巨大地震が起きたとき、沿岸部に出される津波予報。津波予報は、自分達の命を守る大事な予報だ。
地震のあとすぐに発表される津波予報だが、あれはどうやって計算しているのだろうか? 電卓? そろばん? …んなわけない。
気象庁が、津波予報を発表するためにしていること、津波予報の仕組み…そんな津波予報にまつわる雑学をご紹介したいと思う。
【自然雑学】地震の直後、津波の予報がすぐわかるのはなぜ?
【雑学解説】津波予報のポイントは、シミュレーションのデータベース
津波予報をとにかく早く発表するには、地震が起きてから津波の規模を計算していたのでは間に合わない。そこで気象庁では、地震の発生場所や大きさなどを想定して10万通りのパターンを作り、それぞれのパターンでの津波の大きさを計算してコンピュータにデータとして保存しているという。
地震が発生すると、全国に設置している地震計から場所や大きさを判断し、それにいちばん近いデータを取り出すことで、すぐに津波予報が出せるというわけだ。
そしてこのデータベースは日本国内に限られたものではなく、日本に津波が来る可能性のある海外の地震も200ほど想定。国内と同じく地震の規模や発生場所をシミュレーションして計算し、データ化して保存している。
ちなみに、気象庁の発表する津波予報は、地震発生から3分以内の発表を目標としているそうだ。
【追加雑学①】数値シミュレーションは「海底地殻変動計算」と「津波伝播計算」で求められる
データとして保存しておく計算結果は、膨大なシミュレーションを行うことで算出している。
まずは「海底地殻変動計算」というものを行い、その結果を「津波伝播計算」に送り、想定される津波の高さや到達までの時間が求められるのだ。
海底地殻変動計算
「海底地殻変動計算」では、「断層の水平位置と深さ」・「 断層の大きさ」・「断層の向き」・「断層の傾き」・「すべりの方向・大きさ」を定め、海底の地殻変動のパターンを計算している。
津波伝播計算
海底地殻変動計算によって地殻変動のいろいろなパターンを計算したら、次は「津波伝播計算」だ。海底の地殻変動があったとき、それが原因で地震が発生すると海面に凹凸が生まれる。この海面の凹凸が広がっていく様子を津波伝播の方程式というもので計算するのだ。
こうしていくつものシミュレーションを行って結果を蓄積しておくことで、実際に地震が発生したときにはその中から同じような条件のデータを取り出すだけなので、地震直後でも津波予報が出せるというわけだ。
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【追加雑学②】沿岸部での津波の高さを求める「グリーンの法則」とは?
水深の深い沖合で発生した津波は、水深の浅い沿岸部に近付くにつれてスピードが遅くなり、波と波の間隔が狭くなる。前の方にスピードの遅い車があると、その後ろも遅くなって渋滞になる、そんな感じだ。
だが、車と違うのは、波と波の間隔が変化しても、波1つのエネルギーは変わらないこと。間隔が狭くなった分、そのエネルギーは波の高さとなって表れる。水深が浅くなると津波の高さが高くなるこの現象を「グリーンの法則」というそうだ。
波が高くなりはじめる沖合の予測点での波の高さ・水深と、沿岸地点での水深(気象庁では沿岸部の水深を1mと定義している)をグリーンの法則の計算式に当てはめて、沿岸部の津波の高さを計算している。
データベースにあるシミュレーション結果だけだと、入り組んだ地形など複雑な条件のもとでは予測の精度が落ちるために、こうした計算式が用いられているのだ。
では沿岸部でどれくらいの津波でどれくらいの被害が出るのか。過去の津波の高さがイメージできる動画を紹介しよう。正直、ちょっとビビる。
やはり津波は恐ろしい…。
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【追加雑学③】東日本大震災の津波は…
まだ記憶に新しい2011年3月11日の東日本大震災。
この地震では発生から3分後に大津波警報が出され、数十分後に津波が到達した。この地震による津波は軽く10mを超えた高さのものもあり、陸地をかけあがる遡上高(津波が海岸から内陸へ上がるときの高さ)が最大で40mを超えるものもあったという。
また、東日本大震災での犠牲者のうち約90%は津波によるものだ。内陸での地震は火災によって被害が広がるが、海での地震の場合は津波による被害が大きくなる。
国内の被害が大きすぎてあまり知られていないかもしれないが、この東日本大震災の地震によって、アメリカ・インドネシア・チリなどでも津波が発生し、大きな被害が出たという。
周りを海に囲まれている日本は、大きな地震が起きたら津波が来る! という意識を日頃からもっておく必要があるだろう。
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【追加雑学④】地震が起きたら津波!津波から身を守るためにできること
大きな地震が起きたときに発生する津波。津波の可能性があれば、とにかく高いところへ避難することが大切だ。
よく耳にするのが、「津波が来るときは海の波がいったん引く」というもの。これは間違いだ。波が引くことなくそのまま一気に津波としてやってくることもあるので、間違っても海の様子を見に行こうなんて考えないように。
震源地から離れていても津波はやってくる
津波は地震の震源域から波状に広がる。そのため、かなり遠いところでも津波が発生することもある。東日本大震災では、東北地方から離れた九州地方でも津波を観測。
また、アメリカなど太平洋に面する海外の国にも津波が到達した。規模の大きい地震の場合は、遠いからといって安心ともいいきれないので注意しよう。
実際に東日本大震災よる津波を見た人の「波ではなく、まるで壁が押し寄せてきたようだった」というコメントを見たことがある。壁のような津波が、一瞬にして街を飲み込むなんて、まさに悪夢じゃないか。
そんな悪夢から身を守るためにも、日頃から地震や津波への意識をもっておくようにしよう。それが、自分や大切な人の身を守ることにつながる。たまには家族で「いざというときはどうするか」という会話をすることも必要ではないだろうか。
雑学まとめ
地震直後に発表される津波予報。とにかくすぐに予報が出るので気になって調べてみたものの…。いやぁ、難しい。
難しかったが、地震大国でなおかつ海に囲まれた日本では、津波予報は生死を分けることに直結するくらい大切なものだ。津波予報、地震発生から3分よ? 3分。「え? 揺れてる? え、ほんとに?」とオタオタしている間に過ぎてしまうくらい、3分なんてあっという間だ。
地震速報や津波予報は、発表されないのがいちばんいい。しかし、日本で生活する以上そうもいっていられない。津波予報が出たときには、この雑学を思い出して…ってそんな余裕はないか。