みなさんは醤油を購入する際、どんな基準で選んでいるだろうか。醤油には大きくわけて薄口と濃口があるが、料理好きでもなければ細かい違いなど、詳しくは知らないものだ。
なんとなく「薄口のほうが味が薄いのだから、塩分とかも少ないんでしょ」などといって選んでいる人もいるのではないか? 実はこれは大きな間違いで、薄口のほうが濃口よりも塩分濃度は高いのだ!
その秘密はまさに、「薄口が薄口であるため」の製造工程にあった!
【食べ物雑学】薄口醤油と濃口醤油の違いとは?
【雑学解説】薄口醤油の「薄口」は「色が薄い」の意味
薄口醤油の「薄口」は、「通常よりも色が薄い」という意味で名付けられていてる。色が薄いのは発酵が抑えられているためで、その分、香りや醤油独特のコクも控えめだ。
一方、含まれている塩分は18~19%と、通常の16~17%に対して2%ほど高くなっている。香りやコクは控えめなのに? と思うところだが、これはまさに薄口醤油特有の「通常より発酵を抑える」という作り方のためだ。
醬油は、蒸した大豆と炒った小麦を混ぜたものに麹菌、塩水を加えて作られる。これが発酵するのは麹菌が大豆や小麦の有機成分を分解するからだ。つまり発酵を抑えた醤油を作ろうと思うと、麹菌の働きを弱めなければならない。その役割を担うのが塩水の殺菌効果である。
薄口醤油は通常より濃度の濃い塩水を用いたうえ、熟成にかける期間も短くすることで、発酵を抑えている。よって香りやコクは控えめでも、塩分は高いのだ。そのままだとしょっぱいので、仕上げに水あめや甘酒を使って味を調整している場合も多いぞ。
醤油の味が主張しすぎないので、吸い物やうどんなどの料理にはもってこいだ。しかし「薄口だから」といって多量に摂りすぎると、高血圧などの生活習慣病になってしまうぞ!
以下の動画は大正時代より能登半島で経営され続けてきた「鳥居醤油店」の貴重な仕込みシーンだ。「子どもたちが蒸したての大豆を、おやつ代わりに食べにくる」という裏話もアットホームで、和やかな気分にさせられる。
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【追加雑学】薄口醤油・濃口醤油以外の醤油もある!
薄口醤油が発酵を抑えたものなら、多くの人が想像する通常の醤油は濃口醬油。薄口がほぼ料理用なのに対し、濃口はつけ・かけにも使えるオールマイティな醤油である。
このほかにもユニークな製法の醤油がいくつかあるぞ!
溜(たまり)醤油
ほとんど大豆だけを使った濃厚な醤油。加熱すると赤みを帯びる特徴があり、あられや煎餅などにも使われる。
たしかに柿ピーやおにぎりせんべいなど、醤油の味わいが強いお菓子は赤いイメージだ!
再仕込み(さいしこみ)醤油
再仕込み醤油は発酵させる際、塩水の代わりに同程度の塩分濃度をもつ「生揚げ醤油(きあげしょうゆ)」が用いられる。
生揚げ醤油はまだ加熱処理がなされる前の醤油で、麹菌も活発なため、別で仕込まれる麹菌と合わせた二段仕込みの熟成効果が得られる。
ドロリと濃厚な味わいが特徴で、刺身醤油にはバッチリだ! 生産量が少ないため、少々高価なのが難点か。
白(しろ)醤油
大豆をメインにした醤油があれば、小麦メインの醤油だってある。白醤油は小麦9割・大豆1割で作られる醤油で、発酵期間は薄口醤油よりさらに短い。そのため色もひときわ薄く、まるでビールのような琥珀色だ。
独特の甘みと風味が、高級料理の隠し味などに好まれる。ただし塩分・糖分共に高濃度で含まれているので、薄口醤油と同じく摂りすぎには注意だ。
このように薄口・濃口以外にも多様な味わいの醤油がある。名前は聞いたことがあっても、それぞれどんな違いがあるのか知らなかった人も多いのでは? 特徴を知っていれば、料理もより楽しんで味わえそうである。
「薄口醤油と濃口醤油」の雑学まとめ
薄口醤油は発酵を抑える目的で濃度の濃い塩水を用いるため、通常よりも塩分が高めである。つまり醤油の塩分は単純な味の調整ではなく、発酵度合いを調整するために使われていたということだ。
恥ずかしながら筆者も「薄味のほうが体には優しいでしょ」といって、刺身醤油にすら薄口醤油を使っていた。色や名前だけで「体にいい」と決めつけてしまうとは、人間はいかにもイメージに左右されやすい生き物である…。