オーストラリアに生息する、ウォンバットという動物をご存知だろうか。
大きなネズミのようでもあり、はたまたコアラのようでもある。オーストラリアの特集番組や旅行のパンフレットなどで目にする、ずんぐりむっくりなヤツ…。それがウォンバットだ。
めちゃくちゃカワイイのだが、それにも増してユニークなウォンバット。どこがユニークかって?
実はふんがね、四角いキューブ型なんです。
…え? それってお尻の穴が四角いとかそんな感じ? というのはちょっと違う。
ウォンバットの四角いふんは、もっと複雑な要素が絡み合ってできている。彼らがオーストラリアで生き残っていくための知恵の結晶である。
今回はそんなウォンバットの四角いふんの雑学を紹介しよう!
【面白い雑学】ウォンバットのふんは四角形
【雑学解説】1日100個の四角いふんは縄張り主張のため?
ウォンバットは、オーストラリアの草原に生息する地面に掘った巣穴で暮らす動物だ。エサとなる植物の根や葉、茎を求めて地上にもちらほら出てくる。
以下の動画を見ればその魅力も十分にご理解いただけるだろう。人懐っこくて動きもコミカル。カンガルー・コアラに次ぐオーストラリアの人気者だ!
そしてこのウォンバットのもっともユニークな特徴が、四角いキューブ型のふんをするところだ。
Wombat poo is cube shaped so they can mark their territory with it but no one knows how they make their poo square #advancedwombattechnology pic.twitter.com/fIvMhyRoWS
— Diana S. Fleischman (@sentientist) November 3, 2016
なんかこんな感じのチョコあったよね…というのはあんまり言わないほうがいいか。こんな形状のふんをするのは今のところ、地球上でウォンバットだけだ。
ウォンバットは巣穴の周りの目立つ場所に一日80~100個のふんをするといい、研究者のあいだでは長らく、縄張りを主張するためだといわれてきた。四角いとどこかに転がっていくことがなく、巣の近くに残しておけるからだ。
一日100個って…とんでもない快便野郎だな。積み上げたら普通にレンガ風の家とか建てられそうだぞ…。絶対住みたくない。
とにかくウォンバットはそれだけ縄張り意識が強い動物なわけだが、研究者によっては「別に縄張りを主張してるわけじゃなくて、単に縄張りのなかでふんをしているだけだよ」という人もいる。
ふむ、この辺りはウォンバットに聞いてみないとわかりそうもない。ともあれ、気になるのはなぜ四角いのかということだ。
ウォンバットのふんはなぜ四角い?
研究者たちのあいだで、ウォンバットのふんが四角い理由は以下のふたつの理由からだといわれてきた。
- 水分の少ない乾燥した地域に住んでいるから
- 消化器官が特殊な形状をしているから
まず水分の少ない地域に住んでいるからという推測は、動物園に住んでいるウォンバットのふんが四角くない場合が多いことからきている。
なんでも固形飼料のような乾燥した食べものを与えると、同時に水をよく飲み、普通に丸いふんをするのだとか。
どういうことかというと、ウォンバットは水分が足りていないときに限り、そのぶん食べものから水分を吸収するからだ。
水分を吸い上げられたふんというのは、硬くて形になりやすい。だから水がなかなか飲めない環境で暮らす野生のウォンバットは、総じてふんが四角いのだ。
でも…それだけだと四角くなるのはちょっと謎である。単に硬いふんが出るだけじゃないのか。
この消化器官の謎について、2018年にある新事実が発覚したのだ!
四角いふんの秘密は複雑な形状の消化器官にあった
2018年11月、アトランタで行われた「アメリカ物理学会流体学部門」の学会にて、ジョージア工科大学に務めるパトリシア・ヤン氏がウォンバットの消化器官に関する新たな研究結果を報告した。
ヤン氏はオーストラリアから、車に引かれて死んでしまった2匹のウォンバットの死体を入手。腸を解剖してみたところ、ふんの詰まっている箇所に異様な伸縮性があることに気付いたのだそう。
これを踏まえてヤン氏はブタの腸とウォンバットの腸にそれぞれバルーンを積め、膨らませる実験を行った。
すると、ブタの腸が均一に膨らんだのに比べ、ウォンバットの腸はかなりいびつな膨らみ方を見せたというのだ。
なんでもウォンバットの腸は体外にふんが排出される直前、最後の8%の箇所が、「柔らかい→硬い→柔らかい→硬い」という、交互に伸縮性が変わる形状をしていたという。
この箇所でウォンバットのふんは水分をギュッと吸い上げられ、その独特な形が形成されるわけだ。
硬い部分が伸びずに面を作り、柔らかい部分が伸びて角を作る。こうして四角いキューブ型のふんの出来上がりである。
すげえ! なんかお菓子工場の製造過程とかでありそうだぞ!
ただ…この研究にも未解明な部分はあって、なんでも腸の組織のうち、柔らかい部分は2ヵ所しかなかったのだとか。
キューブ型なら角は4つ必要だから、伸縮性のある柔らかい部分が4ヵ所必要なはずだ。いったい腸がどんな動きをしてキューブを形成するのか…まだまだ謎は多いのである。
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【追加雑学①】ウォンバットは育児袋で赤ちゃんを育てる
ウォンバットは、カンガルーのように、おなかの袋で赤ちゃんを育てる有袋類(ゆうたいるい)である。
胎盤がないため、体の中で赤ちゃんを育てることができない。そのため、未熟児の状態で出産し、おなかについている袋の中で赤ちゃんを育てるのだ。
この袋を育児嚢(いくじのう)という。そしてウォンバットはこの育児嚢の構造にしても、ちょっと変わっている。
袋の入り口は後ろ向き
前述したように、ウォンバットは普段はモグラのように穴を掘り、土の中で暮らす生き物だ。
しかし…普通にカンガルーのような袋がお腹についていては、穴を掘り進むときに袋の中に土が入ってしまわないのか? という疑問が浮かんでくる。
そこで、ウォンバットの育児嚢はカンガルーとは逆向きに付いているのだ。
つまり袋の入り口が後ろ足のほうにくる感じである。これなら赤ちゃんも土まみれにならずに済む!
ウォンバットはカンガルーと違って四足歩行なので、この向きに付いていても袋から落ちてしまうこともないし、これはナイスアイデアだ!
以下の動画で後ろ足に向かって開いた袋の構造もよくわかる。赤ちゃんが可愛すぎるぞ!
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【追加雑学②】日本でウォンバットを見るなら大阪か長野
とっても可愛いウォンバット…。そんな彼らを見られる動物園はもちろん日本にもあるぞ!
といっても、全国で飼われている場所は2ヵ所だけだ。
一ヵ所は大坂の「五月山動物園」。阪急池田駅から動物園直行のバスが出ているので、アクセスも良好である。
もう一ヵ所は長野の「茶臼山動物園」。こちらは徒歩だとJR篠ノ井駅から1時間近くかかってしまうので、タクシーか車かで来園するのがいい。
以下は五月山動物園のウォンバットを映した動画。遠い目をして何を考えているのか…実にシュールである。
雑学まとめ
今回は、四角いキューブ型のふんをするとびきりチャーミングな動物、ウォンバットの雑学を紹介した!
四角いふんは水の少ない環境でいかに水分を手に入れるかという、彼らの知恵の結晶だった。同時に縄張りの主張もできれば、まさに一石二鳥である!
うん、ウォンバットのふんは一度見てみたい。こんなに見てみたいなと思うふんを出すのも、ウォンバットぐらいなもんじゃないか。
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