「東宝三大怪獣」とも呼ばれるモスラは、単なるゴジラの敵役ではなく、もともとは『モスラ』という映画の主役である。平成の時代にも、モスラを主役にしたシリーズがゴジラと双璧を成す人気を誇っていたことは、まだ記憶に新しい。
…さて、そんなモスラに関して、なんとなく平和的で、ゴジラやそのほかの怪獣に比べるとあまり大きくないような、そんなイメージを抱いている人も少なくないのではないか。
しかし、1961年公開の『モスラ』に登場する初代モスラはその限りではない。なんと歴代の怪獣のなかでも、最大級のでかさを誇るのだ。
今となってはずっと小さくサイズチェンジしてしまったモスラ。今回はそのことも含め、モスラの大きさの雑学に迫っていくぞ!
【面白い雑学】初代モスラはほとんどの歴代ゴジラより大きい
【雑学解説】東宝特撮の怪獣でもっとも大きい初代モスラ
1961年に公開された映画『モスラ』は、小説『発光妖精とモスラ』を元に作られた作品。このとき登場した初代モスラは太平洋・南洋諸島に浮かぶ架空の島、インファント島の守護神という設定だ。
モスラという名前は英語で蛾を意味する「moth(モス)」、あるいは母を意味する「mother(マザー)」に由来する説がある。その名の通り蛾を模した怪獣だが、色の鮮やかな見た目はむしろ蝶っぽく、根強い人気を誇っている。
元来モスラは温厚な性格だが、この作品では自身に仕える巫女である身長30cmの双子の妖精「小美人」が人間にさらわれてしまったことに怒り、ふたりを救うべく東京を襲撃する。
そしてなんといってもこの初代モスラ…そんじょそこらの怪獣が比べものにならないぐらい、規格外にでかいのだ。試しに、まずは歴代のゴジラとその大きさを比べてみよう。
- 昭和のゴジラ(1954~75)…身長50m・体重2万t
- 平成前期のゴジラ(1984~89)…身長80m・体重5万t
- 平成後期のゴジラ(1991~96)…身長100m・体重6万t
- ハリウッド版ゴジラ(2014年)…身長108m・体重9万t
- シン・ゴジラ(2016年)…身長118m・体重9.2万t
体長(頭から尻尾まで)は、ほとんど一律して身長の2.2倍。平成後期の場合は体長220mという感じだ。
このように、ゴジラは時代を追うごとにどんどん大きくなっている。そう、でかくはなっているのだが…実はこのうち、ほとんどのゴジラが初代モスラの大きさには敵わない。
初代モスラの大きさは、幼虫・成虫でそれぞれ以下の通り。
- 幼虫…全長180m・体重2万t
- 成虫…体長135m・翼長250m・体重1万5千t
空を飛ぶために体重こそ軽くなっているが、大きさなら歴代のゴジラを並べても、初代モスラはほとんど倍ぐらいの規模感がある。
特に初代ゴジラなんかを初代の幼虫と並べると、モスラが四つん這いなのにも関わらず、高さがほとんど変わらない。要するにゴジラの身長がモスラの頭の大きさとほぼ同じなのだ。
シン・ゴジラは少し尻尾が長く、体長で考えれば333mにもなるので、唯一初代モスラより大きいことになる。ただし、尻尾が大きさとしてカウントされるかどうかには議論の余地がありそうだ(モスラに尻尾はないし…ゴジラだけ尻尾を含めるのは不公平?)。
以下は1961年の映画『モスラ』のプレビュー動画だ。ほかの怪獣との対比がないので大きさはわかりにくいが、東京タワーに繭を作るシーンは圧巻である。
…と、シン・ゴジラのような平成の怪獣と比べるのもフェアじゃない気がするので、ゴジラより大きい昭和の怪獣たちとも比べてみよう!
ゴジラ以外の昭和怪獣と初代モスラを比べると…?
一般的に、昭和最大の怪獣は体長150mのマンダとされることが多い。しかしこれと比べても実はモスラのほうが大きい。だいいち、マンダはヘビだから大きいというより長いって感じだしね。
東京に出現する三体目の怪獣が二代目マンダ。
初登場の時と違って角とヒゲの無い頭は新造形で、長い胴体部分は「海底軍艦」で作られた物と同じ。薄暗い海底に住んでいてギラギラした猫目が不気味なムウ帝国の守護神だった初代から、二代目は雰囲気がガラリと変わりましたね! pic.twitter.com/5ZN4W80eck
— スガワラタカフミ (@mgs3pwv124) April 5, 2020
あとは初代キングギドラも大きいが、これも翼を広げたときで150m。初代モスラには到底敵わない。やはり翼長250mは伊達ではないのだ。
このほか宇宙大怪獣ドゴラが数百mと推定されているものの、ドゴラはそもそも体長の設定がされておらず、比べようがない。
ドゴラ出現シーン
水槽の中でソフビ人形のドゴラを動すという撮影方法により動きがすごく滑らかで本当に巨大なイカのようなクラゲのような生き物が黒雲の中でうごめいているように見える。
ほんとにこんなのいたら恐いって思えるシーン。 pic.twitter.com/vy2IAGGGh2
— NaOWay (@AtoZmemories) August 16, 2018
このように、公式でサイズが設定されている限りでは、昭和の怪獣で初代モスラのサイズを上回る者はいない。やっぱり初代モスラは東宝特撮に登場する怪獣のなかでは、誰よりもでかいのである!
