みなさんはこの世の中に食べられる鈍器があることをご存知だろうか? そう、あずきバーだ! 私もこの鈍器が大好きだ!
私は冷凍庫から出して3分ほど放置してから、いつも食べている。それでも硬い。あずきバーは食べものの概念をくつがえすぐらい、硬いのだ! 動物の本能として前歯でいってはいけない気がして、いつも奥歯で噛んでいるぞ。
井村屋のホームページには「固く凍っているため、歯を痛めないようにご注意ください。」との注意書きまである。
いや、そこは歯を痛めないよう、あなたたちが考慮してくださいよ…というのはこの雑学を最後まで見るまで考え直してほしい。この硬さの正体は、井村屋のあくなきこだわりにあったのだ!
【食べ物雑学】あずきバーが硬い理由とは?
【雑学解説】あずきバーの硬さには井村屋さんのこだわりが詰まっていた
井村屋は1896年の創業以来、ようかんやどら焼きなどの和菓子類から、あんまん、おしるこやぜんざいなど、あずきを使った食品にこだわって事業を展開してきた。
しかしこういったあずきを使った甘い食べものの需要は、夏場になるとどうしても落ちる。たしかに、暑い真夏に甘~いあんまんやおしるこはあまり食べたくなるものではない。
それでも「夏場でもあずきあんを使った食べものを食べてほしい」と思っていた井村屋は1973年、あずきバーの発売に踏み切るのだ。
あずきがぎっしり詰まったこのアイスは、兼ねてから井村屋が得意としていた「ぜんざい」をそのままアイスにできないか、という発想から誕生した商品である。
「美味しいぜんざいを、そのままアイスにしたい」
この想いこそ、あずきバーの硬さの正体である。…なるほど、人の想いは簡単には砕けない…って、そういうスピリチュアルな話ではない。
あずきバーに使われている原材料は以下の5種類。
メモ
- 小豆
- 砂糖
- 水飴
- 食塩
- コーンスターチ
余計な香料や着色料、乳製品や添加物を一切使わず、マジでぜんざいに使われている食材のみで作られているのだ。
実はこの「マジでぜんざいに使われている原材料のみで作る」というこだわりが偶然"硬いアイスを作る条件"を満たし、鈍器レベルの硬さを実現するに至ったのだ! その条件が以下のふたつだ。
- 凍ったときに水分より柔らかい性質になる乳固形分が含まれていない
- 空気の入る隙間もないぐらい素材が詰まっている
それぞれ解説していこう。
アイスの柔らかさを担う乳固形分が入っていない
通常、アイスクリームと名の付く食べものは牛乳などの乳製品が使われており、その乳製品に含まれる乳固形分が、口当たりをマイルドにする役割を担っている。
乳固形分というのは、牛乳の水分以外の成分のことで、たんぱく質・炭水化物・ビタミン・ミネラルなどが含まれる。これらは凍らせたときに、水分よりも柔らかくなる性質をもっているのだ。
あずきバーには乳製品や添加物が使われておらず、この乳固形分が入っていない。それゆえ水分の比率が多くなり、乳製品由来のアイスよりずっと硬くなるのだ!
なんでも時代の変化で昔ほど甘さが求められなくなった現在は、より水分量が増え、余計に硬くなっているという。…鈍器として、さらに進化していたとは…。
素材が詰まっていて空気の含有量が少ない
サービス精神旺盛な井村屋は、原材料の詰め込み具合がハンパない。あずきバー1本に、なんと約100粒ものあずきが詰まっているという。
これだけ素材が詰まっていると空気の含有量が極端に少なくなり、水分中の気泡ができにくい。これによってただでさえ硬いあずきバーは、より一層硬く固まる!
