「共食い」と聞くと、なんとも痛々しい複雑な心境になる。しかし、子孫を残すため、また単純に目の前にあるエサとして…動物や昆虫の中で、「共食い」をすることはそれほどめずらしいことではないようだ。
その中でも特殊な生きものがいる。
それは、外の世界へ産まれる前にお母さんの体内で共食いをする習性があるサメだ。そして、その生存競争に勝ったものだけが産まれてくるという…。考えただけでもぞっとする。
そのサメの名は「シロワニ」。ワニのような名前だが、日本の近海にも生息している、大型のサメである。今回の雑学では、この「シロワニ」の出生の秘密について紹介するぞ!
【動物雑学】お母さんの子宮の中で共食いするサメ「シロワニ」
【雑学解説】シロワニの最初に孵化した子供は、ほかの卵を食べて成長する
シロワニは、世界中の比較的あたたかい海に生息しており、大人になると体長3.2mにもなる大型のサメだ。その大きさを知って、もうすでにこわい…。
シロワニの卵は子宮の中で孵化し、子宮の中で成長してから外の世界に産まれてくる「胎生」で子孫を残してきた。胎生で産まれてくる生きものは、親の体内で孵化したあと、通常は親の体の栄養分で成長する。
しかし、シロワニは違う…。
ここからが恐ろしい話だ。なんと子宮の中で1番最初に孵化した子供は、ほかの卵や孵化したあとの兄弟たちを食べて栄養を吸収し、大きくなるのだ!
孵化するころの体長は55mmほど。まずほかの卵を食べて成長し、17cmほどまで成長すると歯が生えそろい、あとから孵化した兄弟を次々と食べつくす…。兄弟を栄養にする生活を1年近く過ごし、外の世界へ出てくるころには、1mほどにまで成長しているのだという。
つまり、1番最初に孵化したものが早く成長し、力をつける。そして、たった1匹になるまで共食いを続けるということだ。
どの卵が1番に孵化するか…。1番に孵化しなければ食べられる可能性大なのだ。食うか食われるかの世界。
シロワニは、卵のうちからすでにサバイバルがはじまっているのである。こわすぎっ…。
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【追加雑学①】サメなのに「シロワニ」?
ところで、サメなのになぜ「シロワニ」とよばれているのだろう。
これは、昔の日本人が、サメとワニの区別がつかなかったせいだといわれている。
日本にワニは生息していない。ワニという言葉が伝わってきても、見たことがなかったため、どんな生きものなのか想像もできなかった。ことから、サメのことをワニとよんでいたのだとか…。
その流れで、今でも「シロワニ」とよばれているそうだ。ややこしいから改名すればいいのに。
【追加雑学②】サメの子宮は2つある
さらにおどろきなのが、サメには子宮が2つあるということ。つまり、1匹のサメから2匹の子ザメが産まれるということだ。
妊娠しているときの母サメは、エサも食べずに、たくわえた栄養を使う低燃費モードの生活をしているそうだ。そのお腹のなかでは、子供たちがおそろしい生存競争をしているということは分かっているのだろうか…。
これが孵化したシロワニだ!
孵化したばかりの子ザメをうつした驚きの映像だ。恐ろしい場面もあるから心してご覧あれ!
海の中を不気味に泳ぐ母サメ。そして、そのお腹の中には、兄弟を食べて成長する子ザメがいるわけだ…。恐ろしくてぞっとする。
雑学まとめ
今回の雑学記事では、お母さんの子宮の中で共食いをする「シロワニ」というサメついて紹介した。海を泳ぐシロワニは、産まれたときから始まる厳しい生存競争を生き残った強い子だということだ。
兄弟を食べつくして産まれてくるシロワニ…。絶対に凶暴やん! と思いきや、意外なことにサメの中では温厚な性格らしく、ジョーズのように人間を襲うことはないという。
と聞いても、海で3mのサメに出くわす恐怖を味わいたいとは思わない…。