陸上生物でもっとも大きいのはアフリカゾウ。体重にして6tはくだらない超巨体である。このほかにも、大きな身体をもつ動物を見てみると、そのラインナップには草食動物がズラリと並ぶ。
「草食動物って草しか食べないんでしょ? そんなにヘルシーな食事で、なんでそんなに大きくなるの?」という疑問をもったことがある人は少なくないはずだ。
しかし…実のところ、草食動物は草しか食べないから大きくなっているのである。これは一見矛盾しているように思えるが、実は全然矛盾していない。その生態を知れば、彼らが巨大なことにもきっと納得がいくはずだ。
今回はそんな草食動物の雑学を紹介しよう!
【動物雑学】草食動物の体が大きくなる理由とは?
【雑学解説】草食動物には大きな体が必要
陸上生物で身体の大きいものをランキングすると、上位を占めるのはほとんど草食動物だ。
- 1位…アフリカゾウ(体長6~7.5m・体重6~7.5t)
- 2位…ミナミゾウアザラシ(体長6~7m・体重4~5t)
- 3位…シロサイ(体長3.6~5m・体重2~3.6t)
- 4位…カバ(体長3.5~4m・体重1.3~1.5t)
- 5位…キリン(体長4.7~5.3m・体重800~1.2t)
このなかで肉食動物はミナミゾウアザラシだけ。残りの4体はすべて草食動物である。
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どうして草食動物に、こんなに大きな種類が多いかというと、彼らは肉食動物に比べ、胃や腸などの消化器官がとっても長いからだ。
草や葉などの植物は肉に比べると消化吸収しにくく、特殊な消化器官をもっていないと栄養にすることができない。植物は襲われても逃げられない。誰彼構わず食べられては困るので、そのように進化しているのだ。
そんな植物を長い時間をかけて消化するため、草食動物たちは非常に長い消化器官をもっている。これらを体内に収めるために大きな身体をしているのだ。
たとえば、ヤギや牛なんかは人間の胃にあたる消化器官をなんと4つももっている!
それだけではなく、彼らには一度食べた草を口のなかに吐き出して、何度も食べ直すことで消化を促す「反芻(はんすう)」という習性もある。そのぐらいしないと、植物をメインのエサにしていくことはできないのだ。
以下はヤギの反芻を捉えた映像である。草を口にしていないのに、いきなり咀嚼を始めたことがわかる。
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【追加雑学①】草食動物は草からタンパク質を摂れる!
さて…草食動物に大きな身体が必要な理由はわかった。そう、必要な理由はわかったのだが…問題は「なんでタンパク質を食べていないのに、でかい身体を作れるんだ?」ということである。
草食動物なら、ヘルシーな草だけでも生きていくことはできそうだ。でも筋トレにはタンパク質が欠かせないし…いくら草から栄養が摂れても、タンパク質がなければ身体を大きくすることなんてできないぞ?
うん、普通はそうだ。しかし実のところ、草食動物は低タンパクな草からも、特殊な消化器官を使って十分なたんぱく質を摂取することができるのだ。
タンパク質を合成する方法とは?
でも…植物はもともと低タンパクなんでしょ? 草食動物はないものを増やせる魔法の消化器官をもってるってこと? などと、さらに疑問が沸いてくるが…。
この謎の鍵を握っているのが、バクテリアである。
草食動物はその長~い消化器官のなかで、大量のバクテリアを飼っている。バクテリアは植物を分解し、タンパク質を合成する力をもっているため、草食動物はそれを利用しているのだ。
自分が食べた草や葉っぱを体内でバクテリアに食べてもらい、最後はバクテリアごと消化してしまえば、まったく問題なし!
人間が家畜を育てて食べるように、草食動物たちもバクテリアを育てて食べているわけだ。
ちなみに肉や穀類など、元から消化しやすいものを草食動物が多く食べた場合、バクテリアの分解が行き過ぎて、排出されたガスでお腹がパンパンに膨れ上がってしまう。
最悪の場合、これで死んでしまうこともあるというぞ。
まあ自然界で暮らす草食動物たちは、肉を食いちぎるような歯をもっていないので、間違えて食べてしまうことは少ないだろう。草食動物は草を栄養にできる反面、肉はあんまり食べられなくなってしまったわけだな。
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【追加雑学②】小さい草食動物はどうやって栄養を摂る?【動画】
ゾウやカバのように巨大な草食動物もいれば、ウサギのような小さな草食動物もいる。彼らは草を食べているのに、長い消化器官は必要なかったのか?