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【追加雑学①】初代モスラvsハリウッド版ゴジラの怪獣たち
近年はゴジラよろしく、シリーズに登場する怪獣たちも軒並み巨大化している。そこで、続いては2019年5月に公開されたハリウッド版『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の怪獣と初代モスラの大きさを比較してみよう。
- ゴジラ…身長119.8m・体重9万9千t
- モスラ…体長15m・翼長248m・体重不明
- ラドン…身長45m・翼長265m・体重不明
- キングギドラ…身長158m・翼長不明・体重14万t
初代モスラに比べてハリウッド版のモスラは体長が約10分の1。ほとんど翼でサイズを稼いでいる感じである。ラドンは翼こそ初代モスラより大きいものの、身体の大きさでは遠く及ばない。
そして…特筆すべきはキングギドラだ。身長158mと、ここに来て初代モスラを超える怪獣がついに現れた! 翼の大きさは不明だが、この巨体を浮かせるのだから、モスラ並みのものが付いていると思ってほぼ間違いない。
以下は『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の予告編。ゴジラと対峙するシーンを見ても、キングギドラが圧倒的にでかいことは明らかだ。
結果、歴代最大はハリウッド版キングギドラとなるのだろうが、それに匹敵するサイズを誇る初代モスラはやっぱすごい!
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【追加雑学②】初代モスラは最強の怪獣?
初代モスラのすごいところは、圧倒的なそのサイズだけではない。実は最強の怪獣の異名で呼ばれる存在でもあるのだ。
昭和の時代には、モスラのほかにも『空の大怪獣ラドン』『大怪獣バラン』など、ゴジラ以外を主役にした作品がいくつも作られている。実はこういった初期の東宝特撮のなかで、人類が唯一倒せなかった怪獣が初代モスラなのだ。
ゴジラでさえも超兵器が登場することで倒されているのに、初代モスラにはいかなる兵器の攻撃も通用しなかったのである。それを象徴するのが、原子熱線砲という兵器を用いて、モスラの繭が攻撃されるシーンだ。
モスラの繭はゴジラの攻撃がほとんど通用しない頑丈な糸で作られているが、この兵器はその糸でできた繭を短時間で黒焦げにしてしまう。その威力はゴジラの放射能火炎の比ではないはずだ。
しかしなんと、繭を黒焦げにされてもなお、そのなかからは無傷の成虫モスラが現れたのだ!
初代モスラの強さを描写する要素は、このほかにもまだまだある。
幼虫モスラが移動すれば周辺のビルは軒並み倒壊し、成虫モスラが空を飛べば、風圧で木の葉のように舞い上がった自動車が橋を落とす。特に空を飛ぶときの風圧で、初代モスラほどすさまじい描写がされた怪獣はまずいないだろう。
飛行速度は実にマッハ2。たしかにあの巨体がそんな速度で飛べば、街のひとつやふたつ壊滅してもおかしくない…。
モスラが最強になったのは『大怪獣バラン』の失敗から
モスラがここまで強く描かれたのは、モスラの2年前に公開された『大怪獣バラン』における失敗が関係しているという。バランは最強の怪獣として企画されていたが、ふたを開けてみるとあまり強そうな感じにならなかったのだ。
以下は大怪獣バランの予告編だが、「ゴジラより凶暴!」「ラドンより巨大!」と大げさに表現されているわりに、たしかに地味な感じが否めない。…なにより、ムササビ怪獣の名のもとに滑空するシーンがシュールすぎる。
この失敗を教訓にして、2年後に制作されたモスラはとびきり強く描かれることになった。規格外の大きさも、その強さを表現するために必要不可欠だったのである。
実際のシーンではカットされているが、映画『モスラ』の脚本には「ゴジラより大きい」というセリフもあり、意図的にゴジラを超える存在として考えられていたこともはっきりしている。
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【追加雑学③】最強のモスラは初代ではなく『モスラ3』の鎧モスラ?
最強の怪獣として圧倒的な力を見せつけた初代モスラ。しかしファンのあいだでは、最強のモスラは初代ではなく、1998年公開の『モスラ3 キングギドラ来襲』に登場した「鎧モスラ」だという声も多いのだ。
「鎧モスラ? なんのこっちゃ」という人のために説明すると、平成シリーズに登場するモスラは自身のピンチに際し、何段階にも進化している。まるでポケモンのごとく!
