世界一高い山・エベレストの標高は8,848メートル。その登頂はまさに命懸けだ。しかしリスクが高いほど登山家たちはロマンを抱き、登頂を夢見るもの。
登山シーズンである5月には毎年多数の人が訪れ、2018年には807人・2019年には885人と、近年は同シーズンに登頂した最多人数を更新し続けている。
しかし…エベレストが人気を集めている理由は、リスクの高さというよりは「世界一高い」という称号である。単純に危険度でいえば、世界で二番目に高い山…「K2」のほうがずっとヤバイことを知っているだろうか。
高さではエベレストに及ばないが、エベレストより危険な山…。この響き、そそられるよね?
今回の雑学では、世界で2番目に高い山「K2」が、エベレストより危険な理由とその実態について解説していこう…!
【自然雑学】世界で二番目に高い山「K2」はエベレストより危険
【雑学解説】世界で二番目に高い山「K2」の死亡率が高い理由とは?
世界で二番目に高いといわれる「K2」は、中国とパキスタンの国境にあるカラコルム山脈に属する山だ。地図で示すとこのあたりにある。
その標高は8,611メートルで、エベレストとの差は約200メートル。ネームバリューでは敵わないが、高さ競争はほとんど誤差といっていいレベルである。
というか世界の山の高さをランキングにすると、1~10位までの差はそれほどない。
- 1位…エベレスト(8,848m)
- 2位…K2(8,611m)
- 3位…カンチェジュンガ(8,586m)
- 4位…ローツェ(8,516m)
- 5位…マカルウ(8,463m)
- 6位…チョーオユ(8,201m)
- 7位…ダウラギリ(8,167m)
- 8位…マナスル(8,613m)
- 9位…ナンガパルバット(8,126m)
- 10位…アンナプルナ(8,091m)
このうち、K2以外の山はすべてヒマラヤ山脈に属する山々だ。「ヒマラヤ以外でトップ10入りしている」という意味でまず、K2は異質なのである。
そしてもし「危険度+高さ」でランキングを競えば、K2は世界一の山といって過言ではないかもしれない。
近年は登山技術の向上などにより、エベレストの登頂成功率は50%以上ともいわれ、そののべ人数も5,000人を軽く上回る。しかし現在でも数百人登れば、数人の死者を出している十分に危険な山だ。
ところが…K2はこの比ではない。
エベレストの登頂における死亡率が1%なら、K2はなんと26.8%。4人登れば1人は死ぬという、明らかにヤバイ山なのだ。
K2の登頂には20世紀初頭から100年以上のあいだ、数々の登山家が挑戦しているものの、登頂に成功した者は300人程しかいない。
「非情の山」の異名をもつK2は、RPGでいえばラストダンジョン。ヤバイけど、ヤバイからこそロマンを覚えずにいられない山である。
K2の気象変化が恐ろしい【動画】
K2の登頂が困難なことには、その気象変化の激しさが関係している。
山頂付近では猛烈な突風が吹き荒れ、その風速は15メートル以上になることも珍しくない。これがどのぐらいの風かというと、わかりやすくいって台風と同じぐらいだ。急斜面でこんな風にあおられたら、普通の人は落ちる。
そして…気温はなんとマイナス50℃にも達するといい、果たして寒いと感じられるのかすら謎なレベルでクソ寒い。
ちなみにエベレストの山頂はだいたいマイナス20℃ぐらい。K2と比べると、「エベレストは頑張れば登れそうだな」なんて思えてくるから恐ろしい。
以下はK2登頂までの軌跡を映した映像だ。ダイジェスト風にまとめられていて、その道のりの険しさを体感することができる。
山頂付近の急斜面はまさに壁を登っているようなもの。人がいていいような場所ではないぞ…。
しかしながら、昇ってくる朝日の美しさを見ると、K2のような難関に挑戦する人たちの気持ちも少しわかるような気がする。
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【追加雑学①】「K2」の名前の由来とは?
