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選手を救済!スポーツ専門の裁判所がある【スポーツ仲裁裁判所】

雑学カンパニー編集部

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スポーツトラブル専門の裁判所があったという雑学

選手たちの白熱した勝負が、観る者の感動を呼ぶスポーツ競技。ときに、その勝敗の判定をめぐって、大きな波紋を残すことも珍しくない。そうしたスポーツの判定や裁定に関して、選手たちが不服を申し立てられる機関があることをご存知だろうか。

それがスイス・ローザンヌにあるスポーツ専門の裁判所・CASである。また国内にも同様の機関が設けられている。この記事では、国内外のスポーツ裁判所にまつわる雑学をご紹介する。

【スポーツ雑学】スポーツトラブル専門の裁判所があった

新人ちゃん
課長、選手たちが不服を申し立てられる機関があるって本当ですか?
マッチョ課長
スポーツ仲裁裁判所のことだな。国外ではスイスのローザンヌ、国内では東京・港区にそれぞれ置かれているんだぞ!

【雑学解説】スポーツ仲裁裁判所とは、選手がドーピングの処分に対する不服やオリンピックの代表選考に関する異議を申し立てられる機関

スポーツ仲裁裁判所とは、選手がドーピングの処分に対する不服やオリンピックの代表選考に関する異議を申し立てられる機関についてのトリビア

スポーツ選手がオリンピックや世界選手権などに出場することは、選手の人生を左右するほどの大きな意味をもっている。個人競技の場合、選手が世界大会やオリンピックに出場できるか否かは、競技を統括する連盟や団体の選手選考によって選ばれることがほとんどだ。

そうした競技連盟がくだした選考や判断に対して、選手側が不服や申し立てをおこなえる機関がある。それが1984年に国際オリンピック委員会によって設立された「スポーツ仲裁裁判所」である。英名では、キャス(CAS)と呼ばれている。

CASの本部は、スイスのローザンヌにある。内容を審議する仲裁人は、スポーツに精通した専門家によって構成される。日本からも弁護士大学教授など、選手の権利に精通した人物法律の専門家がメンバーに名を連ねているという。

新人ちゃん
まさに専門家集団って感じですね…
マッチョ課長
扱う案件の問題があるからな。その方が選手も安心できるだろう。

審議される内容は、ドーピングを巡る判定をはじめ、国際大会への出場資格や競技結果の判定などが多いという。また、申し立てが受理される条件は、申請者が仲裁を依頼した対象となる相手方の事前の承諾が必要となる。また判決が出れば上訴のできない仕組みがとられている。

新人ちゃん
受理されるには、相手方の了承がいるのですね!

選手の人生を左右するともいえる世界大会やオリンピック。その出場をかけた選手の選考や勝敗の判定ともなれば、選手側に不満が出てきてもおかしくない。そのような意味で、スポーツ裁判所は、選手たちにとって意義のある機関といえるだろう。

マッチョ課長
選手側の権利が保障されている証拠だ!

日本にも「スポーツ仲裁機関」が設けられている

日本にも「スポーツ仲裁機関」が設けられているというトリビア

CASのように、日本にも同様の機関がある。それが2003年に日本オリンピック委員会によって設置され、後に公益財団法人として独立した「日本スポーツ仲裁機構」である。通称JSAAと(ジェイエスエイエイ)と呼ばれる。

JSAAの本部は東京都港区に置かれており、スイスにあるCASと同様に、ドーピングにまつわる仲裁や調停などをメインに取り扱う機関である。審議をおこなうメンバーは、スポーツや法律に造詣の深い関係者によって占められている。

CASとJSAAとの違いは、英語での手続きが必要となり、日本の選手の場合には高額な費用がかかるCASと比べて、JSAAは国内に設置された機関のため、日本語での申し立てが可能で、申請にかかる金額は5万円程度で済むといわれる。

新人ちゃん
5万円!安く抑えられているのですね!
マッチョ課長
CASよりも申し立てがしやすくなっているんだ。

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【追加雑学①】スポーツ仲裁裁判所に提訴した日本の有名水泳選手とは?

