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福沢諭吉vs新井白石!"ヴ"という言葉を作ったのはどっちだ!?

雑学カンパニー編集部

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「ヴ」という言葉を作ったのは福沢諭吉?に関する雑学

先日、知り合いの家に子犬が生まれた。名前は「ラヴ」ちゃん。「ああ、ラブね」というと「違う、ラヴだ!」と怒られた。どこが違うんだと少々腹が立ったが、そういえばなぜ「ヴ」という文字はあるのだろうか。

日本語には漢字やひらがなのほかに、ちょっと謎の多い「カタカナ」という文字が存在している。これは外来語を表記するときに使われる文字だが、実は「ヴ」は最初から存在していたわけではない。作った人物がいるのだ。それは、学問をススメてくれる2代目1万円札の福沢諭吉氏だ!

なぜ日本の学問代表のような福沢諭吉が、「ヴ」なんていうカッコよくて縦ノリ感満載の言葉を作ったのだろうか。そこで今回は、「ヴ」という言葉についての雑学を紹介していくぞ!

【歴史雑学】「ヴ」という言葉を作ったのは福沢諭吉か新井白石か

秀吉くん
へ〜!「エヴァ」の「ヴ」は福沢先生が作ったんすね!
信長さん
「作った」っていうと微妙なんだがな…

【雑学解説】福沢諭吉は英語の発音を表記するために「ヴ」を作った

福沢諭吉は英語の発音を表記するために「ヴ」を作ったという雑学

想像してみてほしい。未知の言語を話す人間に初めて遭遇したとき、その言語をどうやって理解しようとするだろうか? 日本人にとって西洋人の話す言葉は、東洋のそれと全く違い、まさにチンプンカンプンだったに違いないのだ。それに立ち向かったのが「学問のススメ」で有名な福沢諭吉である。

初めて出会った海外の発音を50音で表すことに限界を感じた福沢諭吉は、今まで存在していなかった新しい文字を作ったのだ。現在使われているのは「ヴ」だけになってしまったが、「ワ゛」「ヰ゛」「ヱ゛」「ヲ゛」という仲間も一緒に作っていたようだ。

「ヴ」という文字は、日本語には存在しない「有声唇歯摩擦音(ゆうせいしんしまさつおん)」を表現するために用いられた。読んで字のごとく「V」を発音するときに、上の前歯で下唇を噛んで「ヴ!」とやる、あれだ。

しかし、せっかく福沢諭吉が「ヴ」の表記を作ったにも関わらず、1954年~1991年まではなるべく「バビブベボ」で表記するようにという御触書が出ていたというからガッカリだ。試行錯誤して一生懸命作ってくれた表記をないがしろにするなんてねえ!

福沢諭吉の初めての出版物で「ヴ」が登場

初めて「ヴ」という文字が登場したのは、福沢諭吉が江戸にきて初めて出版した「増訂華英通語(かえいつうご)」という本である。これは福沢諭吉が初めてアメリカに渡ったとき、「華英通語」という、中国語を英語に通訳するための単語集を買い求め、この英語の発音にカタカナをつけて出版したものだ。

増訂華英通語では、Windを「ウヰヌド」と表記したり、Planetを「プラヌネト」と表記したりと、福沢諭吉がネイティブの発音を表現しようと必死になっていた姿が垣間見える。このとおり発音してみると、なるほど意外とそれっぽい発音になるのがすごいぞ!

福沢諭吉は「華英通語」の説明として、「福澤全集緒言」の中で「安政5年に、英語のvの字の読み仮名に『ヴ』『ワ゛』を使って記したことは自分の思い付きである」と記している。はっきりと「ヴ」を作ったのは俺だ! とは言っていないものの、表記の新案を思いついたことを記してあるのだから、このトリビアは正しい。

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【追加雑学①】福沢諭吉より先に「ヴ」と表記した人物がいる

福沢諭吉より先に「ヴ」と表記した新井白石

新井白石

「ヴ」という表記を発明したのは福沢諭吉である。福沢さんが自らそう本に記してあるのだから、間違いない事実である。しかし実は、福沢諭吉よりも前に「ヴ」を使った人が存在する。トリビアのトリビアだ。

きっと無名の人物がひっそりと使っていたに違いない、とお思いだろうか? ところが、その人物は江戸幕府6代将軍に代わって実権を握り、「正徳(しょうとく)の治」という政治改革を行った近世屈指の大学者! 政治家で儒学者の新井白石なのだ。なぜ、新井白石を差し置いて福沢諭吉が発案者とされているのか?

