「灯台下暗し」ということわざがある。「遠くの物事にばかり目を向けて、すぐそこにある物事に気づかない」という意味だ。
たしかに、灯台の明かりは遠くの船から見つけてもらいやすいように、光がまっすぐ横に伸びている。だから、逆に灯台のすぐ下の海や岸には光が当たらない。
と、思われているだろうが、実はこのことわざに登場する灯台は海の灯台じゃないらしい…。
な、なんだってー!? と驚いたアナタのために、今日は「灯台下暗し」の灯台についての雑学をご紹介しよう。
【面白い雑学】「灯台下暗し」の「灯台」の意味は?
【雑学解説】「灯台下暗し」の「灯台」は「灯明台」!
いまでこそ、スイッチを押せばパッと明かりがつくのが当たり前になっているが、電気がなかった時代の照明はどうしていたのか?
というと、小さな皿に松の根や油を入れて火を灯したものを室内灯として使用していたのだ。それを脚のついた台に乗せてできるだけ広い範囲を照らせるようにしたものが灯明台である。
灯明は皿の縁より上側を照らすことは出来るが、皿の下側には光が届かない。それは台に乗せても変わらないので、灯明台の真下は照らされることなく暗いまま。
すなわち、「灯明から少し離れたものは照らされて見ることが出来るが、灯明台のすぐ下は、暗くて様子がわからない」というところから「身近なことはかえってわかりにくい」という意味のことわざになったのだ。
ちなみに「灯台元暗し」だと灯台から少し広い範囲を指すことになるので、灯台の真下を指す「灯台下暗し」と書くのが正解である。
【追加雑学①】灯明台の仕組み
灯明台には、灯明皿や油皿と呼ばれる二枚重ねの皿を乗せる。上の小皿には油とこより状にした紙の灯心を入れ、下の皿は灯心から垂れてくる油の受け皿になっている。
この灯明皿を支える台座を灯台と呼ぶ。灯台にはいろいろな形のものがあった。たとえば、平安時代の宮中で使われた結灯台(むすびとうだい)は、三本の棒の片側を束ね、もう片側を三脚のように開いて立てて使う。束ねた側も三方に小さく開くので、そこに灯明皿を乗せるのだ。
また、どっしりと安定した台座に支柱を一本たて、その上の小さな台に灯明皿を置くタイプもある。支柱の高さが標準の約97cmより高いものが高灯台(たかとうだい)、低いものが切灯台(きりとうだい)と呼ばれる。
室内など広い範囲を照らすには高灯台、手元など狭い範囲を照らすには切灯台を用いていたようだ。
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【追加雑学②】灯明の明るさってどのくらい?【動画】
「灯明台は周囲を照らすが、足元は照らせない」という性質から考えても、灯明はそれほど明るくないことが分かると思う。
ただ、それがどれくらいの明るさなのか? というと、現代人がイメージするのはベッドサイドに置くナイトランプのようなものなんじゃないだろうか。
実は、ナイトランプが眩しく感じるくらい、灯明は明るくない。なぜなら、灯明の明るさは2ワット程度しかないからだ。これはだいたいライターの炎くらいの明るさだそうだ。
芯の数を増やせばロウソク1本程度には明るくなるというのだが、ということは要するに灯明はロウソクよりも暗いのである。光が届く範囲であっても薄暗いだろうから、灯明台の下など暗くて当然だ。
こちらは、暗闇での灯明の明かりがどれくらのものか、よくわかる動画だ。
地面に直接おいてあること・複数の灯明皿を並べてあることなど、室内で灯明台を使うのとは条件が違うが、灯明の明るさ…というより暗さがどんなものか、お分かりいただけるのではないだろうか。
「灯台下暗し」の雑学まとめ
灯明台なんて、もはや日常ではお目にかかれない代物になってしまったし、現代の照明は天井から下向きに照らす方式だから、照明の足元が暗いなんてピンと来ないかもしれない。
でも、「灯台下暗し」のことわざとともに本来の灯台の意味が語りつがれていけば、灯明台という文化があったこともちゃんと残っていくだろう。
というわけで、ぜひ「灯台下暗しは灯明台のこと」というトリビアを広めていってほしい。