オリンピックの代表選考やドーピングにまつわる仲裁をおこなう、スイス・ローザンヌにある「スポーツ仲裁裁判所」。実は日本の有名水泳選手も、この機関に申し立てを行なっていたことをご存知だろうか。

それが1992年のバルセロナ、1996年のアトランタと、2大会続けてオリンピックの出場を果たした、200メートル自由形の選手、千葉すずである。

マッチョ課長
美人スイマーとしても有名だったぞ!

問題の裁定はシドニーオリンピックの代表選考会をかねた日本選手権で起こった。彼女はオリンピックの標準派遣タイムをクリアし、200メートル自由形で優勝を飾った。だが、日本水泳連盟はオリンピックの代表選手に別の選手を選んだのだ。

その選考を不服として、彼女は日本人として初めて「スポーツ仲裁裁判所」に提訴した。しかしながら、「スポーツ仲裁裁判所」が出した結論は、裁判費用の一部負担を連盟側に払うよう命じたのみで、彼女の主張は認められることはなかった。

彼女はシドニー五輪に出場を果たすことなく、その後現役を引退した。

【追加雑学②】スポーツ仲裁裁判所に提訴した日本の有名Jリーガーとは?

スポーツ仲裁裁判所に提訴した日本の有名Jリーガーについてのトリビア

「スポーツ仲裁裁判所」に提訴をした有名スポーツ選手は他にもいる。その選手が、かつて川崎フロンターレに所属し、元日本代表にも選ばれたJリーガー・我那覇我和樹(がなはかずき)である。

我那覇選手のケースは、より複雑で深刻なケースである。問題は、あるスポーツ新聞に掲載された記事から始まった。2007年4月、あるスポーツ新聞に、我那覇選手が「にんにく注射」を打っているとの記事が掲載された。

スポーツ新聞の報道を受けて、Jリーグに設置された「ドーピングコントロール委員会」はこれを問題視し、我那覇選手にドーピング違反で6試合の出場停止処分をくだす。だが、我那覇選手が実際に受けたのは、脱水症状を発症した際に打った点滴にすぎなかった。

新人ちゃん
ひどい…選手があまりにかわいそうです!
マッチョ課長
マスコミもマスコミだ!これでは選手が報われない!(怒)

しかし、ドーピングコントロール委員会はその裁定を撤回しようとはしなかった。我那覇選手は、国内にある「日本スポーツ仲裁機構」に申し立てを行おうとしたが、Jリーグ側が承諾しなかったことから、自費でスイス・ローザンヌにあるCASへ提訴した。

その提訴には、総額3,000万以上の費用がかかったとされる。2008年5月、CASは我那覇選手の主張を全面的に認め、ドーピングコントロール委員会が出した出場停止処分を取り消す判定をくだした。またJリーグに対して、我那覇が負担した弁護士費用などの一部を支払うように命じた。

2019年の現在も、我那覇選手は日本プロサッカーリーグの3部(J3)に相当するクラブチーム「カマタマレーレ讃岐」に所属し、サッカー選手として活躍している。

新人ちゃん
いまも現役なのですね。かっこいい~!
マッチョ課長
おお、素晴らしいゴールだぁ!

上にあげた動画は、2019年6月に記録した我那覇選手のスーパーゴールである。スポーツ新聞の誤報が、選手の人生や名誉を棄損(きそん)する重大な事態を引き起こした。

また選手を守るはずの競技団体が、逆に選手を追い込むというあってはならない事態も招いた。彼はそんな逆境にも負けず、いまだに現役のサッカー選手として人々に感動を与えている。

雑学まとめ

以上、スイスのローザンヌと日本国内にあるスポーツ裁判所の雑学についてご紹介してきた。選手を守るはずの連盟や組織が、ときに選手と軋轢(あつれき)や対立を生むことがある。その際にスポーツ裁判所は、選手にとって最後の頼みとなる機関になるはずだ。

だがもっとも重要なことは、こうした不幸な事件を未然に防ぐルールの明確化や、競技を統括する団体の真っ当な組織運営にあることはいうまでもないだろう。

新人ちゃん
その通りだと思います!
マッチョ課長
まさしく。選手と統括団体がひとつになって、スポーツははじめて成立するからな!

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