人間の基本的な感覚といえば、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感である。このすべてが正常に機能していることが、日常の活動を支障なく行ない、生活を楽しむためにも不可欠だ。
ある説では人間には「第六感」と呼ばれる、五感を超えた感覚もあるとされている。目に見えない何かを察知する能力や、霊感のような、理屈では説明できない感覚があるというのだ。
…とここまでいっておいてなんだが、今回はそんな「シックスセンス」の話ではない。そもそも人間には、五感・六感どころか、もっとたくさんの感覚があることがわかっている。
この雑学記事では、おもに温度感覚・痛覚・平衡感覚の3つの感覚についてとりあげる。人体の仕組みについてのこのトリビアを知ると、自分自身の体をもっとよく理解できるぞ!
【人体雑学】人間は五感のほかに、温度感覚・痛覚・平衡感覚などの感覚がある
【雑学解説】五感だけではなかった!温度感覚・痛覚・平衡感覚のしくみ
人間の身体に備わっている感覚をおもに基本的な五感とする考え方は、時代を遡ること遥か昔、ギリシャ哲学・アリストテレスを起源としている。たしかに今でも、感覚の基盤をなすのは五感であるとされている。
しかし、アリストテレスさんを否定するつもりはさらさらないが、近代の研究によりさらに多くの感覚があることがわかっている。細かく分類するならざっと20以上はあるともいわれているのだ。
ここではすべてを取り上げられないので、その中から温度感覚・痛覚・平衡感覚についてご紹介しよう。
温度感覚のしくみ
温度感覚とはつまり、気温が暑いとか寒いとか、何かに触れて熱いとか冷たいとか感じる感覚のことである。温度が高いか低いかは皮膚で感じ取るため、温度感覚は触覚の一部ともいえる。
皮膚には様々な刺激を感知する受容器が存在し、その中に温度受容器もある。そこで冷たいとか熱いとかの刺激が感知され、末梢神経を通して信号として送られる。信号が脊髄を通り、大脳に到達すると、身体が実際に「熱い」とか「冷たい」と感じるのだ。
しかも温度の違いによって刺激の伝わる速度が異なるようだ。つまり、「熱い」という刺激と「冷たい」という刺激は、伝わり方が違うということである。
しかし、こうした温度感覚についてはまだ不明な点も多く、今も研究が行われている。さらに詳しくわかれば、熱中症対策に有効な方法が見つかるかもしれない。
痛覚のしくみ
痛覚も皮膚を介して感知されるので、触覚のなかのひとつといえよう。痛みの刺激は侵害受容器から認識される。痛いという信号を脳に送ることにより、これ以上侵害されると身体にとって危険だと知らせているのである。
怪我をすると侵害受容器も変化し、痛みの感知度がさらに高くなる。それは組織や細胞の損傷によって発痛物質が送られているからである。それで傷口はより痛みに敏感になるというわけだ。
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平衡感覚のしくみ
平衡感覚の受容器は意外にも耳にある。といっても外側に見えている部分の耳ではなく、奥にある内耳だ。内耳は「蝸牛(かぎゅう)」「耳石器」「半規管」の3つの部分からなっている。蝸牛は聴覚をつかさどっている。
耳石器は、静止しているときの体の傾きを感知する。耳石器には「耳石」と呼ばれる細かな石のようなものがあり、身体を傾けると耳石も動く。この耳石の動きを感知して、脳の前庭と呼ばれるところで認識される。それにより姿勢を保つための指令が各部位に送られるのだ。
半規管は、動いているときの体の回転を感知する。半規管のなかにはリンパ液が流れていて、回転するとリンパ液に流れができる。その流れを「クプラ」という受容器が感知して、脳に信号を送るのだ。
そのため平衡感覚をつかさどる内耳に異常が生じると、めまいが起こる。軽いめまいであれば、内耳の血流が悪いのが原因かもしれない。その場合は耳を温めると症状が軽減されることもあるようだ。
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【追加雑学】それぞれの感覚を整理することを感覚統合という
上に取り上げた3つの感覚だけでも、体のなかでいろんな複雑なやりとりがされていることがわかる。しかも、一瞬のうちに同時に様々な刺激が常に脳に伝えられているのだ。
そこで、脳のなかでは、こうしたたくさんの感覚を整理する作業が行われている。それを「感覚統合」という。この感覚統合によって、受けた情報に応じて体が対応できるようにしているのだ。
この感覚統合がうまくいかないと、そのときその場に応じた行動をとることができない。最近よく耳にする発達障害は、脳のなんらかの支障で、この感覚統合がスムーズにできていないことが原因だと考えられている。
そのため「感覚統合療法」と呼ばれる、各感覚を組み合わせて整理するための訓練方法も行われている。
また、ブランコ遊びやだるまさんがころんだなど小さな子供の遊びからも、感覚統合は養われている。子供が外で元気よく遊ぶことは、感覚を正常に機能させるためにも大切なことなのだ。
雑学まとめ
今回は私たち人間の身体に備わっている、様々な感覚のしくみの雑学をご紹介した。普段のなにげない行動はすべて、体で受ける刺激をもとに脳で感覚として処理され、そのときに応じたふさわしい行動ができるようにしていることがわかった。
五感をはじめとするそうした体の感覚を意識してみると、人体のつくりの素晴らしさを改めて実感できるだろう。ぜひ感覚を研ぎ澄まして、身の回りの小さな刺激も楽しもう。
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