興味はあるけど、チケット代は高いし、よくわからないし、着ていく上等なお召し物もないし…と、なにかと心構えが大層なイメージの歌舞伎。
しかし最近では、人気アニメ「ワンピース」や「風の谷のナウシカ」を歌舞伎で演ったり、現代語で歌舞伎役者が演じたりと、かなりハードルが下がってきているのはたしか。歌舞伎役者をテレビで見ることもしょっちゅうで、「あぁ、あの人ね」と、歌舞伎を観に行った人でなくても、彼は歌舞伎役者なんだなとわかる。
しかし、知っている歌舞伎役者を挙げてみると男性ばかり。今回は、そういえば歌舞伎役者って男しかいないの? という疑問を解決すべく、ドキッ! 男だらけの歌舞伎の世界にまつわる雑学を紹介しよう!
【歴史雑学】どうして歌舞伎役者は男性しかいないのか?
【雑学解説】相次ぐ禁止令で歌舞伎役者は男だけになった
舞台上には男性のみ。女性の役も「女形」と呼ばれる男性の役者が演じる。歌舞伎は原則として男性のみの舞台だが、唯一の例外があるとすれば、だっこされている状態の幼女役や花魁の付き人である禿(かむろ)など、小さな子供役を演じる女の子である。
歌舞伎役者のお子様(お嬢様)や、劇団に所属している子役の女の子が演じることもあり、「何歳まで」とははっきり決まっていないそうだが、歌舞伎の子役は抑揚のあまりない独特のトーンでセリフを言うので、男の子であっても女の子であっても特に違和感がないうちは女の子も出演する。
では、そもそもどうして男だけになったのかというと…徳川の時代にまで遡る。
パリピすぎる傾奇者の存在
歌舞伎の始まりは、今から400年以上前。安土桃山時代から江戸時代の移り変わりの頃、街には豊臣家の残党や、仕事がないためあてもなくさまよう者が大勢いたという。
そんな混沌とした世に現れたのが、二度見、三度見くらいしてしまう超ド派手な衣装を身に纏い、個性的な髪型で街をオラオラと闊歩し、喧嘩や盗みをはたらき、誰にも縛られたくないと盗んだバイクで走り出していたかどうかはわからないが、世間に背を向け身勝手に生きる男たち、「傾奇者(かぶきもの)」である。
歌舞伎は出雲阿国が始めたのだが…
そんな時代に、とある一座のアイドルが京都で旋風を巻き起こす。それがIZM48のセンター。かの有名な出雲大社の巫女「出雲阿国(いづものおくに)」である。
当時カウンターカルチャーとして偉業、いや、異業を残している「傾奇者」の存在に、この出雲阿国は着眼した。「かぶきもの」に扮し、それらを模して「かぶき踊」を披露する。若い女性が男性、しかも傾奇者を演じるこの演目は、瞬く間に京で大人気となり「女歌舞伎」と呼ばれるようになった。
そして一座が江戸や各地をツアー巡業していくうちに、もともと持っているセクシーさも相まって遊女屋で取り入れられた。当時各地の城下町に遊里(=遊郭)がつくられていたため、ますます「かぶき踊」は広まっていく。
しかし、その内容はどんどんセクシーさを増してゆき、遊女歌舞伎の猥雑な掛け合いが、さすがに風俗乱れ過ぎじゃね? ってことになり、女がそんな目立っちゃいけねぇという男尊女卑の観点からも、寛永6年(1629年)、江戸幕府は女性が舞台に立つことを禁止した。
その後、女がダメならと美少年が演じることもあった。しかし美少年もあたりまえに成人男性の性的な対象であったため、同様に禁止されてしまう。それでもおそらく歌舞伎の持つ本来の魅力からか、それは衰退することなく、今の形である「成人男性による歌舞伎」として今に至るのである。
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【追加雑学】屋号を叫ぶかけ声「大向こう」
歌舞伎といえば思いつくのが「○○屋!」という叫び声・かけ声である。これは舞台に立っている役者の屋号のかけ声で、舞台の向こう側ということが由来して「大向こう(おおむこう)」と呼ばれる。
他にも、代数「○代目!」・2人同時の「ご両人!」・役者の異名「大統領!」・「銀行員!(元々の職業)」・一般的な「待ってました!」・「日本一!」などさまざま。この大向こうを利用した演出もあり、それがないとうまく進行しない演目もある。
大向こうを言う人は決まっている?
基本的に大向こうは誰がやってもいいと役者も言っている。だがしかし、やみくもに何もわからず自分のテンションで叫んでしまうと、せっかくの舞台を台無し・興ざめにしかねないので気をつけた方がいい。
観客席の一番後ろでみようみまねで行っていると、そのうち「君、いつもいるね、〇〇さん紹介しようか?」とお声がかかり、大向こうの会(現在は、東京・関西・名古屋・博多にある)に入れるかも!
大向こうから歌舞伎役者になった人もいるので、興味のある男性は足を運んでみてはいかがだろうか。
大向こうを超フレンドリーに興じた動画発見!
歌舞伎役者に「俺たちが一番楽しんでる」と言わしめた動画はこちら! 本当の歌舞伎の場では大ひんしゅくなので真似しないように…。
雑学まとめ
今回は、歌舞伎役者がなぜ男だけなのか? ということにまつわる雑学を紹介した。
女形の男性が演じる所作や立ち振る舞いは、美しく力強く、女性にはない独特の魅力を持っている。時には何十キロもの重さのある衣装を纏ったり、稽古や公演日程が超ハードであったりと、女性が同じことをするのは現実的に考えると厳しいかもしれない。
現代語で演じる演目やイヤホンガイドもあり、思っているより気軽に行くことが出来るので、男性も女性もそんな歌舞伎の世界に触れてみてはいかがだろうか?(一等席はわりと高額だけど)
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