トリック・オア・トリート! この合い言葉でお馴染み、秋のイベント「ハロウィン」。今では大人もコスプレしながら街を歩くようになり、一種の社会現象にもなっている祭りである。
ご存知だと思うが、元々ハロウィンは海外からきた祭りである。おばけの仮装をした子供たちが家を訪ねてきたときに「トリックオアトリート!」と言ってお菓子をもらっている光景が思い浮かぶはずだ。
しかし、なぜハロウィンでお菓子を配るのか? 理由は古い時代のヨーロッパに伝わる、ある習慣が元になっているのだ。
少しホラーな話もあるが、ハロウィン雑学の一つとして紹介しよう!
【世界雑学】ハロウィンにお菓子を配るのはなぜ?
ちなみに『トリック・オア・トリート!』って合言葉も、ソウリングに由来があるっていわれているわ。
【雑学解説】ハロウィンの合言葉「トリック・オア・トリート」
まず、前置きとして「ソウリング」の話をしよう。ソウリングはヨーロッパの古い習慣で、人々が家を訪ね歩きソウルケーキを住人からもらう。そしてソウルケーキをもらった人が死者に対し、祈りを捧げていたというものだ。
やがてこの習慣が、「外をさまよう死者が悪さをしないようお菓子を渡すことで、元の世界に帰ってもらう」という意味合いに変わっていった。
これがのちの合い言葉である「トリック・オア・トリート」の由来になったと伝えられている。英語では「Trick or Treat」と書き、直訳すると「いたずらか、お菓子か」となる。
こうして、ソウリングの習慣とこの合い言葉が元になり、お菓子を配る行事へと発展していくことになったのだ。
ちなみに「ソウルケーキ」ってどんなもの?
上記のソウルケーキだが「ケーキ」と名がついていながら実はクッキーそのものであり、干しブドウを十字架型に散りばめたものが一般的。
他にはバターを使用したり、シナモンなどのスパイス類を使ったり、地域によってさまざまなアレンジが加えられたソウルケーキがあるそうだ。
死者へのお供えとしての見方が強いが、意外に女子受けしそうなスイーツにも思える。
スポンサーリンク
【追加雑学①】ハロウィンの由来
ハロウィン発祥の地はアイルランドおよびスコットランドで、古代ケルトの収穫祭「サウィン祭」が元とされる。
このサウィン祭は、毎年10月31日に新年を迎える前夜祭(ケルト人は新年を11月1日としていた。日本でいう大みそかにあたる)と夏の収穫を祝う祭りを兼ねて行われていた。
おすすめ記事
-
ハロウィンの起源は古代ケルト!紀元前からのお祭りだった
続きを見る
なお、この祭りは収穫を祝うことと同時に、悪霊払いの魔除けのための側面もあるのだそうだ。サウィン祭ではかがり火に作物などをくべて、供物を自然の神にささげる祭事を行う。これには作物だけではなく動物も供物として使っていた。
「供物」と聞くといけにえをイメージしてしまい、少し怖い気もする。このサウィン祭が元となり、前述のソウリングなどの習慣とも関わったことで、現在のハロウィンへと発展していくことになったのだ。
仮装をする理由
ハロウィンといえばもちろん仮装だ。これには前述のサウィン祭がまた少し関わってくる。
サウィン祭が行われる10月31日だが、あの世の門が開いて死者の霊が帰ってくる日ともいわれている。これは日本でいうお盆に似ているものと思ってもらえればいい。
しかし、その際に魔女や悪霊たちもやって来て、人々を連れ去ったり悪さをするとされた。そこで、当時の人々は自分たちも同じ死者の格好をすれば目くらましになり、魔女や悪霊たちも悪さが出来なくなると考えたのだ。
そこで人々は、死者をモチーフにした仮面を付け、かがり火を囲みサウィン祭を行った。これがハロウィンで仮装をするきっかけになったと伝えられている。
やがてハロウィンは一般的なイベントに
16世紀頃には、スコットランドで現在に近い仮装ハロウィンが広く見られたそうだ。そして年月が進み、ヨーロッパの移民がアメリカに渡った際にハロウィン文化も一緒に伝わった。
アメリカでは当初、移民の一部だけでハロウィンが行われていたそうだが、徐々に注目されてほかの人々も参加するようになり、メジャーな祭りとしてアメリカ全土に広まることになる。
19世紀半ばには、子供たちの楽しいイベントとして定着した。そしてその文化が日本へ渡ってきたのだ。
今の日本では仮装の文化がさらに進化し、ハロウィンの時期に好きなコスプレをして街を歩くのがもはや恒例行事だが、もともとは魔女や悪霊たちから身を守るためのヨーロッパの習慣が元になっていたのである。
おすすめ記事
-
コスプレ好き?日本では江戸時代からハロウィンが行われていた?【節分お化け】
続きを見る
スポンサーリンク
【追加雑学②】カボチャのおばけ「ジャック・オー・ランタン」とは
ところでハロウィンのイメージの1つに、いかつい顔をしたカボチャのおばけも思いつかないだろうか?
