スキージャンプといえば、筆者が思い出すのは1998年の長野オリンピック。日本人が金メダルを獲得したその戦いに、日本中が沸いていた。学校でもテレビを点けることが許されたぐらいだ。
選手が着地する瞬間、アナウンサーが「K点、K点、K点を越えたあーーーー!」と叫んでいた。私も友人も、先生も叫んだ。
こうして日本中に感動を巻き起こした「K点越え」という言葉。なんでも最近は、当時とはその意味が変わって来ているというぞ?
【スポーツ雑学】スキージャンプでは「K点」の意味が変わった
【雑学解説】K点が「これ以上飛ぶと危険」という意味じゃなくなった理由とは?
当初、「K点」という言葉は、ジャンプ台を建設する際に、そのジャンプ台で飛べる限界の距離を表したものだった。K点のKはドイツ語の「Kritischer」で、「限界点」の意味。
つまり「このジャンプ台でこれ以上飛ぶと危険ですよ」というポイントだったわけだ。
しかし近年のジャンプ競技では、K点越えをする選手など当たり前にいる。空気抵抗の少ないウェアーやスキー板の開発、選手の技術が磨かれたなどで、飛距離は飛躍的に伸びているのだ。
これによって、K点のKも「Konstruktions」という「建築基準」という意味に変わってしまった。現在の競技におけるK点は「ここから飛距離を測りますよ」という基準点に成り下がっているのである。
飛距離がどんどん伸びていくというのはロマンのある話だ。しかしもはや、K点越えのあの興奮は過去のものとなってしまった。競技のおもしろさは変わらないが、長野オリンピック世代の人間としては複雑である。
知ればもっと面白くなるスキージャンプのルール
どれぐらい飛んだかもスキージャンプの醍醐味だが、競技では同時にフォームの美しさも競う。採点のシステムを知っていれば、より観戦が楽しくなるぞ!
まず飛距離は、基準を60ポイントとして、K点より遠くなれば加算、K点よりも手前であれば減点される仕組みだ。
そしてフォームの美しさは、5人の審判が持ち点20ポイントの減点方式で採点し、最高得点と最低得点をカットした3人の点数が採用される。要するに最高点は60ポイントだ。
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審判が見るポイントは、「飛ぶ美しさ・着地の仕方・着地後」の3つ。それぞれに注目して見ると、また違った楽しみ方ができるだろう。
以下は2019年3月に日本新記録を達成した小林陵侑(りょうゆう)選手のジャンプシーンだ! 着地後の点数表示も、仕組みを知っていれば一目瞭然である。
【追加雑学】スキージャンプは囚人を死刑にするかを決めるものだった?
その昔、ジャンプ競技が日本で一般的ではなかったころ、「スキージャンプはノルウェーの処刑法の一種だ」というデマが流されたことがあったという。
囚人を飛ばせて、着地に成功すれば無罪、失敗すれば死刑という、カイジにでも出てきそうなめちゃくちゃな設定である。それほど当時の日本人には、あの高さを飛ぶことは信じられないことだったのだ。
スキージャンプがノルウェーで生まれた1840年ごろといえば、日本は江戸時代…。切腹が行われていた時代に生まれたスポーツと考えれば、そんな想像をしてもおかしくないのかもしれない。
雑学まとめ
ジャンプスキーにおけるK点の意味は、時代を経てそのジャンプ台で飛べる「限界点」から、採点の基準となる「基準点」へと変化した。今ではK点より手前に着地すれば減点になってしまうのだから、改めて技術革新のすごさに気づかされる。
今後、選手たちはどこまで飛べるようになるのだろうか。テレビで競技を観るのが、より楽しみになってきた!