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速いけどねえ…。サラブレッドが軍馬になれない理由とは?

雑学カンパニー編集部

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サラブレッドが軍馬になれない理由に関する雑学

馬というと、多くの人が真っ先に思浮かべるのはサラブレッドだろう。もっとも代表的な競走馬であり、スマートなシルエットもかっこいい。

また映画では騎馬武者が合戦に用いるシーンも多く、サラブレッドは軍馬としても活躍していたイメージが強い。日本には元来サラブレッドがいなかったため、日本の馬では軍馬として役に立たないといわれたこともあるぐらいだ。

しかし…実のところ、サラブレッドは海外でも軍馬として利用されたことがない。それどころか、軍馬にはまったく向いていないというではないか! 競走馬として優秀なサラブレッドなら、戦場も疾風のごとく駆け抜けてくれそうなものだが…。

今回はそんな「サラブレッドは軍馬としては役立たず」というトリビアをお届けしよう。

【動物雑学】サラブレッドが軍馬になれない理由とは?

サラブレッドが軍馬になれない理由に関する雑学

ライオンくん
サラブレッドって優秀な馬なんだろ?どうして軍馬になれないんだ?

ウサギちゃん
彼らは神経質で荒地に弱いんだ。しかも虚弱体質だから、軍馬としては役に立たないんだよ。

【雑学解説】サラブレッドは走るのは得意だが虚弱体質

サラブレッドは非常に優秀な競走馬である。人を乗せた状態で数分間、時速60kmを維持して走り続けることができる。

また、瞬間的な速度時速90kmを超えることもあり、あらゆる動物の中でトップクラスのスピードで走る能力をもっているのだ。

外見的にも美しいため、映画の騎馬武者はサラブレッドに乗っていることも多い。そのため、軍馬として活躍していたイメージをもつ人も多いだろう。しかしサラブレッドには、競走馬以外の用途に向かない理由がいくつもある。

ライオンくん
サラブレッドはオールマイティに優れている馬ってワケじゃないのか…?

サラブレッドは体が弱く、扱いが難しい

サラブレッドは体が弱いという雑学サラブレッドは足も速く、持久力が低いわけでもない。しかし簡単に骨折してしまうなど、能力に反して虚弱体質な面があるのだ。

サラブレッドが乗せられる限界は、器具などの重さを合計して75kgとされている。そのため競馬の騎手にも体重の制限がある。また、整地されていない場所を走ったりすれば、すぐにケガをしてしまうという。あのスピードは整地された競馬場限定のものだったのだ…。

加えて気性が激しく神経質なため、扱いが非常に難しい馬でもある。戦場の過酷な環境には到底持ちこたえられないだろう。

ウサギちゃん
実はサラブレッドは胃潰瘍になりやすいんだ…。
ライオンくん
胃潰瘍になる原因っていったら、一般的にストレスだよな…?

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これらの性質を踏まえて、サラブレッドは軍馬にはまったく向いていないのだ。戦前の日本軍もサラブレッドを軍馬に採用しようとしたことがあったが、その際はすぐに諦めている。

ただし、そのスピードはやはり戦場においても魅力的だったのだろう。サラブレッドを別の種類の馬と交配させ、より頑丈に改良されたアングロノルマン種アングロアラブ種と呼ばれる馬が、近代の戦争で軍馬として活躍している。

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【追加雑学①】鎧をつけて馬上で戦闘するのは不可能?

鎧をつけて馬上で戦闘するのは不可能であるという雑学日本の在来馬ポニーしかいない。そのため戦国武将が戦に使った馬も、必然的にポニーということになる。

ウサギちゃん
ポニーというのは体高が147cm以下の馬のことを指すんだよ。彼らについてはあとでまた触れるね!

しかし重い甲冑(かっちゅう)を着た武士を乗せて戦うのは、ポニーでは無理だという意見が多い。よって馬に乗って戦う武田の騎馬隊などは、後世が作り出した誤ったイメージだという説があるのだ。

なんだか夢が壊れてしまうような話だが、戦国時代の日本で騎馬戦を行うことは、物理的に無理ということらしい…。

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これは日本だけの話ではなかった。ポニーに限らず、そもそも人間が馬に乗って戦闘するのは厳しいとされているのだ。

海外にはポニーよりもはるかに大きな馬が数多く存在する。その中でも軍馬として重要視されていたのは、サラブレッドより体重のある中間種と呼ばれる種類だ。

中間種は120kg程度までの重量なら耐えることができ、短距離ではサラブレッド並みのスピードをもつ種類も存在する。これなら一見して騎馬戦も行えそうなものである。

ライオンくん
これなら軍馬としても使えそうだよな。

しかし金属でできた騎士の鎧は、重さ40kgを超える。これに馬具や武器などを装備すると、120kgなど簡単に超えてしまうのだ…。まさか、中世ヨーロッパの騎馬戦まで架空のイメージだというのか!?

