた。世界的に見ると、海苔を食べるのは日本をはじめとした、ごく一部の地域に限られている。
その多くはアジア圏であるが、ヨーロッパでも海苔を食する文化をもつ地方は存在する。そして、イタリア・ナポリには海苔を使った郷土料理・ゼッポリーネという揚げ物があり、お酒のあてにピッタリな一品だ。
余談ではあるが、イタリアにはこれと似た名前の「zeppole(ゼッポレ)」という揚げシュークリームのようなお菓子もある。海苔は入っていないまったくの別物であるが、こちらも美味で個人的にオススメなので、目にする機会があれば一度ご賞味いただきたい。
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