『モスラ2』に登場したレインボーモスラ・アクアモスラ
まず最初の進化が1997年公開の『モスラ2 海底の大決戦』にて登場したレインボーモスラ。虹色に輝く羽をもち、額の器官からは海を断ち割るほど強力なレーザーを発射する。
次の段階が同じく『モスラ2』に登場したアクアモスラで、水中を泳ぐことができる。モスラは水中戦を苦手としていたが、この進化でそれを克服し、敵役のダガーラを倒すことができたのだ。
そして『モスラ3』にて、これよりさらに強くなった鎧モスラが登場する。
キングギドラを圧倒した『モスラ3』の鎧モスラ
『モスラ3』では凶悪なキングギドラを前に、現状では勝てないと判断したレインボーモスラが、白亜紀にタイムスリップし、若いころのキングギドラに勝負を挑む。
しかしここでモスラは致命傷を負ったため、この時代の原始モスラによって繭で保護される。その繭のなかで1億3千万年眠りについたあとの姿が、鎧モスラなのだ。
鎧モスラは元来の弱点である防御力の低さを克服し、キングギドラの攻撃も身体を覆う強靭な鎧で弾き返す。鎧で覆われた身体を使った体当たりでは、キングギドラを地上に叩き落としてみせる。
さらに額から発射するレーザーはレインボーモスラの3倍の威力と、格段に能力が上がっているのだ! この鎧モスラへの進化で、ゴジラの永遠のライバルともいわれるキングギドラを、モスラが圧倒してみせたのである。
これはたしかに最強かもしれない…。
ただこのモスラは未熟児として生まれた経緯があり、サイズは全長25m・翼長50m・体重5900tと、とってもミニマムである。初代モスラとどっちが強いだろうなあ…。
以下、『モスラ3』の予告編も紹介しておく。後半部分で少しだけ鎧モスラの活躍も見られるぞ。
【追加雑学④】初代モスラはゴジラと戦うために小さくなった
異様な大きさを誇った初代モスラ。しかしこれはほんとに初代だけの話で、以降は見る見るうちにコンパクトサイズに変更されていく。
たとえば1964年公開の『モスラ対ゴジラ』に登場する幼虫モスラの体長はなんと53m。初代の3分の1もない大きさになってしまっているのだ! とはいえ、これには一応"生まれたばかりだから"という設定がある。
では、成虫のモスラは変わらずでかいのか? と思えば、そうでもない。以下の予告編で1:40~、モスラとゴジラの死闘が繰り広げられているので、大きさを確認してみよう。
うん…たしかに多少はモスラのほうが大きく見えるが、それは巨大な羽のせいであり、実際の体長はむしろゴジラより小さく見える。モスラの体長は135mで、ゴジラは50mのはずなのに…?
一応、「寿命が尽きる寸前で体が小さくなった」という取って付けたような設定が存在してはいるが、明らかにゴジラと対峙したことによるサイズ合わせじゃないのか?
初代モスラはデカすぎて危険
初代モスラが小さくなったのは、ゴジラとのサイズ合わせでほぼ間違いないだろう。ただそれは、ゴジラより強そうに見えるとまずいとかそんな理由ではなく、撮影上の都合である可能性が高い。
モスラのように空を飛ぶ怪獣の撮影では、あまり大きな個体を使うとワイヤーで支えきれず、危険なことがあるのだ。実際、1991年に公開された『ゴジラVSキングギドラ』では、宙吊りにしたメカキングギドラが落下するという事故が起こっている。
このときのメカキングギドラの身長は140mの設定。対するゴジラは100mである。この2体を対峙させるとなると、ゴジラより相当に大きく見せる必要のあるメカキングギドラは、かなりの重量になる。そのため吊り上げることも困難だったのだ。
これに初代モスラに当てはめると、翼を含めて250mという設定はかなり無理があることがわかる。ゴジラと対峙させようと思うと数倍は大きく作らないといけないし、絶対吊り上げられないよね…?
その後のモスラは1996年の平成版『モスラ』で翼長50m、2001年の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』では翼長72mと、急速に小さくなっていく。
ほかの怪獣と対峙する機会を得たことにより、モスラが超巨大怪獣だったことは、すっかり過去の話になってしまったのだ。
雑学まとめ
今回はモスラの大きさに関する雑学を紹介した。
50mの怪獣が普通だった時代に100mを軽く超えるモスラは、まさにケタ外れの超巨大怪獣だった。その規模感は、2019年版のキングギドラと比べてもほとんど引けを取らないぐらいだ。
最強の怪獣というのもまた、大きさと合わせてロマンがある。個人的には近年の能力が強化されたモスラより、でかさがそのまま武器になる感じの初代モスラが好きである。
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