オリンピックでは、記録とともに記憶に強く残る選手が多くいる。ルーマニアの体操競技選手であったナディア・コマネチもそのひとりだ。
世界的にとても有名であるため、引退された今も世界中の人に知られるコマネチ。スポーツに詳しくない人でも名前は知っている、という人も多い。幼いころから体操の才能を発揮し、オリンピックでも大活躍していた彼女だが、実はつらい時期もあったことをご存じだろうか。
今回の雑学では、今も世界に愛される「白い妖精」こと、ナディア・コマネチにスポットをあて、彼女の栄光と波乱に満ちた人生についてお伝えしよう!
【オリンピック雑学】体操界の妖精「ナディア・コマネチ」の波乱万丈の人生とは?
【雑学解説】世界から「白い妖精」とよばれたナディア・コマネチ
ナディア・コマネチは、1961年ルーマニアで生まれた。幼少期から体操をはじめた彼女は、6歳でオリンピック選手を目指すエリートの集まる体操教室に入る。
そこでコマネチは、体操競技の名コーチであったベラ・カロリー氏に才能を見出され、徹底した管理のもとに英才教育を受けた。
1971年、10歳になったコマネチは、はじめて国際大会に出場した。そこではユーゴスラビアチームと戦い、団体と個人総合の部両方で優勝!
1975年には、ヨーロッパ体操選手権に出場。ゆか運動で銀メダル、それ以外の種目別すべてと個人総合では金メダルを獲得した。コマネチは、オリンピックに出場する前から次々とすばらしい功績をあげていたのだ。
そして1976年。ついにそのときがやってくる。14歳にしてモントリオールオリンピックに出場したコマネチは、それまでのオリンピックではだれも成し得なかった「10点満点」を出して金メダルを獲得した…!!
10点満点を出した、モントリオールオリンピックの動画がこちらだ!
軽快で見ていて気持ちがよく、安心して見ていられる演技だな、と筆者は感じた。パーフェクトなこの演技で、コマネチは10点満点を記録に残した。
このモントリオールオリンピック後コマネチは、その可憐な見た目と白いレオタード姿から「白い妖精」と呼ばれるようになった。
満点なのに掲示板の表示は「1.00」だったコマネチの演技
このときのコマネチの10点満点の演技は、だれが見ても完璧なできばえであった。だが、得点の表示される掲示板には「1.00」という数字が表示された!
これは、大会運営側がそれまで10点満点が出るとは思っていなかったため、掲示板には最高でも「9.99」点までしか表示することができず起こったことであった。
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【追加雑学①】独裁政権の影響を受けたコマネチの苦しい生活
オリンピックでの大活躍により、14歳にしてあっという間にルーマニアだけでなく世界中で有名になってしまったコマネチ。しかし、コマネチの祖国であるルーマニアでは当時、ニコライ・チャウシェスクという政治家による独裁的な政治が行われていた。
警察さえもチャウシェスクのいうことには逆らえない、チャウシェスク政権の管理下で自由のない生活は、金メダリストであるコマネチにも例外なく影響を与えることになる。
その可憐な見た目と自身のすばらしい功績ゆえ、チャウシェスクに目をつけられてしまったコマネチ。
チャウシェスクの息子と愛人になり毎夜のように夜の町へ付き合うように、と命令されてしまう。コマネチの家族でさえ彼らに逆らうことはできず、つらさに耐えかねたコマネチは、アメリカへの亡命を決意するのだった。
【追加雑学②】苦しい生活に耐えかねてアメリカに亡命するコマネチ
27歳で命からがらアメリカに亡命を果たしたコマネチは、そこで生涯の伴侶となる男性に出会うことになる。アメリカ人のバート・コナーがその人だ。
彼もまた、体操競技の金メダリストだった。共通の話やつらく苦しかったときの話まで、深くお互いを理解し合うようになったふたりは、自然と結婚へと進んだ。
1996年、コマネチが35歳のときに訪れた人生の春であった…。
【追加雑学③】引退後のナディア・コマネチ
コマネチとコナーが結婚したころ、ルーマニアにもクーデターがおこり、チェアシェスクによる独裁政権も終わりをむかえていた。自由になった祖国ルーマニアに帰ったふたり。
引退後から現在までは、夫婦で同じ体操競技の金メダリストであったということもあって、ともに後輩たちの指導にあたることもあるという。
そして、コマネチは自身の自由のなかった時代の経験をもとに、チャリティ活動などで「国の情勢にスポーツが悪い影響を受けることのない世の中を」という訴えを世界に発信しつづけている。
「ナディア・コマネチ」の雑学まとめ
筆者は、この雑学記事を書く機会があったことをうれしく思った。それは、コマネチのモントリオールでの演技のすばらしさを見て感動し、未来のこの時代を知らない世代へも受け継がれていってもらいたい気持ちがあるからだ。
記事を書くという仕事について、手が進まずにつらいと思うこともあるのだが、コマネチのように好きなことへの努力を惜しまない人間でいたいものだ。
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