あずきバーの硬さはまさに、ぜんざいそのままの材料を使うこだわりと、素材をこれでもかと詰め込むサービス精神が生み出した硬さなのである。
【追加雑学①】サファイア以上の硬度を誇る「あずきバー」
「食べられる鈍器」という、あずきバーの異名は伊達ではない。「万引き犯をあずきバーで撃退した」や「あずきバーで釘が打てた」など、その武勇伝は枚挙にいとまがない。
なんてたって…サファイヤよりも硬いんだからな! これはマジな話で、刀鍛冶が有名な岐阜県関市のナイフメーカー「ジー・サカイ」がナイフのブレード材の硬度測定に使用しているデジタル硬度計を用い、検証を行っている。
以下がその実験の模様を撮影した動画だ。HRCという数値が高くなるほど硬いことを表し、一般的なナイフで58~68相当。サファイヤは227相当の数値だというが…。
なんと一瞬ではあるが、あずきバーは300オーバーの硬度をたたき出している! 測定不能の状態が続いていたのは温度の影響からか…? もとが水分ゆえに硬度も一定ではないのか。
サファイアの硬さが想像できない人は、手元のスマホを噛んでみてほしい。機種によるが、スマホの液晶にサファイアガラスが採用されていたこともある。だいたい同程度の硬さが実感できるだろう。
この硬度検証は数値が終始安定せず、結局は「測定不能」に終わった。その結果からジー・サカイも「硬度計では計り知れない潜在硬度を持ったアイス」と結論づけている。
関連記事
-
ルビーとサファイアはどう違う?もとの石の種類は同じ!
続きを見る
ちなみに同社は世界一硬いかつお節の硬度も行っているぞ。
あずきバーから言わせれば「ふん、その程度か?」といった具合である。かつお節噛むよりあずきバー噛むほうが硬い可能性があるってヤバくねーか…。
世界一硬い食材は今のところかつお節…ということは…
実は…動画で登場したかつお節は世界一硬い食材としてギネスに登録されている。かつお節はあずきバーと異なり、モース硬度という鉱物の硬さを表すもので数値がきちんと出ているのだ。
このモース硬度の基準でいうと、サファイアは「9.0」。そしてかつお節のモース硬度はなんと「7.0〜8.0」! 鋼鉄のヤスリのモース硬度が「7.5」なので、単純に考えて、かつお節は鋼鉄のヤスリと同じ硬さをもつ食材ということだ。
このモース硬度は、2つの物質でお互いを引っ掻きあった時の傷のつきやすさを基準としている。ということは…
かつお節とあずきバーで傷をつけあったら…新しいギネス記録が生まれるかもしれない! 井村屋さん! ギネスの申請をー!!
関連記事
-
世界一硬い食べ物は鰹節!ギネス認定の水晶レベル【動画あり】
続きを見る
おなじみの武勇伝「あずきバーで釘が打てる」という検証動画もどうぞ。ほんとにいたって普通に打てている…。
【追加雑学②】あずきバーの硬度をネタにする井村屋さんがウケる
あずきバーの硬さ騒動に便乗し、井村屋さんもちょっとした悪ノリを展開しているのが地味にウケる。
関市長です。関市を宣伝いただきましてありがとうございます。“@IMURAYA_DM: 社外秘が漏れてしまった… RT @techi_twisted: 伝統的なあずきバーの製法 pic.twitter.com/JcNazl2x27”
— 尾関 健治(岐阜県関市長) (@ozekenjissa) February 27, 2015
そう、打ち立てほやほやのあずきバーが…ってんなわけあるかーーー!! …で、律儀に宣伝のお礼コメントをする岐阜県関市長さん。
実はこの写真、岐阜県関市の観光協会が所有する関鍛冶伝承館に所蔵されているもので、井村屋が関市に使用許可を取って掲載したものだった。
この流れから両者には交流が生まれ、2015年4月には、関市の「古式日本刀鍛錬実演」のイベントにて、先着100名にあずきバーがプレゼントされるキャンペーンも実現した。
そして今回、その画像の舞台となった「古式日本刀鍛錬実演」、4月5日(日)の無料公開日の午後1時から「あずきバー」を1人1本先着100名様にプレゼントの粋な企画がっ!
