目の不自由な人を誘導するように寄り添って歩く盲導犬。パートナーは、盲導犬の胴体につけたハンドルのような物を持って歩く。パートナーの目に代わり、障害物を避けたり、段差や横断歩道では止まって知らせるのだ。
盲導犬がパートナーを誘導するためには、人間にとって危険な場所を理解する必要がある。障害物や段差は犬にも理解できることだが、一番不思議なのは信号だ。犬は色盲だと聞いたことがあるが、なぜ横断歩道の赤信号では止まり、青信号では渡るのだろう…。
今回は、盲導犬にまつわる雑学を紹介するぞ!
【動物雑学】盲導犬には信号の色が見えているってホント?
【雑学解説】パートナーと盲導犬、お互いの協力で信号を判別し道路を渡るのだ!
人間の目で色を判別しているのは、目の網膜に色を感じる錐状体(すいじょうたい)という細胞があるからだ。しかし、犬にはこの錐状体がほとんどないため、色を判別することがほぼ出来ていない。
「ほぼ」というには理由があるのだが…。最近の研究で、犬の色の世界はまったくのモノトーンではないことが分かったからだ。
犬の色の世界
- 人間が見ている黄色・緑・オレンジ…くすんだような黄色
- 人間が見ている青・紫…青っぽいような色
- 人間が見ている赤…グレー
犬の色の世界に「赤」はない。なので、信号の色をはっきりと判別することは出来ないのだ。
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盲導犬が横断歩道の赤信号で止まって待つのはなぜ!?
では、盲導犬が横断歩道の赤信号できちんと止まって待つのはなぜなのだろう。
実は、赤信号だと認識しているのは、盲導犬ではなくパートナーの方なのだ。目が不自由な人が赤信号をどうやって認識するのか…。
まず、盲導犬は信号のある交差点で一度立ち止まる。これは、歩道から横断歩道へ変わるわずかな段差を認識して立ち止まるのだ。今歩いてきた道路とは違う、ここは分岐点ですよとパートナーに教える行動だ。
そしてパートナーは、回りの人の雰囲気や車が止まる音で青信号を判断する。そして、盲導犬に合図するのだ。「行こう!」と。
盲導犬に信号の色は認識出来ないが段差を知らせ、パートナーは道路の音や感じる雰囲気から、盲導犬に安全を伝えているのだ。
【追加雑学①】盲導犬になるための3つの訓練
盲導犬は約1年かけて訓練を受け、テストに合格し認定を受けた優秀な犬だ。数多くの訓練の中でも代表的なものを紹介しよう。
基本訓練
- 服従訓練…来い・座れ・伏せ・待てなど、人間の指示に従う訓練
誘導訓練
- 歩行訓練…階段の昇り降り・人ごみの中を歩く・交差点で止まる・周囲に気をとられず歩くなど、実際の町の中で安全に歩くための訓練
- 危険回避訓練…パートナーの体の大きさを認識して誘導する訓練。向かう先でパートナーの頭上に危険な物を発見した場合、避けるように誘導する。
共同訓練
- 共同生活をする訓練…パートナーと1ヶ月間一緒に暮らしながら、実際の歩行や交通機関に乗るなど、日常の生活に近い状況での訓練。
パートナーにとっても、盲導犬の世話に慣れるために大事な訓練である。
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【追加雑学②】盲導犬のプロ意識がスゴい
盲導犬は、ハーネスという胴輪をつけている。パートナーと外出するときはこの胴輪をつけるのだが…。これがいわば盲導犬にとって仕事モードに切り替わるスイッチのように、ONとOFFでは様子が豹変するというのだ。
ハーネスをつけて外出してから家へ無事に帰るまでは、凛々しく、そして頼もしくパートナーを誘導するまさにプロの顔。しかし家に帰ってハーネスを外せば、普通にペットとして飼われている犬と同じように、甘えたりはしゃいだりするという。
サラリーマンのお父さんが、朝ネクタイを締めるような感覚か…。ネクタイをゆるめて、帰りに一杯やってくる誰かさんに聞かせたい…。
【追加雑学③】盲導犬がパートナーに逆らうための訓練がある!?
パートナーの指示に従うように訓練されている盲導犬だが、実は逆らうための訓練「利口な不服従の訓練」というものがあるのだ。もしもパートナーが行こうとしても、その先にパートナーにとって危険をおよぼすものがあると判断した場合、盲導犬は指示に逆らい動かない…といった訓練である。
たとえば、赤信号でパートナーが行こうとしても、盲導犬から見れば車が行き交う明らかに危険な状況だ。そういうとき、盲導犬は指示に逆らいその場を動かないのである。
盲導犬の紹介動画を発見!
生まれたところからはじまり、訓練を受けて、盲導犬として活躍し、そしてリタイアしたあとも紹介している。この動画中に不服従訓練の様子も紹介しているぞ!
けなげな盲導犬の姿に、見ているだけで胸が熱くなる。リタイアしたあとの落ち着いた表情を見ると、ゆっくり休んで欲しい…と、心底思う。
雑学まとめ
今回は、盲導犬についての雑学を紹介した。もう…お利口すぎて感動する。そして、パートナーと盲導犬の間には、私の想像していたものとははるかに超えた信頼関係があるのだろうと思うと、あたたかい気持ちになった。
もしも町で盲導犬を連れた方を見かけたら、そっと見守ろう。そして、もし信号待ちで一緒になり、赤か青か判断に迷っているようだったら、信号の色をそっと伝えてあげたい。