ちなみに現代でもヨーロッパでは、馬に乗ってダミーの槍で戦うランス試合が行われている。

以下にその様子を捉えた動画を紹介しておこう。試合でも中間種の馬が採用されているが、これは実際より軽いダミーの武器を使うから可能なのである。

ライオンくん
こんなにかっこいいのに…。中世の騎馬戦が現実味の薄い話だったなんて残念だぜ…。

西洋の騎士は大型種に乗っていた

中世の騎士が騎馬戦を行っていなかったなんて…。どこまで夢を壊せば気が済むんだ! と言いたくなるが、安心してほしい。実は当時の騎士たちはデストリアという、今は絶滅してしまった大型種の馬に乗っていたのだ。

大型種は1トンのそりを引いて走ることもできる馬で、鎧を着た騎士が乗っても十分に戦えるのである! しかし、いかんせんスピードが遅く、大型種は全力疾走でも時速40㎞程度でしか走れない。要は足の速い牛が走っているようなものである。

中世の騎士が馬に乗って戦っていたのは事実のようだが、映画のような疾走感ある戦闘シーンは、残念ながら架空のものと言わざるを得ない…。

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ちなみに大型種の馬は中世の戦場に限らず、現代でも立派に活躍している。北海道では彼らにそりを引かせる「ばんえい競馬」が観られるぞ!

以下に動画を紹介しておこう。スピードこそ劣るものの、その大きさは迫力満点だ!

ウサギちゃん
競馬みたいな迫力はないけどカッコいいよね!

実は、木曽馬は軍馬として優秀だった

近代以前に日本の軍馬として活躍していた木曽馬(きそうま)は、現代の分類ではポニーに該当する馬だ。

ポニーのような小さな馬に乗っていては、武田の騎馬隊も戦闘はおろか、移動すらままならないのではないか…などと思わされるが、武田軍はちゃんと馬に乗って移動している。

木曽馬は体重400kg以上で、サラブレッドより少し小さい程度の馬だ。中には500kgを超えるものもおり、人を乗せての長距離移動には十分耐えられるのである。

ライオンくん
そんな大きいポニーなんているのか?!

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え? ポニーってそんなに大きいの? と思った人もいるだろう。どういうことかというと、ポニーの基準は体の大きさではなく、体高で決められているのだ。肩までの高さ147cm以下の馬のことをポニーといい、背が低いだけで体の大きいものは存在する。

木曽馬は鎧武者を乗せても、時速20㎞程度の速さで長距離移動することが可能だという。馬に乗ったまま戦闘するのは難しくても、軍をいち早く目的地へと導く役目を果たしていたのだ。

実際に、大型種を従えた中世ヨーロッパの軍隊に、木曽馬と同程度の大きさのポニーに乗ったモンゴルの騎馬軍団勝利した例もある。1235~1241年頃まで行われた「ワールシュタルトの戦い」だ。

パワーこそ大型種には劣っていたかもしれないが、モンゴルの騎馬軍団はポニーの機動力を活かした素早い行軍で、ヨーロッパ連合軍に一方的な勝利を収めている。このように、小柄なポニーでも軍馬として優秀な場合があるのだ。

日本の木曽馬はこのモンゴルの馬に近い血統であり、軍馬として優れていた。イメージとは違う可能性は高いが、武田の騎馬隊が馬を上手く利用し、戦国時代で恐れられた可能性は十分あり得ることなのだ。

ウサギちゃん
木曽馬はまだ日本にいるよ。長野県の天然記念物なんだ。

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雑学まとめ

サラブレッドに関する雑学まとめサラブレッドはかなり足が速く、60km以上の速度を維持して走行できる相当に優秀な馬である。しかし体格的にはかなり貧弱で、合戦に使われていたというのは、見た目のかっこよさからくる架空のイメージでしかなかった。

サラブレッドは体高160~170cmと、かなり背の高い馬である。それに対して体重500㎏程度。これは140cm以下の木曽馬と比べても、それほど変わらない重さだ。人間に例えると長身でガリガリ…明らかに体育会系ではない

とはいえサラブレッドは競馬で走ることに最適化した馬であり、芸需品とまで呼ばれている。得意のフィールドでは、存分に輝ける存在なのだ。

ライオンくん
サラブレッドとポニー…それぞれに良い点があって、どっちも素晴らしい馬だよな!
ウサギちゃん
どちらも人間たちの生活に深くかかわっている大切な仲間でもあるよね!

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