登山のとき、〇合目という表記は山頂を目指すうえで大切な目安となるものだ。いったいこの合目とは、どんな基準で付けられているのか? 山の高さを10等分にして順番に付けているのだろうか?
ここでは、基準のわかりにくい合目についての雑学をご紹介しよう。
そして謎の多い富士山の7合目と8合目。なぜ7合目と8合目がたくさんあるのか。理由を聞けば、ツッコミたくなること間違いなしだ。
【自然雑学】山の「〇合目」は高さではなく登山の難易度だった
【雑学解説】「合目」とは登山者の目標や休息地などを目安に付けられた?
富士山が発祥といわれている「〇合目」という呼び方。麓(ふもと)付近の1合目から始まり、山頂が10合目となっている。
合目は、登山の難易度を表したものであり、長年の登山者の感覚によって付けられたらしい。
スタート地点から1合目まで、そして1合目から2合目などの麓の近くは、一般的に傾斜もゆるやかで歩きやすい道が続くため、合目間の距離が長く設定されていることが多い。
反対に山頂近くは、傾斜が急だったり足場が悪くなったりするため、合目と合目の距離が短くなる傾向がある。単純に山の高さを10等分したものではないのだ。
「合目」を富士山で考えてみると
たとえば富士山でもっとも人気のある吉田ルートの場合、登山口からスタートして1合目にたどりつくまで約2時間~2時間半ほどかかる。そしてその標高も1420mと、高さだけなら結構高い。しかし、この高さでも1合目だ。
これでも十分高いような気はするが、これからさらに標高が高くなると、登山道は険しくなり歩きにくくなるため、体力を消耗する。そのため、難易度を合目で細かく区切ることで登山者の目標を作りやすくしたんだとか。
たしかに、ただ漠然と登るだけで今いる場所が山のどのあたりかわからない、というのでは、山頂まで登りきれるか不安だ。
また、休息地になるポイントに合わせて合目を設定している山もある。山頂に近づくと足場は悪くなり疲労度も高くなるので、体を休められる場所というのは登山者にとってありがたいだろう。
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【追加雑学①】そもそもなぜ「合」という単位なのか?
有名な説としては3つほどあるが、確実にこれ! という資料はあまりないようだ。
- 「富士山の形と穀物を盛ったときの形が似ているので、穀物をはかる単位である合を使った」というもの。
- 「昔、夜の登山で使っていた行灯(あんどん)の油が1合燃え尽きる地点で登山道を区切ったから」というもの。1合とは油の単位で、升の1/10、約180mlだ。
- 「梵語の劫が合に変化した」というもの。「劫」は梵語で「非常に長い時間」のことを指す。これを人生と富士登山にたとえて、登山の苦しさと人生の苦難を劫の数で表し、それがいつしか合に変わっていったといわれる。
富士山はもともと修行の場でもあったらしいから、行灯で足元を照らしながら登り、夜通し歩いてご来光を拝む…なんてこともあったのではないだろうか。そうすると行灯の油が燃え尽きるまでという説がこの3つの中ではちょっと優位か?
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【追加雑学②】富士山には同じ「○合目」がたくさんある!
○合目というのは、登山者の目標地点を定めたり、休息地の目安にしたりするために作られたという話をしたが、富士山の7合目と8合目は、富士登山初心者にとってはかなり厄介だ。
7合目表記がややこしい!静岡県側の富士宮登山口
このルートには、「新7合目」と「元祖7合目」という、2つの7合目が存在する。こうなったきっかけは、静岡県がもっていた、山梨県に対する対抗意識。
最初にできたのが静岡県の富士山スカイライン。そしてその後にできた山梨県の富士スバルライン。
後からできた富士スバルラインの終点が5合目だったことで、もともと3.5合目にあった富士山スカイラインの終点を対抗意識から5合目に変えたというのだ。それにともなって他の合目も変更しなければならなくなり、もともと6合目だった地点が新7合目に、7合目だったところが元祖7合目になったとのこと。この無駄な対抗意識っていったい何?
8合目がいっぱい!山梨県側の吉田口
戦前は7.〇合目といった感じで細かく分かれていたのだが、戦後になって米軍兵や一般の人が多く登るようになった。たくさんあった7.〇といった合目をわかりやすくするために、すべて8合目表記にまとめたとのこと。
そして戦前の8合目は、本8合目となっている。
その結果、標高3020mから3400mまでの山小屋がすべて8合目となり、いちばん下の8合目からいちばん上の8合目まで時間にして約1時間半という、謎の8合目地帯ができあがったというわけだ。
8合目地帯だけで1時間半って。本来の合目の意味とズレてないか…?
ここでちょっと動画を紹介。芸人さんが富士山1合目から山頂を目指す動画なのだが、なんと5合目もたくさんあることが発覚!
8合目ほど長くもなく、5合目は時間にして30分くらいのようだが、いくつかあることを知らないと不安になるよな…。しかも孤独…。
富士山は登山口によって5合目の高さが違う
富士山には登山口が4つある。そのため、それぞれのルートに合目が存在しているのだが、同じ合目でもその標高はとにかくバラバラだ。
車で行ける5合目地点の標高はこうなっている。
吉田口2305m・須走口1970m・富士宮口2400m・御殿場口1440m。いちばん高低差のあるものだと、1000m近く標高が違うのだ。
雑学まとめ
山の合目についての雑学をご紹介したのだが、富士山の7合目と8合目には驚いた。特に7合目。対抗意識ってなんじゃそりゃ。
世界遺産にも登録されて、富士山に登ってみようという人もいるかもしれないが、7合目と8合目にめげることなく頑張って山頂を目指してほしい。