ハロウィン時期になると街のいたるところで、このカボチャのおばけが描かれたイベントポップや飾り付けなどが見られるはず。これはカボチャをくりぬいたランプで、ハロウィンでは魔除けの意味がある。
さらに、このカボチャのランプにまつわるヨーロッパの物語もあり、その話には「ジャック・オー・ランタン」という名が関わっている。ちなみにランタンとはランプのことを表し、ジャックはこの物語の人物のことを指しているのだ。
哀れなジャック・オー・ランタンの物語
昔、ジャックという人をだますのが得意な男がいた。ジャックはずる賢く、人々にウソをついて困らせてばかりだった。
とうとうそれを見かねた悪魔が、地獄からジャックの魂を奪いにやって来た。あわてたジャックは悪魔にこう持ちかけた。
「魂を取られるのは仕方ない、だが最後にリンゴを食べさせてくれ」
近くにあるリンゴの木を指さして、ジャックは話を続ける。
「あのリンゴの木は自分じゃ高くて登れそうにないから、かわりにリンゴを取ってきてくれないか?」
悪魔はどうせ最後だからと、リンゴを取ってきてやろうとして木に登った。ジャックはそのスキに、悪魔が苦手とする十字架を密かに用意しておいた。そしてリンゴを取って戻ってきた悪魔にその十字架を突き出し、こう言った。
「魂を取らないと約束するなら、これを引っ込めてやる」
悪魔は降参し、ジャックの魂を永遠に取らないという契約をして地獄へと帰って行った。
数十年後、ジャックは寿命で亡くなり、死者がたどり着く門の前にいた。
ここで天国か地獄か、死者の行き先が決められるわけだが、ジャックは生前に人をだまして悪い行いばかりしていたため、天国へ行くことが出来なかった。
ならば地獄行きかと思いきや、生前だました悪魔がジャックの前に姿をあらわし、こう言った。
「お前からは魂を取らないという契約をかわした、よって地獄にも連れてはいけない」
こうしてジャックは死者でありながらどうすることもできず、死者の門と現世をつなぐ真っ暗な道をさまよい続けることになってしまったのだ。
しかし、悪魔はそんなジャックを見て哀れに思ったのか、暗闇の道を照らすために地獄の炎から種火を取り出して彼に与えてやった。
ジャックは悪魔からもらった火を絶やさぬよう、たまたま道に落ちていた野菜のカブをくり抜いて中に種火を入れ、ランプにした。
やがて彼は、ジャック・オー・ランタン(ランタンを持ったジャック)と呼ばれるようになり、彼の持つランプは魔除けとして、ハロウィンの時に広く用いられるようになった。
ジャックはランプで暗闇を照らしながら、今もあの世とこの世をさまよっているといわれている。
以上がジャック・オー・ランタンにまつわる物語だ。
物語中はカブなのに今はカボチャ?
この物語にはいろいろなパターンがあるが、ジャックと悪魔の関係など、大筋はこんな感じである。では、物語と現実を比べたときに1つだけ違いがあることに気付いただろうか。そう、話の中でジャックの持つランプはカブだったが、現実ではカボチャなのだ。
その理由はとてもシンプルなもので、ヨーロッパからアメリカへハロウィンが伝わった際、カボチャの方がたくさん採れるからという農業的な事情があったため、かぼちゃが使われたのだ。
さらに、カブよりもカボチャの方が飾りを作るときに加工しやすいといった背景もあった。しかし、あのカボチャの飾りに関する物語が、元はカブだったというのは驚きである。
現在でもヨーロッパのいくつかの地域では、ハロウィンの時にカブを加工してランプにしているそうだ。
雑学まとめ
今回は、ハロウィンに関する雑学をご紹介してきた。ヨーロッパ・アメリカで、さまざまな文化を吸収したあとに日本へ渡ったハロウィンの今をみると、もはや収穫祭の原型がなくなってしまったようにも感じる。
しかし、ハロウィン自体は今も色んな国で根強く行われているし、地域ごとの違いが多少あっても祭りとして愛されているのだ。これからもハロウィンが楽しい祭りであってほしいことに変わりはない。
最後に、毎年ニュースでもいわれていることだが、ハロウィンに参加する人は最低限のモラルを持って楽しんでいただきたい。
トリック・オア・トリート!