詳細はコチラ関市観光協会様のHPを→ http://t.co/8khXkIzsw4
— 井村屋(株)公式アカウント(´∀`) (@IMURAYA_DM) March 25, 2015
関市の日本刀は"折れず曲がらずよく切れる"がキャッチフレーズのようになっているといい、これは抜群の硬度を誇るあずきバーのイメージにもぴったりだ! 当日配られたあずきバーはもちろん打ち立てほやほやではない。
ちなみに岐阜県関市のふるさと納税返礼品にもあずきバーが選ばれているぞ。刀とあずきバーの硬さをきっかけに、関市と井村屋は強い絆で結ばれたのだ!
あずきバーの硬さにちなんだ漫画『あずさんは、ガードが固い』も連載
2019年からはあずきバーの硬さにちなんで(?)、海島千本さんによる漫画『あずさんは、ガードが固い。』を井村屋の公式ツイッターにて連載。ガードが固い美女のあずさんと、あずさんに恋する一途な青年いむらくんのラブストーリーである。
さらに2020年からはその続編となるアニメーション『あずさんは、ガードが固い。2粒目』を配信開始! 梶裕貴さん、斎藤千和さんという豪華声優陣を迎える力の入りっぷりだ。
「あずさんは、ガードが固い。2粒め」
#0 予告編
あずさん→CV:斎藤 千和
いむらくん→CV:梶裕貴
作画:海島千本さぁ、お待たせしました!スタートです!#あずきバー #あずかた #井村屋 pic.twitter.com/ng7OiCzelh
— 井村屋(株)公式アカウント(´∀`) (@IMURAYA_DM) April 1, 2020
うん、ガードが固いというよりは…あずきバーのことしか考えてない感じである。
スポンサーリンク
【追加雑学③】あずきバーの硬度に対抗!専用のかき氷機がある
サファイア以上の硬度を誇り、その硬さをもはや井村屋さん自身もネタにしてしまっているあずきバーだが、この硬さ騒動にさらに便乗しようとする企業もいる。
2017年6月、なんとあずきバー専用のかき氷器が発売されたのだ。開発元は…おもちゃといえば! な「タカラトミーアーツ」。以下の動画で開発の苦悩が語られている。
井村屋に挑発されたタカラトミーアーツの「なんだとー!」の棒読み具合が好き。
実際、「あずきバーが硬すぎてハンドルが回らない」「負荷がかかり過ぎてハンドルが折れた」など、開発は困難を極め、かき氷器は6号機にてやっと完成の日の目を見た。…やっぱ、サファイヤより硬いってネタじゃないんだね…。
ちなみに単純にかき氷で食べるのもおいしいが、タカラトミーアーツ公式サイトで紹介されていた、牛乳を注いだ「あずきバーシェイク」もめっちゃおいしそう。
関連記事
-
カキ氷とアイスクリーム、どっちが冷たい?その理由とは?
続きを見る
あずきバーの雑学まとめ
今回はあずきバーの硬度に関する雑学をご紹介した。
「ぜんざいをそのままアイスに」との想いから、乳製品・添加物を使わず、100粒のあずきをぎっしり詰め込んだあずきバー。その硬度はアイス界のみならず、硬い鉱石すらひれ伏すレベルである。
井村屋さんの想いは、そう容易くは砕けないのだ!
私はこれからキャンプのときに、必ずあずきバーを携帯することに決めたぞ。
クマに襲われた時は鈍器として、熱が出たら冷却剤として、お腹が空いたらアイスとして、溶けたらぜんざいとして…。十徳ナイフと同じくらいの必須アイテムになるに違いない。
関連記事
-
関西と関東の"ぜんざい"の違いとは?おしるこも違う!
続きを見る