ところで世界の山々には、エベレストをはじめ立派な名前が付いているのに、世界で二番目のK2の呼び名は明らかに変だ。K2のKは「危険」のK…ということではない。
これは実のところ、19世紀末にK2を含むカラコルム山脈の測量が行われた際、インドの測量局が簡易的に付けた名前で、本来は記号のようなものである。
K2は「Karakorum No.2」の意味。つまり「カラコルム山脈の測量番号2番」ということだ。もちろんこのほかにK1やK3も存在している。
当時はカラコルム山脈自体があまり知られておらず正式な名前がなかったため、とりあえずこの簡易的な名前があてがわれたのだ。
そのなかでK2だけが、現在でもその記号のような名前で呼ばれ続けている。世界で二番目に高いということで、なんか合ってるしね! 関係ないかもだけど。
【追加雑学②】K2登頂の最年少記録は日本人!【動画】
世界で二番目に高い山「K2」にまつわる記録で、我らが日本人が関わっているものがある。
2006年8月、東海大学登山隊がK2を登頂し、なんと登頂の世界最年少記録を樹立したのだ! メンバー最年少の青木達哉さんは当時21歳という若さである。
青木さんのようにまだまだ先の長い若者が、低くない確率で死んでしまう賭けをするというのは、ハッキリ言ってけっこうぶっ飛んでいる。彼が登山を始めたのは、この3年前の18歳のころ。経験が少ないなか、よく踏み切れたものだ。
案の定、途中でリタイアする隊員も続出。下山の際には音信が途絶え、一時消息不明になるという事態にも見舞われた。こんなことも珍しくないのに登ろうとするわけだから、登山家とはほんとに不思議なものである。
なんにせよ、この時期にそう出くわすことのない過酷な状況を経験したことは、彼の今後の人生に大きな影響を及ぼしたのではないか。
以下は近年の青木さんのイメージビデオだ。その顔つきからも、幾多の困難を乗り越えてきたことが伝わる。
ちなみにエベレストの最年少登頂記録も、2016年に日本人が樹立している。
登頂に成功した南谷真鈴さんは早稲田大学に通う現役大学生。当時19歳で世界記録を塗り替えてしまったという、とんでも女子大生である。
また1975年に女性で初めてエベレストの登頂に成功したのも、日本人の田部井淳子さん。え…日本の登山家、めっちゃすごくないか?
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【追加雑学③】世界一危険な山は日本にある
K2の恐ろしさはここまでで十分に伝わったはずだ。しかし…K2の危険度は決して世界一ではない。じゃあ、世界一危険な山はどこにあるのか? 実は日本にあるのだ。
その名も「谷川岳(たにがわだけ)」。群馬県と新潟県の県境に位置する、「もっとも死者を出した山」としてギネス認定されている山だ。
谷川岳の標高は1,977メートルと、高さにすれば日本一高い富士山の半分ほどしかない。
あれ? 低くね? 地図でもけっこうズームにしないと名前が浮かび上がってこないし、近くの浅間山より存在感が薄いじゃないか…と、侮ることなかれ。
なんと谷川岳はこれまで805名の死者を出しており、世界の名立たる山々と比べても、死亡率は断トツのトップを誇るのだ。
K2の死亡者数が計81名といえば、その圧倒的度合いも伝わるだろう。
谷川岳の死亡率が高い理由とは?【動画】
谷川岳の死亡率の高さには、実は「標高がそれほどでもない」ということが関係しているという。
谷川岳はその標高に反して急斜面が多く、高所の気象の変化にしても、植物が育たない森林限界となっているぐらい激しい。素人が装備を整えずに登ったりすれば、そりゃ死んじゃいますよというレベルだ。
しかし標高が低いと人は「これぐらいなら登れそうだ」と思ってしまうものである。それは登山経験が浅ければなおのこと。つまり難易度の割に油断する人が多いことが、谷川岳でたくさんの人が亡くなっている原因なのだ。
なるほど…見てくれから「危険」と警告してくれるK2よりも明らかに危険である。まるで甘い匂いで虫を誘い込む食虫植物のようだ…。
以下は谷川岳の登頂シーンの一部を映した動画。うん…これは普通に死ねる。
最後に世界の危険な山をまとめた動画も紹介しておこう。あなたが思っている以上に、登山が命がけであることが分かるはずだ。
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世界で二番目に高い山「K2」の雑学まとめ
今回は世界で二番目に高い山「K2」にまつわる雑学を紹介した。
K2は4人登れば1人は命を落とすという、とっても恐ろしい山。しかしそれだけのリスクがあるからこそ、登頂に成功したときの喜びはひとしおなのだろう。
K2のような険しい山に限らず、登山に危険は付き物だ。これから登山に挑戦してみたいという人も、今回の雑学を教訓に、入念な準備をもって挑んでほしい。
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