実は、新井白石が「ヴ」を使った「東雅(とうが)」という本は、中国語の発音に「ヴ」を当てたものだった。だから「v」の発音に「ヴ」を当てたのは福沢諭吉! という解釈らしい。微妙に納得いかないが、現代に広めるきっかけを作ったのは福沢さんなのだから、良しとしよう。

秀吉くん
殿が言ってたのはこれっすか…
信長さん
福沢諭吉が、新井白石の「ヴ」を知ってたかどうかが気になるな…

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【追加雑学②】「バビブベボ」vs「ヴァヴィヴヴェヴォ」どちらが正しいのか?

外来語の発音を正しく伝えるために作られた「ヴ」だが、例えば「ヴァイオリン」と「バイオリン」どちらが正しいのだろうか? 「ヴィオラ」は「ビオラ」にすると、なんだかボディソープみたいじゃないか? 実は文化庁が1991年、外来語の表記について調査を行って発表した「外来語の表記」というものがある。

一般的な仮名文字「バビブベボ」は「外来語や外国の地名・人名を書き表すのに一般的に用いる仮名とする」とある。一般的にね。ふんふん、これはわかった。問題の「ヴァヴィヴヴェヴォ」だが…「外来語や外国の地名・人名を原音や原つづりになるべく近く書き表そうとする場合に用いる仮名とする」

ん? どうやら、どちらが正しいとか間違っているという決定はなさそうだ。結論として、どっちでもいいのだ! 外来語をなるべく再現したいときにどうぞ「ヴ」を使ってください、ということらしい。結局、福沢諭吉が「ヴ」を作った目的を再確認しただけのような気がする。

「バンパイヤ」じゃ迫力がないし、「ビンテージ」や「ルイ・ビトン」じゃ偽物っぽい。「ビーナス」より「ヴィーナス」の方が女神感が増すし、「ボルテージ」より「ヴォルテージ」をアゲたい! 「ベルサイユのばら」は「ヴェルサイユのばら」にした方が良くないか?

かといって「V」の文字を全て「ヴ」表記にすると、「ヴァレーボール」や「ヴィデオ」になっちゃうな…どうも見慣れない。つまるところ、どっちを使っても良いのだから、それっぽい方を選択するのがヴェストなのか! おっと、これは「b」だから「ベスト」だな…。

秀吉くん
うまいこと言ったっすねえ!
世界地図から「ヴ」が消えるらしい

外来語の表記として使われてきた「ヴ」だが、外国名の表記に変化の波がやってきた。2019年の国会に提出された改正案によると、「セントクリストファーネーヴィス」と「カーボヴェルデ」という2つの国名が「セントクリストファーネービス」「カーボベルデ」に表記変更する。

これで日本で販売される世界地図から「ヴ」表記が全て消滅するのだという。過去には「ヴ」表記をしていた国名が他にもあり、「ベトナム」は「ヴェトナム」、「ボリビア」は「ボリヴィア」だったというから驚いた。ちなみに「アルゼンチン」はかつて「アルゼンティン」だった! なんかカッコイイ。どうして直しちゃったのさ。

雑学まとめ

さて、今回の「ヴ」の雑学、いかがだっただろうか。現代でさえ日本人の英語教育において、「聞きとる」ことや「話す」ことは、読み書きと比較して劣っている部分が否めない。ネイティブの発音を「バビブベボ」など、従来の50音のみを使って表記することで、実用的な英語教育の発展が邪魔されたと言っても過言ではない。

「増訂華英通語」に新しい仮名をふることで、福沢諭吉は正しい英語の発音を伝えたかったのだ。もっと「ヴァヴィヴヴェヴォ」を大事にしてはいかがだろうか? 我々は日本人なのだから和製英語があればいい、という古い考え方は非常に残念である。

せっかく福沢諭吉が作った「ヴ」という表記を発音するときは、ぜひ上歯で下唇を噛んでカッコよく発音していただきたい。

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