実のところウサギなどは長い消化器官をもたない代わりに、植物から十分な栄養を摂るためのとある習性をもっている。
飼っている人などは知っているかもしれない。ウサギはなんと、自分のフンを食べるのだ。
「自分の出したものを食べれば、一生食べものに困らないよな」などと、あなたも考えたことがあるかもしれないが、残念ながら(?)これはそういう話ではない。
ウサギは長い消化器官をもたない代わりに、一度フンとして体外に排出したものを食べて、二度消化するのだ。
ちなみに馬もバクテリアが合成したタンパク質を吸収しにくい消化器官をもっているが、彼らは穀類や豆類を食べてそれを補っている。どうして可愛らしいウサギにその方法を譲ってやらなかった…。
以下の動画にウサギがフンを食べる様子が映されている。まさか肛門からダイレクトにいってしまうとは…。
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【追加雑学③】タンパク質を食べる肉食動物が大きくならない理由
「タンパク質が大きな身体を形成しているなら、肉ばかり食べている肉食動物はなんで大きくならないの?」と思った人もいるかもしれない。
これは単純に獲物を捕まえる能力が落ちるからだ。
身体が大きくなればそのぶん体重も増えて、速く走るのにより筋肉が必要になる。しかし動物は体が大きくなると、筋肉よりも体重のほうが多く増えてしまう性質があるのだ。
これを「2乗3乗の法則」といい、たとえば、ある生物を全く同じ体形のまま2倍の長さにすると、体重は2の3乗で8倍に、そして筋力は2の2乗で4倍になる。
これは体重が大きさにそのまま比例するのに対し、筋力は筋肉の太さに依存するからだ。要は筋力は太くなったぶんは増えるが、長くなったぶんには関係ないのである。
体が大きくなればなるほど、体重に対する筋力は下がってしまう。となれば、巨大な動物の動きが鈍くなることは避けられない。
力で圧倒するよりは、素早く追いかける能力を問われる肉食動物としては、商売あがったりなわけだ。
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【追加雑学④】草食動物ならではの特徴
肉を食べる必要がない草食動物は、消化器官のほかに、身体のいたるところが草食用に進化している。
ここでは、そんな彼らの身体の部位ごとの特徴をみていこう。
草食動物の特徴①歯
まず歯に関しては、平らな形状をしている者が多く、彼らはすり鉢のように草をすりつぶして食べる。キリンや牛、ラクダなどがアゴを左右にズラして草を食べているところは、見たことがある人も多いだろう。
ウサギのように尖った前歯をもつ種類もいるが、これも決して攻撃用ではない。捕まったときの抵抗に使うことはあるかもしれないが、走り回る獲物をガッチリ捕まえようと思うと、肉食動物のような鋭い犬歯が必要である。
草食動物の特徴②足【動画】
馬やヒツジのように、足元がヒヅメの形状になっているのも草食動物ならではの特徴だ。ヒヅメは速く走るのに適した形状で、キリンなんかはあの図体で時速50kmもの速度で走れる。ちょっと怖くないかそれ…。
速く走れる形状なら、なんで肉食動物にはヒヅメがないんだ? と思うかもしれないが、それは足がヒヅメでは、走ることしかできないからだ。
肉食動物は走ると同時に、前足を使って獲物を攻撃しなければならない。噛みつきだけで仕留めるなんて、それこそ至難の業だ。想像してみても…なんかかっこ悪い。
一方、草食動物は逃げるだけでいいのだから、走ることだけに特化したヒヅメをもっているのである。
またウサギやカンガルーように強靭な後ろ足をもつ者もいるが、これも天敵から逃げるためだけのものだ。彼らのバネのように弾むジャンプ力は、獲物に狙いを定める目的としてはとっても使いにくいのである。
以下の動画にキリンが走る様子が捉えられている。どんなだよ…と思っていたら意外と爽やかだ。
ちなみにキリンの首が長いのも、わざわざかがんで草を食べていたら逃げ遅れてしまうからである。
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草食動物の特徴③角【動画】
草食動物のなかには、天敵に対抗するために角をもっている者も多い。サイやゾウなんかはどちらかといえば動きが鈍いため、逃げ足の代わりに武器を授かっているといえるだろう。
しかしこれらはあくまで撃退用で、獲物を捕まえるのにはやはり適していない。
鹿のように、メスを取り合うケンカのために角を生やしている者なんかもいる。いずれも仕留めるというよりは、追い払うのが目的といった感じだ。そう考えると肉食動物で角のある者がいないことにも納得がいく。
以下の動画は野生の鹿のケンカを捉えたものだ。意外とアッサリ決着が着くんだな。
草食動物の特徴④視野
草食動物は目が顔の側面についているのも特徴だ。これは天敵が近づいたときにいち早く察知するためのもので、その視野角は360度にもなる。つまり全方位見れるということだ。
その代わりそこまで鮮明に見えるわけではないようだが、彼らにとってはそれよりも周囲をまんべんなく見渡せることが重要なのだ。
その代わり、顔の正面に至近距離で立たれると見えないというが、そんな場所にいきなり現れる忍者のような天敵は自然界にはいない。
こう挙げてみると、草食動物の身体は本当に「草を食べるため・天敵から逃げるため」だけに特化した作りになっているのだ。当たり前のことに思えるが、改めて考えてみると動物の進化は奥が深い…。
草食動物の雑学まとめ
今回は草食動物の大きさの秘密や、その生態に関する雑学を紹介した。
草食動物はとっても長い消化器官のなかに、大量のバクテリアを飼っており、低タンパクな草からでも十分にタンパク質を摂ることができる。
狩りをする必要もないし、我々人間のように栄養バランスに気を遣う必要もない。ひたすら草だけ食ってればいいのだ! 便利! …と思ったけど、やっぱりお肉はおいしいし、あんまりうらやましくはないか。
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